*アンケートありがとうございました。その内書きます。
<Chapter3-1-6>
その間何をしていたのかまでは読み解け無い、夜も深まり深夜に差し掛かる時間帯だった。
どうでしたか、と聞かれたのは水を飲みに出たキッチンで。
影に潜んでいる様子から、忍者という自称を思い浮かべるくらいに影は薄く。
闇に溶けてしまいそうな儚い笑みを浮かべて立っていた。
『幾つか聞きたいことがある。』
『分かっています。 ……芳乃様にも声を掛けたら、始めましょうか。』
居間ではなく、何故か俺の部屋で。
ワタシに伝えて下さい、と言っていたはずなのに何故か二人で。
何となく、二人との関係性が変わってしまう予感がして。
分かった、と告げながら
異性の幼馴染、友人――――それだけで済まないような。
「「失礼します。」」
声が二つ。
同じ言葉が、違う音色で響いて障子が開く。
開いていたノートをそのままに。
学校用の空いていたノートに、幾つかのペンを用意し。
写す場所と、自分なりの考察を書き殴った……そんな物を参考にしようとしていた。
「夜遅いけど、大丈夫?」
既に時間帯としては寝る人間は寝てしまうくらい。
恐らく安晴さんは既に寝ているだろう。
そんな時間に、異性の部屋で。
変な勘ぐりをする人間だったらしてしまうだろうし。
同時に、巫女姫としての役割や家事と自身の生活を同時に送る二人には負担になる可能性もある。
「はい。 明日は特に予定もありませんし……。」
「ワタシも……安晴様にご了承は頂いていますから。」
寝る用意をしていたのか。
いつもの、見覚えがある若干色気を感じる寝巻き姿の
恐らくはそれの色違いか、似たデザインなんだろう。
既に泊まる用意すら整えた格好で、先程とは衣装の違う
それぞれがそれぞれの言葉で、問題ないことを口にする。
「そっか。」
だから、その話は其処までだ。
「なら……話をしよう。」
だから、この話を始める。
一呼吸を、置いた。
ちっ、と一瞬電球が暗くなったような錯覚を覚えた。
今が呪いの時間だからだろうか。
暗闇が、周囲に広がるような感覚を三人が共有する。
「普通に広まってる話とは違う、本来の伝承……っていうのは、読ませて貰って理解した。」
はい、と口にしたのは何方だったか。
口元も揺れず、声にもされず。
ただ、そう呟くのだけが聞こえた。
「その上で聞くけど……これ、二人の家系っていうか常陸家の始まりってそういうことでいいの?」
「……そうですね。 もう、知っているのは朝武家と
そうして茉子ちゃんが口にしたのは、認めるのと合わせ。
実際にどう伝えられてきたのか、どうしてきたのかを指し示す言葉。
「ワタシが知ったのは、確か……小学校に上がるかどうかくらいだったと思います。」
「芳乃ちゃんは?」
「私はお母さんに教えて貰ったというのもありましたが……そうですね、同じくらいだったと思います。」
成程、まあその辺りは語り継いでいたというのと文書と両面な訳だ。
ある程度でも理解できる段階で。
子供の頃から教え込んで、それに従わせるようにして代々続いていく。
「一応、どんな形だったかは聞いても良い?」
「はい。 『ご先祖様がやってしまったことで私達はお姫様に仕えているんだよ』……みたいな感じだったかと。」
「私はまあ、祟り神に関してと……後はもっと前からですが、舞の作法とかですね。」
頷きながら、ペンを動かす。
”時代が下るにつれ『真実』は子孫に伝わっている。”
”口伝と、当人の記録と、部下の記録等々があるようだ。”
同じような赤色で。
自分なりに考える種として。
「……これも、話しておいたほうが良いですよね。」
そうして前提を確認した上で。
茉子ちゃんが語り出したのは、ある程度想定していた通りの話。
長男視点から見た、跡目争いの封印された情報。
「父親が年を取り、本来……というよりは当初は跡継ぎだとされていた長男よりも、可愛がっていた次男を優先し始めたらしいです。」
「それは……その、長男の記録?」
「だと思います。 常陸家から持ち出すのは厳禁とされる資料ですので。」
「口にするのは?」
「其処は特には。 ……最後のほうが、赤褐色で染まっているのもありまして。」
彼女が言うことには、それを持ち出そうとすると『不幸』が待っているらしい。
母親がまだ子供の頃に駒川の先代が態々何日か滞在して解読・転載・ノートに記して持ち帰ったくらいには。
今ならコピーで済むのに……いや、それはそれで怖いか。
「呪術に関しても隣国から派遣された呪術師から学んだ方法だそうで。」
「犬神の方法を?」
「はい。 山の裾……そうです、この裏山の近くで見つけた犬を贄にしたとか。」
ただ、何処で執り行ったのかの記述はなかったという。
……その場所の何かが切掛で被害が拡大化した可能性は十分に考えられる。
次……そうだな。 次が起こる前に一度何人かで見ておきたい。
そして、彼女は押し黙る。
呪いを執り行った家の末裔と。
呪いを受けた家の末裔。
その二人が、俺の前にいる。
まるで裁きを受けるようで。
次の言葉を――――待ち望むように。
だから。
俺は、彼女に今の思いを口にした。