恋心、想花の如く。   作:氷桜

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事前の準備(1)。


<Chapter3-2-3>

 

<Chapter3-2-3>

 

朝食時、二人の様子は余り変化していないように見えた。

……いや、影響がなかったわけではない。

 

「はい、将臣さん。」

「うん、有難う。」

 

例えば今のような、普段と化した日常の一コマ。

色々と面倒を見てくれる茉子ちゃんに、いつも通りの謝礼を返す。

受け取る際に手が触れるとか、何度もあった出来事でも。

 

「あっ……。」

「……あ、ごめん。」

 

少しばかり頬を染めつつ、そんな意味深な空白が巻き起こる。

一見すれば、今までの生活通りというだけで。

実際には新たな生活が始まってしまっている、と言ってしまって良いような日常。

勿論そんな俺達を見て、唯でさえ細い目を更に細めて線のようになっている安晴さんとか。

ちょっとだけ機嫌が悪そう……というか前のようにつーんとしている芳乃ちゃんとかがいるわけだが。

 

「……朝から。」

「さて、見つめ合っているのは良いんだけど。 朝ご飯にしないかい?」

 

……いや、それで流して良いのか?

ひょっとするなら彼女も身内の子というか親類認識だからかも知れないが。

立ち位置からすると俺は貴方の娘の婚約者なんだけど。

 

「そ、そうですね。」

「も、申し訳ありません。」

 

ただ、そんな疑問を口に出せるほど図太くも無い。

慌てて異口同音にそんな謝辞を口にして、席へと座って食事の挨拶。

 

「……芳乃も頑張ろうか。」

「私には私の方法がありますから。」

 

ただ、目前でそういう話をしないでもらえますかお二方。

凄い居辛い……が、今なら丁度良いか。

空気を切り替えるという意味でも、逃げるという意味でも。

 

「あー……すいません。 ご飯時なんですが、ちょっと確認してもいいですか?」

 

そんな言葉に、口の中身を飲み込んでの御三人。

躾がきっちりしているというか……食事に限っても仕草が綺麗なんだよな。

真似したくなる感じ。

 

「ああ、将臣くんの頼みなら出来る限り傾ける耳を持ってるつもりだよ。」

「有難うございます。 ……あー、そもそも了承以前に大丈夫か、からの確認になるんですけど。」

 

視線を裏山の方に。

目線を急に向けたからか、若干訝しみながら俺の言葉の続きを待つ。

親子だなぁ、という二人と。

なんだろう、と首を傾ける一人と。

 

「昼間時に裏山……多分頂上までは行かないんですけど、途中まで登るのは大丈夫ですかね?」

「裏山に?」

「えっと……将臣くん?」

 

親子から出る疑問点。

余りに気にしすぎるからか、この二人からは出ない事柄なのかもしれないが。

子供達なんかは普通に遊びに行ってしまうような距離にある訳で。

そもそも初めて祟り神に遭遇した時もそんな切掛だったなぁ、と浮かびつつ。

 

「ふざけた理由とかそういう訳でもなくて……何と言えば良いのかな。 ムラサメちゃんとも相談した内容なんですけど。」

 

そんな前置きをしながら()()()()()()説明する。

祟り神が顕れる場所を昼間の内に見回っておきたいこと。

言い伝えを調べた上で浮かんだ疑問点。

みづはさんにも確認し、共有している幾つかの事。

大半の内容は芳乃ちゃん・茉子ちゃんは知っていること。

ただ、全てを安晴さんが知っているとは思わない。

 

説明していないわけではないのだが、どうしても直接の当事者から一歩引く位置にいる人で。

情報を真っ先に得られる立場からはその分距離が空いてしまっている為。

……その分細々としたことや祭祀ではお世話になっているので、本当に頭が上がらない。

何より、裏山を含めて朝武の持ち物という事実は非常に重い。

――――だからこそ、説明して協力が欲しい。

 

「成程ね……。」

 

俺の拙い説明を受けて呟いた言葉はそんな始まり。

食事をしながらする話ではなかったと反省。

少しばかり冷め始めた食事を再開しながら、言葉を交わし合う。

 

「僕としては問題はない。 寧ろ今まで話していなかったことを謝るべきなんだろうけど。」

「いえ、それも当然だと思いますので。」

「そう言ってくれると助かるよ。 ただ、問題は祭祀……鎮魂の儀の方か。」

 

芳乃、と彼は口にする。

少し悩んで、芳乃ちゃんも返事をする。

 

「……恐らく、大丈夫だとは思います。 影響も反応も出てはいませんから、形作られてはないのは確実です。」

 

ただ、と更に付け加える。

 

「お父さんも知っての通り、私達は普段から出来る限り出入りしないようにしているでしょう?」

「ああ……呪いの刺激を畏れても勿論あるが。 『山』だからね。」

 

()()()()()()

()()()()()()

そんな山で過ごす人間にとっての言い伝え。

だからこそ、女人禁制とされる場所だって存在するのが異界としての『山』。

 

「だからこそ、本来なら水垢離とかもしておきたいところなんですが……。」

 

ちらり、と横目で俺を見る。

 

「一度、入ってみるというのは有りかもしれません。 実際、何かがあれば助けて貰えますよね?」

「当然。」

「なら……はい。 私としてはこれ以上は何も。」

 

そんな風に許可が降りる。

……そうなると、頭数どうするかな。

一応清めてもらった上でになるが、あの二人も大丈夫かどうかも確認しよう。

 

「……で、此処の四人に加えて後二人ほど頭数増えてもいいかな。」

「……と、言いますと?」

 

改めて、説明を始めた。

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