恋心、想花の如く。   作:氷桜

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夜、話し合い再び。

*この話の後で作品イメージOP:花鳥諷詠が流れるイメージです。


<Chapter3-2-14>

 

<Chapter3-2-14>

 

結局その場で待つこと暫し。

早足でやってきたのはみづはさんだった。

曰く、もう入り口まで五分程度の場所まで戻ってきていたらしく。

その場で出来る簡単な診察を経て、俺は「肉体的には」解放を許可された。

ただ、問題はあの小石に関してだったけれど――――。

 

『その……石? 一度結界の中と外を行き来させてみては駄目かな?』

 

そんな負担をかける提案を芳乃ちゃんとムラサメちゃんが了承した()()()

元々持ち込んでいた物を外に出せば、山の麓に滞留していた穢れを吸い上げたらしい。

その場で芳乃ちゃんが簡単に祓った上で再度結界の中に持ち運べば。

清められたのか、糸は見えなくなったという。

 

『……成程ね。 私には見えないが、保管するならば神社しか無いわけか。』

 

その事象を隣で説明されたみづはさんはそう呟き。

結局、神社本殿にて”破片の一つを除いて”毎日清められることが決まったとのこと。

 

……何故、此処までが伝聞形式なのかと言えば。

肉体的には解放されても、精神的な診断ははっきりせず。

夜になるまで自室で封印され(たいきし)続けていたから。

いや、トイレに行くのも誰かが付き添うとか物凄い恥ずかしかった。

 

そうして、夜。

 

「……あの。」

 

この間と同じ顔触れが俺の部屋に佇んでいる。

二人の顔は落ち着いた、と思えばまた顔を赤くしたり。

()()()()()()()()()()()()()()()()()、というのが近い気がする。

 

そしてムラサメちゃんは一時的に離脱中。

何やら『一旦離れておいたほうが良いじゃろう?』とか言ってたが。

……幾ら俺でも、あの時の感覚と今の変化から察してはいるから余計なお世話だ。

 

「…………えーっと、二人共?」

 

さっきから二人共だんまりで。

言葉を口にしようとしない状態なら、と思ってしまうのは多分一番駄目な流れ。

だから、自分から口火を切る。

 

「まずはお礼を言わせて欲しい。」

「……いえ。」

「当然のことをしたまで……ですから。」

 

ぼそぼそと小さく呟く声は耳を澄ませて漸く聞こえる。

普段とは明らかに違う、二面性さえも思わせる姿。

()()()()()()()()()()()()、というのは俺の中の微かな嗜虐心を刺激しそうになって困った。

 

「いや、俺が勝手に思い込んで進んだせいだから……。」

 

そんな言葉に、二人は即座に違うと否定した。

 

「……助けるのなんて、当然ですから。」

「ワタシ達の為に、学校まで転校して頂いたのですから。」

「いや、それは二人の為っていうか自分の意志なんだけど……。」

 

前々から思ってはいたが。

二人は外へ負の感情を漏らそうとしない。

いや、漏らせる相手がいない……といったほうが正しいか。

自分のせいで、とどんどんと溜め込んでしまうタイプ。

 

「それは、違います。 だから、当たり前なんです。」

「はい。 今は……その。 ちょっとだけ変ですけど。」

 

直ぐに元に戻りますから、と小さく聞こえるか聞こえないかの声色が響いた。

それから、少しだけ無言が続く。

 

(……立場からすれば、俺が聞いてやるべきなんだよな。)

 

まあ、うん。

中々口に出来ないよな。

 

この間の話を聞く限りの彼女達の思考と言い。

朝武/常陸家の繋がりと言い。

自分達の幸福なんて概念は彼女達の「自分」としての中でだけ息をしている。

家が第一、穂織が第一。

だからこそ、今こうしている事と――――自分からしてしまった事と。

後は女の子らしい考え方からなんだと思う。

――――そんな二人を、俺は好きになったのだから。

 

「……分かった。 はっきり言うよ。」

「……?」

 

一呼吸。

俺自身も言いたくはない。

が、俺が責任は取るべきだと思う。

 

()()()()()()()()()()()()()()()は大体予想できてる。」

 

反応は劇的だった。

 

「……………………はい?」

「今、なんて言いました?」

 

先程まで伏せていた顔を起こした。

聞き間違いであってくれるのを祈るような声色で。

少しだけ離れて向き合っていた俺に近付く。

まるで瞬間移動でもしたように、そのままの体勢で近付かれてかなり怖かった。

 

「いや、声は出せなかったし耳も聞こえなかったけど……感覚は残ってたんだよ。」

 

だから、ほら。

感じた状態と二人のあからさまな表情の変化と。

そのへんから推測してしまった訳だ。

 

「…………。」

「…………。」

 

細かい部分は口にしなかったけれど。

多分それで伝わったのだろう、更に顔を赤くした上で顔を完全に伏せてしまった。

 

「で、その上でなんだけど。」

 

返事はない。

いや、反応だけは有ると言い直したほうがいいか。

身振り手振りが違うとか言いたそうにしているが、俺の意思を伝えさせて貰う。

 

正式な返事としては――――全てが終わってから。

だけど、俺の気持ちは固まっている。

 

結局、この間はっきりと言えなかった最低な一言を。

彼女達の問い掛けに対しての、俺自身が抱いてしまった気持ちを。

 

「……嬉しかった。」

 

告げる。

 

「だから、この間の返事を今させて欲しい。」

 

伝える。

 

「――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

言ってしまう。

 

それでいいのか、とか。

そういった考えは幾らでも浮かぶけれど。

いくら悩んでも――――答えは、変わらずに。

彼女達と変わらないであろう、答えを口にした。

ヒロイン視点この後欲しいですか。

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