<Chapter3-2-11>
「「将臣
二人の元に戻った後で。
何が起こったのか蚊帳の外だった二人に対し。
どのように説明すれば良いのかを悩んでいた俺を後目にムラサメちゃんが自分の目で見た全てを話す。
そうしたら正座させられて(外だぞ?)眼前で詰められている。
「……いや、あのですね?」
「今は言い訳は聞きたくないです。」
「他に言う事言ってほしいかなぁって、ワタシも思いますね~。」
口調は余り普段と変わらない。
ただ目が全く笑っていない。
何方かといえば、これが辛い。
「……すいませんでした。」
実際俺が悪いのは分かってる。
ただ、あの場で説明せずにどうすればよかったんだ?
二人が戻るのを待って説明しろと?
……出来れば近付けたくない密度と濃度の場所だったのに。
「はぁ。 …………いえ、多分身勝手な理由ではないんでしょうけれど。」
その深い深い溜息と、空白に感情が滲み出ていた。
心配する気持ちと、怒らなければ……指摘しなければいけない理由と。
多分色々な思いがぐちゃぐちゃになったような声色。
そういった部分を
「……まあ、芳乃様が一旦納得したなら置いておきましょう。」
後で個別で言いますけど、って裏音声で聞こえたんだけど。
まあ、甘んじて受け入れるしかないんだろうなぁ……。
何も言わなかった、というのは事実なんだから。
「将臣くん、貴方の視点から何が起こったのかを教えてください。」
元々何処かで説明はする気だったが、こうも詰められたら今済ませてしまうしかない。
「……分かった、ただ前提から共有させてくれるか?」
「前提、ですか?」
「そう。 まず、
理由を、理と情から説明する。
張本人に言ってしまうのははっきり言って恥ずかしいけれど。
多分言わないと納得してくれない気がした。
「……え?」
「っていうのも、さっき二人が川辺で顔を洗ってた時。 さっきの小石から糸みたいなのが見えたんだ。」
「糸、ですか?」
否定されたような顔をする茉子ちゃんを一旦置いておいて。
先にある程度の事情を説明しようと伝えてしまう。
結局、あの渦のような線……糸が全ての根幹に関わっているのだろう。
何しろ、俺が自分で握っていた時には何の変化もなかったのだから。
「内側から吹き出る糸と、後は外から瘴気を吸収してるような糸で二本。」
「吹き出て……吸収ですか。 それも瘴気を。」
ああ、二人共考え込み始めた。
一応理由は分かってくれたということで許して貰えるだろうか。これなら。
「その上でちょっとこれを見て欲しいんだけど。 見える?」
袋に入れた小石も、外部を遮るそれを無視するかのように未だに吸収し続けている。
……ただ、
手に触れないように、俺が指先で袋を摘んだような形で。
二人はそれを見て。
「……ううん?」
一人は小さく首を捻り。
「……この吸ってるようなもの、ですか?」
一人は指摘するように、口にする。
「え? ……何が見えてるの、茉子。」
「え? いや……ですから、先程将臣さんが言っていた……あれ?」
互いに同じものを見て、違う言葉を口にする。
見えているか見えていないのか、その差ではあるものの。
その差が決定的な違いであることは指摘するまでもない。
「それと同じことが俺とムラサメちゃんの間でもあったんだよ。
……いや、二人共見えないんじゃないかって気にしてたんだけど。」
「待って下さい。 何で将臣くんと茉子だけが……?」
「それが分かれば苦労はしないんだけど……。」
そして、此処で二つに分断された。
見えている二人、見えていない二人。
主因は全く分からない。
だが、推測できる条件は一つ思い当たる。
「
総量。
つまりは穢れに対抗できる手段が何処まで取れるのか。
『待てご主人。 普通は逆じゃろう?』
「ああ、普通なら俺もそうは思う。 ただ、それなら二人だけが見えてるはずだろ?」
それにもう一つ、理由というか想像に近い考え。
「それにさっき、芳乃ちゃんが触ったら妙な反動が起きてた。」
「……反動というか、静電気みたいな感覚でしょうか。 前にレナさんと握手した時のような。」
「あれってつまり、無意識に極微量の瘴気に抵抗したから起こったんじゃないか?」
何故彼女に宿っていたのか、其処までは分からない。
穂織にやってきた時、転びそうになったのを手助けしたがあの時は何も起きなかった。
つまり、そういったものに対して俺達が鈍感過ぎるのか。
ムラサメちゃんは在り方がそういうものだから別としても、芳乃ちゃんが敏感過ぎるのか。
或いはあの短時間で身に宿してしまったのか。
そのどれかが、今思いつく回答ということになる。
「ええと、つまり……。」
「俺達が見えたっていう理由を追求する必要性も有る、ってことかな。」
何しろ、見えたものをそのまま信じて良いのなら欠片を探すセンサーのように役に立つ。
但し、結界内に持ち込むわけにも行かないという矛盾。
……どうしたもんかな。
そう思いつつ、目線を周囲に配ってみれば。
全員が全員考え込んだ状態で、目を伏せていた。