得るものがあるから失われるものもある。
<Chapter3-3-6>
志那都荘から出た時。
来る時にやってきた頭数が
『全く、吾輩を差し置いて話を進めおって。』
志那都荘の入り口で偶然に合流し。
そんなぷりぷりした怒りを示す
「放り出されたけど良いのかねえ……。」
そして祖父ちゃんに協力するように命じられ、一時的に合流した廉太郎。
ちらちらと後ろを見ているのは、忙しさだけではなく恐らく同僚を気にしてか。
だからこそ、俺だけでなく芳乃ちゃんと茉子ちゃんの二人も若干目を輝かせて見ている。
少しだけ妬きそう。
「いや、俺もお前に丸投げされるとは思ってなかったわ。」
「祖父ちゃんからもすげー大雑把にしか聞いてねーんだけど。」
思い返す、ほんの少し前。
『お前等は日々日々場所を変えているようだったからな。
そんな形で否定する。
……いや、でも祖父ちゃんに幾度も迎えに来てもらった記憶が残っている。
微量に感じる違和感。
『だから、共にいた三人に聞くといい。 廉太郎も連れて行ってな。』
あれよあれよと流される。
言葉を発する前に、準備をどんどんと整えてしまう。
部屋を出て、心子さんへと話を持っていこうと進んでいって。
部屋に短時間取り残され、ぽつんと佇みながら思考を巡らせた。
……その動きは間違ってないし、正しいとは思う反面。
何処か祖父ちゃんらしくない感じすら受ける――――いや、でもな。
芳乃ちゃんへと顔を向ける。
部屋の外へと指差して。
軽く手を二度三度と合わせる。
言葉に出さなかったのは、当人に聞かれる事を恐れたから。
それだけで頷かれ。
それとほぼ同時。 祖父ちゃんに連れられた廉太郎と合流、今に至る。
「……ボケ、とかじゃないよなぁ。」
「玄十郎さんがですか? まず無いと思いますけど。」
「いやいやねーよ。 つーか何があったか説明しろって。」
俺の呟きに反応する声が二つ。
制服姿だからか、或いは二人が同行しているからか。
ちらほら此方に掛けてくる声があり、それが途切れてからの独り言。
慣れている様子の廉太郎も中々見ない姿だよなぁ、と思いつつ。
「あー……なんつーかな。」
今日の話の内、重大な部分を除いて説明する。
休みに関しては……結局受けて貰う片方でも協力していてくれた方が助かるし。
何より体育の際に簡単に説明していた内容なのだ。
言ってしまって大丈夫だと判断して口にした。
「……俺等が遊んでた場所?」
「そ。 ちょっと気になることがあってな。」
あー、と呟いて上を向く。
考え込む、考え出す。
歩きながら悩むこと少し。
「………………んんん?」
首を捻っている廉太郎の姿。
何かが引っ掛かっているのは間違いないようだが、それが浮かばないような。
まるで少し前の、
「どーした。」
「あれ、広場とか原っぱみてーな場所行ったし川の近くも行ったよな?」
「行ったな。」
何処に行ったかが思い出せないわけだが。
「……
「――――は?」
今なんて言った?
俺と同じことを言わなかったか?
「鞍馬、さん?」
「いや、広場は分かる。 日常的とまでは言わねーけどそこそこ見る機会あるしな。」
指折り数えていく。
おかしいな、と頭を捻る姿を自分のように幻視する。
「草原……も多分あの辺だろうってのは分かる。 あっちこっち走り回ってたからな。」
ただ、それでも思い出せない。
山ではない、恐らくはあの川の下流に当たる何処か。
「川辺ってどの辺りだったか? 遊んでたこととか何があったかは思い出せんのに……あれ?」
今になってその違和感に気付いたように考え込む。
……俺だけなら忘れてしまったとか理由が付く。
ただ、二人になった時点で異常さが目立つ。
此処最近増えてきた、そんな事象の一つ。
「鞍馬くん。 場所が思い出せないんですか?」
それを外から見ていた一人だからだろう。
裏路地の道の端で一度佇まいを整えて。
真剣な目で見詰める、芳乃ちゃんとムラサメちゃん。
「……そう、ですね。 確か川辺で将臣が転んだこととか、起きた事象ははっきりと。」
「そっちは覚えてんのか……。」
つまり俺と同じく場所だけが抜け落ちている。
祖父ちゃんの場合もあちこち、とだけ告げて場所を思い出さなかった。
其処から考える限り。
「なあ、ムラサメちゃん。」
『そうじゃなぁ。 多分ご主人の考えてるとおりだと思うが……。』
「これもやっぱりアレか?」
鞍馬の家系に対する呪いか何か。
元々の成り立ちから考えればあっておかしくはないとしても。
何で川辺――――山で拾った破片。 つまり、川から流れ着いた?
『玄十郎に関しては納得できる理由が一つある。』
「……理由?」
そうじゃ、と。
指を向けたのは、俺の顔に対して。
『
「……は?」
『外見上の話じゃぞ? ……似ているモノを利用する、というのはどうなんじゃ?』
……有り得る。
呪いの中でも見立て、対照に照らし合わせる儀式ってのはそこそこ存在する。
外見が似ていたとするのなら。
俺への呪いが幾らか転写されてもおかしくはない。
血縁を遡る、下る呪い――――今も続く、呪いの本質。
「……更に泥沼に入り込んだ気分だ。」
深い深い、溜息を一つ。
その声が聞こえていて――――その事実に気付いたであろう。
芳乃ちゃんの顔色も、若干青く。