序盤はツイッターで流してたやつの転記です。
【序】~【Chapter1-1-1】
<序>
「よるは、あぶないよ?」
ずっと、ずっと昔。
もう顔も名前も覚えていない、二人の女の子。
そんな見知らぬ誰かに出会ったのは、夕方になり始めた山の麓だった。
「あぶないの?」
良くは覚えていない。
ただ女の子と覚えているのも、その髪色が他では見ない物だったから。
それが印象に強く残った、それだけの話。
「しらないの?」
「しらないなぁ。」
その日は祖父ちゃんの家から自宅に帰る二日前で。
あちこちを探検した帰り…だった、筈だ。
「なんで?」
「なんでも。」
「あぶないからはなれよー。」
特に理由も気にせずに。
麓から離れた場所で別れて、それから。
そういや見たことない二人だったなー、と。
そんなことが気になったくらいだった。
結局、彼女たちと会ったのはたったの二回。
一回目は、山の麓で。
二回目は、少し離れた神社の近くで。
他に誰かがいたわけでもなく。
ただ、偶然に再会して。
特に何をするでもなく、無邪気に遊んで。
「わたし、***です。」
「おれは、****。」
「**ですー。」
別れ際に、何かの約束をした筈。
けれど、それも思い出せない。
挨拶をした筈なのに、何も記憶にない。
ただ。
そう、ただ。
何処か、悲しそうな目だった事だけは――――強く覚えている。
その目だけは、未だに忘れられない。
だから、俺は――――。
<Chapter1-1-1>
「――――さん。」
誰かに、声を掛けられて。
煩いなぁ、と思いながら目を開いた。
「お客さん、
車の音、辺りは都会とはまるで違う山の中。
今乗っているのは……ああそうか、タクシーに乗っている最中に眠ってしまったのか。
「ええ、と……すいません、今どの辺りですか?」
「あー……すいませんね、私この辺りには詳しくなくて。」
申し訳なさそうに下げる頭、けれど目は冷たく。
何か、モノでも見るような視線。
「……そうですか。 じゃ、ここで大丈夫です。」
代金を精算し。
降りる間際に聞こえた「イヌツキ」と呼ぶ言葉。
それだけで先程の言葉が嘘だと判断できたけれど……言うだけ無駄だ、と思い返した。
ずっと昔から、「イヌツキ」と呼ばれ差別される土地――――穂織。
俺の母方の祖父の住む土地であり、昔はよく来ていた場所。
ただここ最近は学校や受験といった理由を付けて、来ることはなかったけれど。
「折角の春休みだってのになぁ……。」
母親に蹴り出されるようにして、祖父の経営する旅館の手伝いにやってきて。
初めに聞いた言葉が、差別するかのような言葉。
溜息でも吐きたくなったが……まずは旅館に向かうことにしよう、と。
少し先に見える、町並みへと進むために。
荷物を肩に背負い直した。
ちゃり、と。
荷物入れに付いた、鈴とお守りが小さく鳴った。