ここ数日間は、大規模なチームの入部テストや、自分の脚質を測る為の適正検査などがあった。なので、基本的には寮での生活がメインになり、偶にグラウンドに行く日々を過ごした。
朝ご飯もそこそこに、長年付き添った寮へとサヨナラを告げ進んでいく。
本格的な学校生活は今日から始まる。
期待を胸に軽くステップを踏んだ。
学校に到着し、自分の教室へと入る。その後先生が来て、朝礼が始まる。
お馴染みの自己紹介タイムだ。クラスメイトが各々の目標や未来の展望を語っていく。
「○○杯で勝ちたい!」
「○冠をとる!」
「有バ記念に出る!」
みたいな有りきたりな台詞ばかりだ。
自分の番が回ってきた。
ジュニア・シニア三冠を獲る。
G1レースで○勝以上する。
有バ記念で1位を獲る。
いま適当に思いついた抱負。確かにどれも格好良いし、聞こえもいい目標だ。とても具体的でゴールが分かり易い。
名誉、栄光、勝利。ウマ娘なら……、いや誰でも欲しい物だろう。私も欲しい気持ちが無いわけじゃない。
ただ、レースを通して欲しいものじゃない。
ーーだから、ただ自分の本心を話す事にする。
「早いヤツと競い合って、楽しいレースがしたい!」そう、それこそが私が望む事。私の心を揺さぶるもの。心の底から手が出る程に望んでいること。
「皆よろしくな!」
最高の笑顔で言い放った。
……全員の自己紹介が終わった。
これからのスケジュールが、黒板に張り出される。午前は座学、午後はトレーニングとシンプルな予定だ。
隣には、自分のチームの所在地が書かれている紙が貼られている。メモを取って忘れないようにした。
……睡魔との猛戦を繰り広げ、長い長い時が過ぎた。
軽やかなベルの音が鳴り響き、午前の時間の終わりを告げる。
クラスからいの一番に廊下へと飛び出し。昼食を摂るために、食堂へ向かう道すがら。
堅い決意を胸に抱いた。
次から必ず、ルービックキューブを持ってこよ……。
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高タンパクなものがズラリと並んだ食堂。入った時はあんなに美しく、甘美な匂いを漂わせていたのに……。
今は思い出しただけで少し気持ち悪い。
「いくら筋力を上げるためって言ってもだな……」しばらくの間顔を見てない、脳内のトレーナーへ愚痴る。顔、思い出せないけど。
メモを見ながら、所定の場所へと向かう。これから長い間を共にするであろう、部室の場所が記されてある。
「おーい、ゴルシ!」遠くから呼ぶ声が聞こえた。誰かがこちらに手を振っている。近づいて行くと顔がハッキリ分かる。
目を見て思い出した。トレーナーだ。
「おう!トレーナー、今日からよろしくな!」
「こちらこそ、よろしく頼む!」と明るい笑顔で手を差し出される。熱い握手を交わした。
「ここが部室だ」後ろの扉をガチャっと開ける。中には2人のウマ娘が座っていた。
同期との挨拶もそこそこに、皆でグラウンドへと向かう。全員の実力を目で見たいとの事だ。距離は2400m。
軽くウォームアップする。その間にトレーナーが、スタート・ゴールと書かれた看板とビデオカメラの設置を進めていく。全ての準備が終わり、スタートラインに3人横一列に並んだ。
スターターピストルの甲高い音が鳴る。と同時に走り出した。
エリート校に入る実力の持ち主。その秀才たちと走るのは初めてだ。今まで1位しか取ってこなかった。自分がどの程度の実力なのか見極めてみたい。
前で走る2人の後ろをついて行く。
序盤中盤は一定のペースで。規則正しく息を吐く。体力を温存する走り方を徹底する。務めて同じ動きを繰り返す。
最終コーナーを曲がった。
ガッと地面を踏み締める。
脚を高く上げ、腕は前へ大きく振る。
短いスパンで吸って吐く。
ストライドを大きくし、1歩の幅を大きくする。
脚を回してドンドン加速。
前へ前へ前へ出る!
2人に並び、一瞬で追い越す。そして理解した。自分は間違いなく速いのだと。
そして、このチームにはライバルと言える相手が居ないと言うことを。少し残念に思う。
青い空と翠色の芝生だけの世界。
大差を付けゴールラインを通過した。