恋心、想花の如く。   作:氷桜

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遂に100話目、まだ共通パートとかいう長さですが今後も宜しくお願いします。
*記念で一日くらい番外編アンケート取ってます。


<Chapter3-1-5>

 

<Chapter3-1-5>

 

かさり、と触れた紙は小さく音を立てた。

普段から見慣れた、一般的なノートと古い本のような紙の纏め。

一抱え程になるそれらは、朝武の家の長年の歴史を物語るに相応しい量だった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()。 それ以降、この倉庫に収めるようになったそうです。』

 

あの後暫く経って。

未だに動悸が治まらないながらも、震えから脱した茉子ちゃんが教えてくれたことだ。

伝承では、巻物上に纏められた……それこそ家系の本当の始まりの情報さえあったとは言うが。

それらが今は存在しない、というのは致し方のないことと諦めてしまう他無いのだろう。

 

一度、深く深呼吸。

一枚、紙を捲って。

左上から書かれた内容(ノート)に目を通す。

 

(……疑問点があると思う、って言っていたけど。)

 

そこにまず書かれていたのは、一般的に伝わる叢雨丸に関わる伝承。

俺自身も芦花姉から伝え聞いた、何故か内容を知らなかったあの話。

妖怪を祓ったという、霊刀の話。

其処に線で伸ばされた、赤字で記された疑問点。

 

一般的に残された妖怪伝承は、見知らぬモノや名前さえ消されたモノなどの存在を示している。

つまり、この時点で”妖怪”と呼ぶに相応しい何かが存在していたのは確実視して良い。

 

……それを見て、納得がいく。

実際オカルト関係を調べていく内にたまに見かける言葉だ。

妖怪――――普通であれば、過去のオカルト現象に名前を付け恐れる人間特有の考え方。

神話であり、時代が下るに連れて妖怪へとなり。

『納得がいかないものを納得がいくようにする』……それだけだったはずだ。

祟り神に出くわすまでは。

 

次のページをまた一枚。

 

記されているのは、俺が見知らぬ伝承。

恐らくは朝武家に代々伝わってきたのだろう、この家から見た真実の一端。

 

『その昔、朝武家には二人の跡取りがいた。 長男は粗暴、次男は聡明であり人格者。 

 必然、次男が家を継ぐべきという声が日に日に増していた。

 長男は当然それに対し不満を抱いたが、周囲には長男の味方をする人物は誰もいなかった。』

 

……この時代がいつなのか、次第にも依るが。

長男継承であることを必須にしていなかったことから人物像次第で判断する家系だった、と判断して良い。

まあ此処に書かれた文章をそのまま読むのなら、という前提でもあるし。

傅役にも似た教師すら味方がいなかったことから考えれば……切られる寸前だった、と考えてしまう。

続きへと、目を通す。

 

『そんな長男へと声を掛け、扇動し――――謀反を起こさせたのが隣国の長であった。

 また、長男は自身を認めない父や弟を恨み、呪詛を執り行った。』

 

また、此処で線が伸びる。

 

つまり、妖退治という名目は正しくも間違ってもいない。

 妖退治、跡目争い。何方の理由も内包する。

時期としては謀反を起こす直前と考えるのが妥当だろうか。

 相手を疲弊させる策とまで考えていたかは不明。

 

……父を、弟を呪う。

その感情がどれだけ深かったのかは分からないが。

土地自体を呪う程に強大な呪いへと発展した理由はなんだろうか。

感情なのか、或いは呪物なのか。

その何方も、と考えてしまうのが妥当なのだろうが……。

一旦思考から脱し、続きへと目を向ける。

 

『土地を穢す呪いに対し、朝武家は……次男は土地神より神刀を賜り。

 それを以てして長男を討ち。 合わせ隣国を打ち払った。 これぞ叢雨丸の伝承である。』

 

ただ、他の資料から鑑みて長男に妻子がいたことは疑う余地はない。

 此方に関し、神社に存在する資料では詳細は全て塗り潰されていた。

――――別の方面より、その後の情報を得た。

 ()()()()()()()()()資料より、追跡は可能だろうと思われる。

 

「……常陸、家?」

 

赤文字を指で追い。

そんな言葉が、口から漏れていた。

 

茉子ちゃんが呟いていたのは、こういうことか?

元は朝武家と常陸家は同じ家系であり。

けれど妖関係……跡目争いによって家が割れた。

今も彼女が朝武家に仕えるのはそれが始まりで。

情報を、深く事情を知る一因であるのはこれが理由で。

 

(……だからか。 謎が出るだろう、っていうのは。)

 

確かに言っていた。

()()()()()()()()()()()()()、というのは。

それはつまり、別の情報が眠っているということ。

朝武家へ掛けられた呪いが、獣耳だけではないのでは――――そんな風に疑問に思い。

答えを貰ったかどうかが、不思議と曖昧だ。

 

「……聞かなきゃ、か。」

 

一通り、二通り。

頭から最後までを読み直す。

糸で綴じられた文書は古い言葉で記されているためか、完全に読み解くには知識が足りない。

だからこそ、俺の参考になるのはこのノート。

 

(血腥い争い、未だに続く祟りの継続。 ()()()()、なんて言葉よりも尚酷い。)

 

あれは確か末代まで滅ぼすって意味合いだっただろうか。

自分の家系に対する呪い……下手をすれば、その頃には自分のではなくなっていたのかもしれないが。

二人の家系に繋がりがない俺だからこそ、調べられている側面は確実にある。

 

――――助けたい。

浮かんだのは。

顔も思い出せない、過去の少女二人。

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