恋心、想花の如く。   作:氷桜

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朝芳乃様が起きるだけのお話。
既に将臣君の原作の影が大分無い。


<Chapter1-2-2>

 

<Chapter1-2-2>

 

 

「おはようございまーす……?」

 

案内されていた当分の自分の部屋から出て、簡単に紹介されていた家の中を歩く事ちょっと。

リビング……と呼べば良いのか。

当然のように和室作りで出来た、大きな卓袱台の置かれた部屋。

隅には棚、後は同じようにテレビ。

座布団が四つ敷かれた、家族での空間。

 

「あれ、誰もいない……?」

 

今の時間は朝七時過ぎ。

朝の時間帯は基本的に家庭によって変わるとは言っても、誰もいないのは考えてなかった。

この辺は多分実家の感覚が抜けてないからなんだろうなぁ……普段なら母さんが朝飯作ってるはずだし。

学校に通う為にも、これくらいに起きるのが慣れてしまっていた。

 

「まだ寝てる……いや、神社だしなぁ。」

「安晴ならば、既に朝の仕事で動いておるぞ?」

「あ、やっぱりそうなんだ。」

「うむ。 掃除、祝詞の奏上。 日々の習慣だけでもやることは様々あるからの。」

 

だよなぁ。

宮を司ると書いて宮司、或いは神社の主と書いて神主。

俺の朧気な知識で考えるなら、安晴さんは宮司に当たる人の筈。

この辺りの祭祀全般を行うとするなら、朝早いのも当然と言える。

 

「手伝いに……ああいや、今から行っても迷惑なだけか。 素人だし。」

「かもな。 後で相談してみれば良いのではないか?」

「そうだなぁ……俺でも出来ることがあれば。」

 

流石に何もしないで過ごす居候だけは精神的に辛いので無理。

 

「かと言って……。」

 

このまま何をするでもなく待つのも落ち着かない。

かと言ってやることがあるわけでもない。

本来なら春休みとして次の学年に進む準備とか予習とかするべきなんだろうけど。

突然の転校となると教科書の確認とか諸々必要になってくる。

いや、そういう意味では一式揃える前で良かったのかもしれないけど。

 

「朝食の準備するわけにも行かないしなぁ。」

「む? 男子でも料理ができるのか? ご主人。」

「簡単にはだけど。 自信を持って出せるって程じゃないよ。」

 

少なくとも米も炊けない、とかそういうレベルではない。

普通に包丁が使えて普通に料理ができる、とかその程度。

味も……自分で食べる分には満足できる位だし。

 

そんな雑談を交わしていれば。

がらり、と障子を開く音。

 

「ふぁ……おぁよ~?」

 

昨日の夜、挨拶の時とは別人のように現れた朝武さん。

寝間着のまま出てきたのか、昨晩よりもなんと言うか緩い。

後肩のあたりが若干着崩れして、白い素肌と鎖骨が見えて少し顔が赤くなった気がした。

 

「あの……おはよう、ございます……?」

 

なんと言うか、凄まじい疎外感を覚えながらの挨拶。

 

「あっ……。」

「……。」

 

ほんの少しの空白。

 

「あの、朝武さん……?」

「――ンッ!」

 

べちん、と自分の頬を思い切り叩いた。

いや目を覚ますためとは言え強く叩きすぎだろ!?

 

「ちょ、何してるの!?」

「ぅっ……痛い(ひはい)……。」

 

若干涙目の気配。

というかそこまでしないと起きられないのか……?

ひょっとして朝弱かったり?

 

「……大丈夫?」

「……大丈夫、です……はい、これぐらい。」

 

強がりな部分もあるとは思う。

 

「そこまで全力で叩く必要あったかな……?」

「芳乃……力加減間違えて涙目になっておるぞ……?」

「これは……そう!欠伸、さっき欠伸をしたからです! 別に泣いてるわけでは……。」

 

一度目を閉じ、見開いた。

 

「そ、それより!」

「お、おう。」

「おはようございます。」

「あ、おはようございます。」

 

やり直すのか。

別にいいと思うんだけど、可愛かったし。

 

「今更取り繕う必要あるのか?」

「取り繕ってなんかいません。 これが普通です。 お分かりですか、ムラサメ様。」

「吾輩は事実を告げただけだが。 それに、将来芳乃とご主人は結婚するのであろう?」

「しません。」

「であればお互いもっと知っていっても……いや、一刀両断じゃな。」

 

言葉の刃がムラサメちゃんの台詞をぶった切った。

そこまで拒否感出されると朝から若干凹む(へこむ)んだけど。

 

「有地さん。」

「え、はい。」

「さっきは……その、少し気を抜いていてお恥ずかしい姿をお見せしましたが……違いますから。」

 

否定。

 

「さっきのは本当に違いますからね! 変な期待とか……しないでください。」

 

重ねて否定。

 

「私はお父さんに、有地さんは玄十郎さんに押し付けられただけなんですから……上手くやり過ごしましょう。」

「はあ……。」

 

それだけ言われると、というか。

まあまだ顔見知りになって丸一日も経ってないのだからこうもなるよなぁ、と若干達観してる。

ただ、「否定」であって「嫌悪」でないだけマシかな……?

 

「ところで芳乃。」

「はい?」

「寝間着のまま、頬は赤い状態で言っても締まらんぞ?」

「~~~~!」

 

あ、自分の状態に気付いた……というか客観視させられた。

こう、見た目は幼いけれど……朝武さんを誂う(からかう)姿は何処か年長者っぽさも感じた。

 

「もう、ムラサメ様! 話があるので少し時間を頂けますか!?」

「分かった分かった、だからそんな皺を寄せるな。 癖になるぞ。」

「それから有地さん、体調は? 何か異常な所などありますか?」

「特に変わったところは……無い、と思う。」

 

頭痛とかそういうのがあるわけでもないし。

 

「そうですか。 急に生活環境が変わりましたから、何か変だと思ったら直ぐに言って下さい。」

「分かった、有難う。」

「お礼を言われるほどのことでもないです。 それでは、失礼します。」

 

その言葉を残し、ムラサメちゃんを連れて立ち去っていく朝武さん。

 

「…………。」

 

ツンケンして、拒否しながらも見え隠れする本来の性格。

それは心配性から来るものなのかは分からないけれど……心優しいのだと察することくらいは出来る。

 

(ただ、あの否定はし過ぎっていうか……何かあるよなぁ。)

 

理由までは分からないけれど、きっと関わっていくことになる()()()

まあ考えていても仕方ない。

 

(さて、この時間何してよ……。)

 

ムラサメちゃんもいなくなって時間を潰す手段もない。

テレビを流す……というのも出来ればしたくないし。

と、なると。

 

「あ。」

 

昨日の服、そういえばそのままだなと思い当たった。

居候で勝手に洗濯物を出すのは……それに、年頃の女の子がいるのに下着を出すのは恥ずかしく。

結局部屋に持ち帰ってそのまま。

この辺りどうするかも後で安晴さんに聞いてみようか、と思いながら。

 

(手洗いで洗って……窓側に干しておけば乾くだろ。)

 

そんな事を考えながら。

一度、自分の部屋に戻ることにした。

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