恋心、想花の如く。   作:氷桜

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Chapter3はもう一章位追加するか検討中。
原作だと共通部分終わるんですけどね……。


<Chapter3-3-11>

 

<Chapter3-3-11>

 

しゃん、しゃん、しゃん。

 

手の先から小さく鳴る鈴の音。

ゆっくりと、それでいて大きく場所を取るように滑り移動する。

幾度も経験しているからか、その足取りはしっかりと。

けれどその表情は真剣で、額には光る汗が一筋。

 

舞い、踊り、捧げる。

巫女姫(よしのちゃん)の舞う神楽は、本来ならば神々に捧げるもの。

けれど今では加護を与えてくれる誰かに捧げ。

その見返りとして呪いを遠ざける、祓う為に行われる。

 

(……気付いたらムラサメちゃんもいなくなってるな。)

 

音が鳴る度に波動のように周囲へ広がる。

夜も深いにも関わらず、神座へとそれは捧げられ。

その返礼を受けるが如く、自(・)分(・)の(・)中(・)の(・)何(・)か(・)が(・)祓(・)わ(・)れ(・)て(・)い(・)く(・)気がする。

 

(――――そういえば、ちゃんと舞を全部見たことってあったか?)

 

穂織に来た当初は芦花姉に案内されて途中から。

それ以降、神社に間借りするようになっても時間が噛み合った覚えがない。

練習か、或いは途中から覗いた記憶だけはあるのだから。

初めから最後まで、というのは今回が初めて。

 

だから、というわけではないとしても。

上下に振られるそれが音を止め。

ふぅ、と息を吐き一礼を終えるまで。

身動きを取ること自体が難しく。

合わせて――――身体に纏わり付いていた何かが溶けていくような錯覚を覚え。

慌てて一礼を返し、起き上がった時には芳乃ちゃんは此方へ向き直っていた。

 

「どう、ですか?」

 

おずおずと尋ねるその声に。

現在の自分の状態をはっきりと口にする。

 

「……なんだろう、身体が軽くなった感じはする。」

 

以前に柏手で祓って貰った時とは違う。

毎日の水行(ふろ)ともまた違う。

それこそ、ムラサメちゃんが霊力で浄化してくれた時ともまた違う。

身体の中の何かが消え去って、自由自在に動けるようになった感覚に近い。

 

「茉子は?」

「そう、ですね……。 はい、悩み事が解決したような感じ……です。」

 

両手をまじまじと確認して。

胸元を覗き込んで、そんな事を呟いている。

見る必要性あったのだろうか。

口にするつもりはないが。

 

「……なら、やはり効果はあると思って良さそうか。」

「お父さんは?」

「僕は余り神社から出ないからね。 何も感じないかな。」

 

順番に聞いていく中で、唯一変化を感じなかったのが安晴さんらしい。

……直接血縁があるわけではない入婿、という立場も関係しているのか。

そう考えると、俺が受けているのはやはり直接接する機会が多かったこと。

そして叢雨丸の担い手という部分が関係していると思って良さそうだな。

 

「確認なんだけど、茉子ちゃんは今まで儀式受けたことあったりする?」

「いえ……練習されている邪魔になると思いまして。」

 

となると受けたのは初めて。

そしてその効果は今口にした通り、きちんと発揮されている。

ならどの時点で大きく影響を受けていたのか、という区別化は難しそうだ。

 

(成程、成程。)

 

自分でも思っていた以上にこういった事を考えるのが好きらしい。

その発端が悪名であったとしても、今こうしてしまえば趣味の一つと言い切れてしまう。

 

「……やっぱり、茉子ちゃんにも舞だけは身につけて貰った方が良いかもな。」

「やはり、そうですよね。」

「その前に廉太郎とレナさん……後は様子を見て祖父ちゃんと小春もか。」

 

影響を受けている殆どが俺の関係者なのは真面目に申し訳ない。

……まあ問題は、一回の儀式で効果が永続するとは思えない点なんだが。

 

「ただ……将臣くん。」

「ん?」

 

考え込んでしまった俺へ、悩むような顔色の芳乃ちゃん。

恐らくは考えていることは同じ。

 

「恐らく一時的にしか効果はないと思う……けど良いの?」

「其処なんだよね……。」

 

実際毎日の儀式でそ(・)れ(・)以(・)上(・)に(・)広(・)が(・)ら(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)に(・)抑えるのが手一杯の状態。

せめて儀式を行うことで総量を確実に減らせる状態にまで追い込みたい所。

その行動への鍵になるのがあの欠片のようなんだけど……と、そうだ。

 

「そういやあの欠片はどう?」

「あ、そうですね。」

 

思い出したように口に出したそれに反応したのは茉子ちゃん。

向けた視線の先は捧げ物を置く台の上の端。

布袋のような物に包まれている場所だった。

 

「……どう見えます?」

「アレだよね? ……いや、何も見えないな。」

 

元々結界の中に入れた事で消し飛んだらしい瘴気。

儀式を暫く受けたことで浄化されたのかどうなのかまでは見えないものの。

安静に置かれている間は悪さはしていないらしい。

 

「……どうしたものかな。」

 

本殿に四人で佇む。

ぽつりと呟いた言葉は想像以上に周囲に響いたようで。

 

「取り敢えず茉子に舞だけは身に付けて貰う方向性でいい?」

「はい。 ただ、家事もありますので……。」

「分かってる。 其処は私も手伝うから、時間を作ってね。」

 

芳乃ちゃんが受けることで影響が減少すれば良いのだが。

俺も色々と手伝いの頻度を増やすべきかもしれない。

……まあ、洗濯とかは下着の関係もあるし難しいだろうけど。

 

「……色々と忙しくなりそうだね。」

 

そんな二人を見詰める安晴さん。

そうですね、と返すのが――――精一杯だった。

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