そろそろ終わるはずだけど原作だとほんわかチャプターってマジ?
<Chapter3-2-13>
いつだったかに見た覚えの有る。
誰かと誰かが話す声がするだけの、夢を見ていた。
『――――。』
『――――!』
片方は座ったまま見上げ。
もう片方は立ったまま怒鳴り散らすように。
実際に声が聞こえる訳ではないのに、周囲に怒声が響くように感じるのは。
恐らくは身振り手振りを含めた部分が含まれていたからだろう。
『――――……!』
『――――。 ――――――――。』
諫めるような片方。
怒り、物に当たる片方。
そんな明らかな二人を見、思い起こしたのはノートで見た過去の朝武家の伝承。
それを元に俺の中で想像しているのか。
或いはもっと
見る以外の行動が取れない俺に取っては何方が正しいのかすら推測も出来ない。
『…………!』
やがて、激高したのか。
片方――立ったままの方――が近くの机の上を蹴飛ばし立ち去って。
『…………。』
座ったままの一人が、そんな彼を見上げながらも悲しそうに何かを呟いていた。
声が聞こえなければ何の意味もなく。
何かを伝えたいのか、或いは残響のような感情なのか。
それさえも、眺めるしか無い。
(……多分、こうやって見られる事自体異常なんだろうが。 何で俺なんだ?)
観客として、第三者として。
映像を流されているような形で常に視界にそれを捉えながらも。
そもそもの起点。
瘴気が見える、糸が見えることに加えてこうした映像が見られる事は明らかに異常。
(……
叢雨丸。
可能性はあるがムラサメちゃんも見られないのが謎。
血筋。
廉太郎や祖父ちゃんが見られない理由が付かない。
そんな大事な血筋って程でもないはずだし、何より俺は既に扱いとしては
それが理由だとすればもっと優先される人物がいる。
年齢。
まず絶対にない。
立場。
……まだ納得がいくのがこれか。
ただ、それなら
つまりある程度可能性はあるけど灰色。
そんな幾つか思いつく考えを浮かばせては消していく。
結局一人で幾ら考えても無駄だと分かっていても、それ以外に出来ることがないので考え込む。
……気付けば、画面は移り変わり。
白い光に包まれつつも――――。
『――――!』
誰かが、呼ぶ声が聞こえた。
『――――ん!』
段々と近付く声と、はっきりしてくる音。
全く聞こえなかった映像のものと違う、良く見知っている誰かの声。
『…………ますか!?』
『…………ないから吸い上げた後にするしかない!』
声が増えた。
どうしたものか、と思った瞬間に。
『……かりました!』
『……まぬ。 吾輩では駄目じゃった。』
叫び声。
その後少しだけの時間が経って。
頬の辺りに熱い水滴。
それが二度。
(――――?)
体内から吸い上げられる、奇妙な感覚。
次いで体内に感じる熱を超える炎のような何か。
体の内側から焼かれるような、抱かれるような不思議な感覚。
何かを失って、何かを得たような……
(…………え?)
少しずつ、目が見開かれていく。
暗闇に光が差し込み、映像が少しずつ薄れていく。
熱が少しだけ離れ。
体内のモノが倍、更に倍と増え続け。
どくんどくんと心臓の音が大きくなって。
「……っは!?」
がばり、と上半身を立ち起こす。
視界を刺すのは太陽の位置が少しだけ傾いた森の中。
目の前数センチの距離に、顔を真っ赤に染めた芳乃ちゃん。
そのほんの少し後ろに、同じように唇辺りを押さえた茉子ちゃん。
二人は視線を合わせようとせずに、真っ赤にした顔を地面へと伏せていた。
『ご主人!』
背後、ほんの少しだけ離れた場所からムラサメちゃんの声。
位置からして恐らく地面に近く、座り込んでいるかのような高さから。
「…………いや、何があったんだ?」
そんな言葉が出てしまう。
今がどういう状態なのかを理解していない。
映像を眺めるまでの薄ぼんやりとした記憶はあるけれど、其処から今までの間の記憶が存在しない。
『覚えておらんのか!?』
「いや……悪い。 全く。」
『……恐らくじゃが、ご主人の体内で穢れが蓄積・暴発した感じかの。』
……暴発?
『明らかに異常な状態、体内から吹き出す瘴気。
吾輩が
「……それで?」
『そこで、
融合した時点で一時的に霊力が尽きていたからの。
そんな言葉だけは一定のリズムで、口調は色々と言いたいことがありそうで。
そして何より、自分を責めているような口振りで呟いている。
「……そっか。 悪い、俺のせいだろ?」
『いや……まあ、アレじゃな。 二人は今は話せないじゃろうし。』
……一体何をしたんだ。
いや、感覚から浮かぶのは有るけど考えたら死にたくなるから考えない。
『一旦此処で休んでおれ。 茉子、動けるようになったら先程のとおりに。』
口を開かずに、小さく首肯。
……普段と違って小動物じみたところがあって数割増しに可愛く見える。
『夜、じゃな。 再びご主人の部屋で、話をしよう。』
そう言い放って。
河原での無言とはまた違った無言の状態が、少し。
森の中で続いてしまった。