<Chapter3-3-9>
そんな依頼をしたとしても。
結局お祓いをするにしても、本殿でなければ出来ないのは変わらない。
どれくらい待っていれば良いのか、という質問に。
夜の危なさは理解しているはずだから、後1~2時間くらいかな、と。
それまでの間、何をするのが良いのだろうか。
四人でその場で話し合い。
手荷物を少し周囲で増やして。
「……何だか懐かしいですね。」
やってきたのはいつだったかの。
原風景のように焼き付いている、山の麓に位置する小さな広場。
恐らく、そんな言葉は俺だけが持つものではないと思いたい。
口に出して聞いたことは――――どうだったか。
「うん、懐かしい。」
「……懐かしい、って言い方も何かおかしい気もしますけどね。」
『何じゃ、覚えのある場所なのか?』
少しね、とムラサメちゃんに漏らした。
地元の公園のようにベンチや遊具が置かれていたりするわけではない。
大雑把に誰かが用意したのか、腰掛けるための切り株状の椅子が幾つか。
唯それだけが置かれた、小さな空間。
「そういえばこの場所って何のための場所? やっぱり公園?」
「に近いですね。 穂織にはそれ程多いわけではありませんが、親子もいますので。」
まあ、確かにある程度大きくなれば俺達みたいにあっちこっちに走り始めるけれど。
それが出来るまでは父母同士で繋がりたい時もあるだろう。
そういう時の為……役割としてはまあ公園と同じか。
「……特に私達は余り遠くにいけませんでしたし。」
「ですね。 それ程遠くに行こうとも思いませんでしたが。」
切り株に思い思いに腰掛ける。
制服のままこんな場所にいることになるとは思わなかったが。
まあ、これはこれで良いのかなともふと思う。
どうせ少しの辛抱で……夏になり始めという事もあり、気温で困ることもない。
「まあ、その辺りは男女で違うってことかな。」
「……鞍馬さんと先程の店員さんはまた別のようでしたけど。」
そんなジトっとした目で見られても困る。
「兄が廉太郎だし……芦花姉はまあほら、元気っ娘だったってことにしない?」
「そうは思えないんですけど……茉子とはまた違いますし。」
「あの、芳乃様? ワタシのことどう思ってたんですか?」
がさがさとビニール袋の内側から油取り紙に包まれた幾つかを取り出す。
何か言い合い始めた二人へそれを差し出し。
「甘いもの食べた後に食べるものじゃないけど良いんだよね?」
先程途中の肉屋で買ってきた何種類かの揚げ物。
買い食いなんて殆ど経験がないらしい彼女の希望もあり。
軽食というには少し重いが、小腹を満たす為に食べることにした。
「本来ならワタシがお作りするところなんですけどね。」
「それじゃ買い食いじゃないし……?」
茉子ちゃんの愚痴。
既に料理は自分の領分だと張り切っているからか、その言葉の重みが凄い。
だからこそ言い訳を口にして、一口齧る。
未だに少し残る熱、ホクホクとして口の中に広がる芋の味。
特に何かは見ずに口にしたけどコロッケだったか。
「うん……やっぱりソースが欲しくなる。」
「本来は家で食べる為ですからね、あのお店も。」
口元も汚れますし、と言いながら齧っていた破片が転がり落ちる。
地面に落ちた破片から見えたのはミンチ肉に近い色合い。
メンチカツか。
「……でも、こういうの楽しいですね。」
小さく口を開いて何度かに分ける。
そうして少しずつ減っている芳乃ちゃんの手元もメンチカツ。
俺だけ別のだったのか。
「……経験がないとそうだよね。」
「はい。 ……そういえば、将臣くんの地元でも似たような感じだったんですか?」
そうだなぁ。
俺の地元……特に中学入って少しくらいまでを思い返すと。
「部活……剣道部が終わった後で帰り際にコンビニに寄ったり、とかはあったかな。」
「え、と。 穂織の端にあるような?」
「そうそう。 外の街だとあちこちにあるでしょ?」
ちょっと思い返すように虚空を見上げた。
そういえばそうですね、と。
今まで余り気にしていなかったような口振りで話す。
……自分にできないことだから考えないようにしてたとか?
『あの遅くまで灯りがついている店か?』
会話に割り込むムラサメちゃん。
切り株に腰掛け、脚をふらつかせているその姿。
幼く見える外見と合致し、もしかすれば。
昔もそんな事をしていたのかもしれないなんて想像した。
「そうそう。 此方だとどうかは分からないけど地元なら24時間やってた。」
『ずっと開いているのか。 無駄な部分も目立つと思うがなぁ……。』
「夜の仕事ってのもあったから。」
灯りでもなければ仕事にならない。
そういう意味でも電気っていうのは色々と影響与えてるんだよな。
「……っと。 芳乃ちゃん。」
「はい?」
「ちょっと動かないでね。」
微かに笑いながら視線を動かせば。
口元、頬に接するかどうかの場所に小さく張り付く食べ滓。
普段であれば見ることなんてない。
……まあ、特殊な食べ方だからだとは思うが。
手を伸ばし、それを払い除ける。
それだけ近くに、彼女がいる。
普段は気にもしないのに、そんな当たり前のことがどうにも気になった。
「……はい。」
指先が彼女の顔に触れた。
もっと恥ずかしい――――抱き締めたことだってあるにも関わらず。
今のほうがよっぽど恥ずかしくて。
多分、それは彼女も同じく。
顔を伏せ、小さく感謝の言葉が聞こえてきて。
……俺も同じように、小さく言葉を返していた。
いいなぁ、なんて。
言葉が一つ、二つ。