元・新人トレーナーの昔話   作:ゆにさん

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第1話

ーー私が、そのトレーナーを選んだ理由?

ーーふーぅむ。三女神の導き……かもな?

 

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入学式の日だ。どこか古い感じを思わせるが、内装は流行を取り入れたピカピカの校舎。

 

あらゆる所に木々や芝生が植えてあり、緑があふるる学校。トレセン学園。

 

それは、全てのウマ娘が憧れる場所。優秀な者のみが入学を許されるエリート専門校だ。

 

 

時刻はまもなく正午を指す頃。ゾロゾロと校舎から人が出てくる。

 

その中でも一際大きな欠伸をする者。

 

誰に話すわけでもなく、呟いた。

「つっまんねぇなぁ、入学式。暇すぎて白目剥いたまま気絶しちまうとこだったぜ……」

 

 

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さて。校舎から出ると熱烈な歓迎のお出ましだ。看板を持ってるウマ娘に、大量のビラを腕に抱えるウマ娘。沢山のウマ娘達がこっちに振り返る。

 

朝来る時は、静かで自然が美しかった大通り。喧騒に包まれて、朝とは全く違う様相を呈している。大体が自分の所属してるチームへの勧誘文句だ。

 

 

さっきの説明で聞いたが、大きなチーム……。要するに新聞やニュースなどに乗るような実績を残すチームは、こういうビラ配りなどはしない。

 

そういう大御所は基本的に、何種かの試験を通して新入生をふるいに掛け、選ばれた者だけが入部出来る仕組みになっている。

 

 

だからだろう。熱心に話しかける者達とは対照的に、冷え切った態度で、話しかけるなと言わんばかりの対応をするウマ娘の多いこと、多いこと。それでもめげずに勧誘を続けるウマ娘達。

 

どうやら次のターゲットは私らしい。

「私達のチームに入部しませんか?今ならもれなく人参1箱も付いてきますよ!」 と格安通販サイトみたいな謳い文句で、満面の笑みで話しかけてくる。

 

ま、選択肢は多い方が良いだろう。ビラだけ貰って寮で見るか。

 

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色んなチームのビラを集めてたら、校門が見えてきた。朝と比べて、5倍以上の距離を歩いたような感覚を覚えつつ、出口へと向かう。

 

と、そこで目に付く者が居た。スーツ姿の背の高い人。人が勧誘活動してる?

 

その辺の奴に聞いてみる。

「なぁ?なんで人間が勧誘なんかやってんだ?」

 

肩を叩かれた見知らぬウマ娘は、訝しむ顔をしたのち。

「あぁ。あれはな、新人トレーナーだ」

「新人トレーナー?」

「そうさ、今年から新しくトレーナーになる人間だ。ま、基本的に新人トレーナーのチームに入るのは止めた方が良い」

 

と応えてスタスタ歩き出していった。ありがとう!と言いつつ、興味本位でそいつに近づいていく。

 

第1印象はThe一般人。冴えない顔に冴えない髪型。なーんにも特徴が無いのが逆に特徴になってる。

 

今は他の新入生と話してるみたいだ。

 

「うちのチームに入ってくれないか!」

「いや、私他のチームに入るので…。」

「お願いだ!人参5箱……いや、欲しいだけ付けるから!」

「私、あなたのチームには入りませんから!」とスタスタと門から出ていく新入生。

 

一瞬肩を落として、スっと背筋を伸ばしたトレーナー。辺りを見渡して次の新入生を探している。

 

 

ーー目が合って。その瞳を見た。

 

 

ーー瞬間。惹き込まれたんだ。

 

 

入学式の時に見せられた、どんな有名なトレーナーよりも、一際違う光を灯していた。

 

夜空に光る星々に手を伸ばすような憧れと、雲1つない空に、虹を掛けるような好奇心。

 

そういうのをギュッと閉じ込めて、キラキラ光ってたんだ。

 

私はこの瞳を知ってる。レースを見たくてみたくて、そこに有るドラマが見たくてみたくて堪らない目。

 

希望と夢で輝く瞳だ。

 

ーー直感が全身が血が、私に教えてくれる。

『コイツと一緒に走ったら絶対面白くなる!』と。

 

……どれくらいの間見つめ合っていたのか、分からなかった。

 

 

そいつの言葉が私を現実に引き戻した。

 

「ウチのチームに入ってくれないか!」と大きな声で必死に呼び掛けて来る。

 

合理的な判断は捨てた。直感と感情がこのチームに入るべきだと教えてくれる。だから大声で応え返した。

「おうよ!お前のチームに入るわ!」

 

「えっ?」と鳩が豆鉄砲くらった顔をするトレーナー。

 

「ほんとに入ってくれるのか?」目に涙を溜めて、直ぐにでも溢れそうなのを我慢する顔が、苦労を物語ってる気がした。

 

だから、冗談めかして答える。

「ああ!お前は紅しょうがで生卵だからな!」

 

「は?」

 

「なんだよオマエ、牛丼に紅しょうが入れない派か?」

 

「いや、入れるけども……」

 

「じゃあ、すき焼きに生卵は?」

 

「付けるけども……」と歯切れ悪く答えられる。

どうやら何か、納得いかない様子だ。さっきの泣きそうな顔から、一変して困惑した顔へと変わるのが何だか面白かった。

 

「ま、とにかくオマエのチームに入るからな!」とビラを1枚腕から引き抜いて、その場を後にした。

 

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門から出ていき、寮へ向かう。今日の晩飯の事を考えながら、木々が生い茂る道を歩く途中。後ろから、さっきのトレーナーが追いかけて来た。

 

「なんていうか、その……ありがとう!」と息も絶えだえに叫んでくる。

 

「おうよ!……宇宙を覆い隠す程の人参を用意しとけよな!」と返しておく。

 

財布の中を覗いて困惑するトレーナー。こちらに何か話しかけて来る前に、全力疾走でその場を後に駆け出していく。

 

 

からかい甲斐のあるトレーナーとの出会い。これからの学園生活に退屈しなさそうだと確信した。楽しくなる未来へと胸を馳せる。

 

木漏れ日が明るく照らす道の中。風を切って駆け抜けて行った。

 




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地産地消ループその2
拙い文ですが、楽しんで頂けると幸いでゴルシ。


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