<Chapter3-3-2>
結局朝の準備は
物珍しい、と親の目線で見詰める安晴さんと。
一度自宅に戻ってからまた神社にやってくる、なんて運動を朝一から最速で行っていた茉子ちゃんと。
それをサポートするように朝食の所々を執り行う芳乃ちゃんと。
そんな普通ではない朝餉を終えてからの通学。
学校では普段通りに取り繕う二人に対して少しだけ距離を取る。
……こんな関係性を公開できるようになるのはいつになるのか。
そんな意味を込めて、体育の後の呼吸に合わせて大きく息を吸って吐いた。
「どーした、らしくねえけど。」
「あー……何だ、寝不足?」
校庭を軽く走った後での球技。
武術系――――剣道や柔道みたいな授業は秋や冬になったらあるとかなんとか。
今日は特に何でも無いドッジボールだったが、それでも男女比は調整されての授業だった。
まあそりゃそうだ。 下手に怪我なんざさせたら不味い相手だっているんだし。
「寝不足ぅ? お前が?」
そんなごまかしに引っ掛からずに疑いを掛けてくる廉太郎。
普段なら有り難いが今は余計なお世話だと言いたい。
「マジで寝たような寝てないような感じなんだよ……。」
眠れなかった、と言ったほうが正しいか。
気絶したような眠り方では身体の疲労が抜け切れるわけもない。
普段からの運動もあるから実際の影響は薄いとしても、全力というには程遠い。
「何だ、なんかあったのか?」
「まあ、お前が全く関係しないわけでもねーが。」
ぼそぼそと話すのは校庭の端。
少しばかり早く終わり、かと言って教室に戻るには早すぎる微妙な時間帯。
其処まで強く言うつもりもないのか、教師も雑談なんかを自由に許すそんな中。
周りに余り聞こえないように、諸々と相談に乗ったりしたりしている俺達二人がいる。
「は?」
「
そんな俺の視線の先。
或いは廉太郎の視線の先に、三人の体育服姿の少女がいる。
普段の制服姿とは違う、それでも学校で学ぶ上では何度も見かけるその姿。
汗が首元で光り、運動する度に胸元が大きく揺れたりそうでなかったり。
ただ目線が行ってしまう――――うん、多分それは俺だけではないはずだ。
男子生徒の方を見れば
「あ、あー……こないだからなんか見えてる絡みか?」
「そんなとこ。」
だが二人に抱き着かれてたからとか言ってしまったら多分吊るし上げられる。
なので実際の事実の側面だけを説明する。
それを考えていたから眠れなかった、眠りが浅かったのも事実なので。
「……絶対それだけじゃねえだろうがまあ流してやる。 んで?」
「ってーと?」
「俺達二人に係わる、ってことなら聞いても良いんだろ?」
「ちょっと悩むんだよなぁ……いや別にお前だけなら良いんだが。」
何方かというと起点になっていそうなのはレナさんの方。
聞く限り仕事も真面目にやっているし、他に遊びに行くなんてこともない。
だからこその気分転換を兼ねた遊びの誘いの予定だったが、山は頓挫してしまったわけで。
「一旦祖父ちゃんにも話すつもりだからそれまで待ってくれ。」
結局伝えるにしても祖父ちゃんに相談した上で、になってしまうのは仕方がないことなのか。
方や孫、方や従業員。
実際擬似的な保護者としての側面もあるのだし、事情を知っている相手には説明だってしておきたい。
「しゃーない。 分かった、ただ許可が出たら直ぐに教えろよ?」
「分かってる。」
それを分かっていて受け入れているから此奴もそれで納得する。
正直、俺の立ち位置を知っていてくれる同性がいてくれて大真面目に助かってる。
多分惚れてる相手が被ってない、というのもこの場合は利点……なんだろうか。
周囲を見る限り、ちらほら狙われてそうな目線向けられてるのは変わらないんだけどなぁ。
……と、そうだ。
「あ。 後ちょっと聞いてもいいか?」
「あ?」
「レナさんに関してだが、此処数日なんかおかしい所とかあったか?」
一気に進んだ此処数日。
今までの祟り神の鎮圧、鎮魂、祓うこととはまた違う。
根底の……呪い自体に関わるだろう幾つかの痕跡の発見と破片の浄化。
俺が見る限りでは平然とはしていたが、昨日とかに影響があったのかどうかを確認する。
「此処最近ねえ……。」
うーん、とちょっと考え込んで。
「昨日の……昼辺りか? 多分疲れが出たのか、ちょっと熱っぽかったってのはあるな。」
「……昼?」
「ああ。 俺も手伝ってた時間帯だし最初に気になったのが俺だから其処は間違いない。」
……俺が倒れた時間前後?
或いはあの糸を見つけた辺りか?
具体的に時間を確認していたわけではないから完全に一致させられるかは難しいが。
また一つ、共通点が見つかった。
なら。
俺の思いつきに過ぎないが、もし彼女にそれが有効だとすれば。
「……廉太郎。」
「あん?」
「ちょっと色々と話をした上にはなるが。 一度レナさんを神社に連れてくるってことは出来るか?」
普段着とは違う三人に目線を向けつつ。
それがどういう意味に捉えられるか、それに思い当たったのは昼休みのことだった。