<Chapter3-2-9>
食事を終え、先程見掛けた奇妙な反射元へと向かった俺。
其処は山の上部側から雨なんかで流れてきたのだろう木の枝などが載積しているような場所だった。
枝に引っ掛かって何処かに飛んだりしないよう、一つ一つ丁寧に取り除く姿を二人は見ていて。
ある程度のところで発見した破片のような石を見つけ、川辺へ移動しようとした際に声を掛けられた。
「あの……将臣さん?」
「先程から見ていましたが、一体何を?」
正直「あー」と口から言葉が漏れた。
此処まで細かい話を一切せずに動いていたことを思い出す。
そりゃ疑問に思って当然だよな。
「……この間みづはさんと話した内容覚えてるよね?」
「この間……どの話ですか?」
「呪いが残り続けるには呪物がいる、って話。」
……確かに何度か話してるから色々混じるか。
或いは――唯の妄想に過ぎないけれど――
普段ならもう少し鋭い二人が気付かない、或いは数百年気付けなかったというのも疑問点の一つなのだから。
「ええ……って、事は。」
「まだ分からないけど、可能性は高いと思ってる。」
「それが、ですか?」
ビニールシート際から小走りで駆けてくる二人と合流。
泥だらけ、とまでは言わないが乾いた白い土に湿った黒い土。
それらが入り混じり汚い印象のあった石を川で洗浄する。
「まだ何とも言えなかったから黙ってたんだけど。」
水滴で輝く破片を拭き取りながら。
そんな前置きを挟んで二人に伝えたのは、この間の祟り神祓いの際に拾い上げた破片の話。
ただ、祓った現場に落ちていただけ。
俺が見ても、ムラサメちゃんが見ても特に何かが目立つわけでもなかった物品。
ただ、改めて過去の歴史を知ったことで疑問は更に深まっていったこと。
「だから、っていうのもあって今日調べに来たんだけど。」
そうして何かしら……例えば、似たような破片が異様さを放っているのなら。
同じような破片が見つかるのなら。
それは呪物が砕け、祟り神の発生する起点となるのではないか。
そんな妄想を抱えていたのだと口にした。
「……少し、貸して貰えますか?」
「気をつけて。」
恐る恐る手を伸ばす芳乃ちゃんにそれを摘ませるように手渡す。
指先が、それに触れると同時。
ぱちん、と何時ぞや教室で聞いたような弾ける音が耳に届き。
彼女の指が少しだけ距離を取っていた。
「今、のは……。」
「芳乃ちゃん!?」
「教室で、起こったのと同じ……?」
心配する俺。
放心する芳乃ちゃん。
一度見たことがある光景に戸惑いを隠せない茉子ちゃん。
三人が三人共で声を上げ。
『お主ら、一旦そこで落ち着け。』
割り込んできたのはムラサメちゃん。
その声に、脳裏に過っていた霧が少しだけ晴れる。
『芳乃。 怪我はないのだな?』
「……はい。 怪我は特にありません。」
『茉子。 以前に見た、というのは後で改めて聞かせよ。』
「分かりました。 その際はお二人も。」
『うむ。』
テキパキと対応するのに慣れているように。
或いは少しだけ距離を取っていたから動けたのかもしれないが。
そうやって介入してくれたことで、俺達の混乱はすぐに収まることになった。
『取り敢えず、お主等二人は一度顔でも洗ってこい。』
「顔……ですか?」
『自分自身が見えないのは当たり前だが、頭部に穢れが寄ってきておるぞ。』
簡易的な水垢離じゃ、と少女は告げて。
その言葉に顔を真剣に整え、二人はタオルを手に取り川辺へ進む。
その場に残されたのは、俺と二人。
そうして向かう前に、小石は俺の手へと戻された。
「…………あー、ごめん。」
『構わんよ。 混乱するのも分かる事じゃからな。』
掌の上で転がる石。
元はガラス質のなにかだったのか、日に翳せば向こう側が少しだけボヤけて映る。
何処かから転がってきたのかは不明だが角は丸まらず、未だに鋭利な部分があり。
そして何より、
(……内側から溢れてる? 或いは染み付いてるのか? 湧き出てるのか?)
元になった物体は、一体何なのだろう。
発生原因次第でも対処方法は変わるだろう。
そして、そもそもの切っ掛けが……未だに呪いが続く程の恨みの根源も分かっていない。
そうして見つかったのはたったの一つ――――明らかに破片の数が足りていない。
足りない、分からない。 謎が謎を掘り起こし続けている。
「確定……いや、ほぼ確定でいいか?」
『関わりがあるのは間違いないと思う。 少なくとも結界内……神社内に持ち込めばまた同じ結果になりそうだが。』
それだよなぁ、と思いながらもビニールシートに横になった。
……迂闊に街にも持ち出せないし、どうするか。
最終的には呪物を祓う為に持ち込む必要があるとしても、その前段階。
出来ればこのままにしたいし……。
そんなぐるぐるとした思考の中。
破片の周囲の瘴気が、