<Chapter3-3-5>
志那都荘前で掃き掃除を指導されていたレナさんに挨拶しつつ。
案内される途中で布団を担いで運ぶ廉太郎とすれ違いながら。
幾度も脚を運んだ一室……祖父ちゃんの私室へと三人で案内された。
「将臣に……巫女姫様。常陸さんところの娘さんもか。」
「急に悪い、祖父ちゃん。」
「簡単には耳にしているから構わんが。」
何やら老眼鏡を嵌めながらノートパソコンを叩いていた手を止め、此方に向き直る。
人数分お茶と急須を用意され、仲居さんが部屋から去っていく足音を聞きつつ。
一口だけ、軽く茶に口を付けてから話を持ち出す。
「で、どうした。」
「……あー、何処から説明したもんかな。」
電話で詳しく話す内容ではなかったし、大きく二つ頼んだだけ。
時間を取って欲しいことと叢雨丸に関わる話とだけ伝えている。
だから先ずは……そうだな。
彼女が転校してきた後、学校での出来事から順番に説明するべきか。
「まず最初に断っておきたいんだけど、今はここだけの話にして欲しい。」
「ふむ?」
「実際にはもう少し話さなきゃいけない相手も増えるんだけど。
取り敢えず一通り説明するから、疑問があったら最後に纏めてくれる?」
二人は飽く迄サポート……というよりは適時言葉を挟む形に徹してくれている。
複数人で説明しても話が混じりすぎて余計に分かりにくくなってしまうし。
「分かった。」
「うん。 先ずは、レナさんが転校してきた初日の話になるんだけど。」
そんな前提を置いての説明。
二人の握手で発生した良く分からない静電気。
周囲に見えていた瘴気……俺を含めた複数名に見えたそれ。
昨日の出来事。
時間帯までは分からないが、同じくらいの時間に体調を崩したらしい事。
俺と茉子ちゃんにだけ見えたモノ。
……夢の内容に関しては黙っていた。
まだ二人にさえ伝えていない内容だから。
先ずは神社で話し合ってからにしようと思ったから。
幾つか理由はあるが。
一番大きいのは恐らくは
幾度か意識を失う度に見る夢――――それが何故俺なのかも。
何となく直感で関わっていると思うからこそ、調べたいところなんだが。
「……成程。 巫女姫様……いえ、今は芳乃様と呼ぶべきでしょうか?」
一通りを語り終え。
それを消化するように一度頷いた後で、芳乃ちゃんへと姿勢を正す。
「何方でも。 いつも玄十郎さんにはお世話になっていますし。」
「不詳の身で出来る範疇に過ぎませんよ……では芳乃様と。」
……或いは、今の立場を明確にしようとした?
『巫女姫』という、穂織を継いでいく代表としてか。
『朝武芳乃』という、一私人としての立場なのか。
まさかな。
「将臣が言ったことは知っていらしたのですか?」
「そうですね。 大半は将臣くんが見出してくれたことです。」
「……役に立っているのだな。」
その返答に一度頷いている。
なんか酷い扱いされた気もするがまあ良い。
丁度良い、俺からも聞いてみるか。
「なあ祖父ちゃん。 レナさんが昨日体調崩したってのは聞いたがどんな感じだった?」
「ん? そうだな……頭痛というよりは目眩、か? フラフラしていた感じに近い。」
俺と同じように意識を失うとかではない、か。
確かに熱が出ている時のような症状だし、廉太郎もそう思うか。
「なら、一番被害が酷かったのは俺ってことかな?」
「……でしょうね。 最も近くで影響を受けましたし。」
独り言のように呟けば、それを認めるように茉子ちゃんの言葉。
まあ距離が離れてるのに実はレナさんが一番被害が出てた、とかならそっちのが怖い。
「まあ、話は分かった。 その上で儂に何を望む気だ?」
「ああ……お願いが一つ。 後は俺が忘れてるかもしれないことを確認したい。」
そうして、やっとこの会話に辿り着く。
「願いか。 つまり、廉太郎とレナさんについてか?」
「そう。 今度……とまでは言わないけど、近々休みを設けて欲しい。」
「ふむ……確認はしておくが。 半日程度なら大丈夫だと思うぞ。」
それだけで足りるか、と芳乃ちゃんに目線を向ける。
確かに頷いたからそれは良しとする。
「それで、聞きたいこととは?」
「ああ――――。」
忘れているかもしれないこと。
子供の頃、穂織にやってきては遊び回っていたわけだが。
山の中に入った覚えは一度もない。
精々が……というよりも限界まで山に近付いて山際。
後は神社付近か。
(恐らく)二人に出会った付近までが限界地点だと無意識に分かっていたのだと思う。
ただ、具体的にどの辺りで遊んでいたのかの記憶が曖昧だということ。
それに思い当たったのはついさっき――――自分で話していての最中だ。
川辺で遊んでいた、という記憶はあるのにどの辺りでかがすっぽり抜け落ちている。
だから祖父ちゃん……或いは三人に確認したかった。
「
「……お前が何処で遊んでたか、か。」
またそれも難問だな、と小さく口を歪めた。
……どういう意味?