<Chapter3-3-12-Y>
「……それで?」
私の部屋。
必要最低限のものだけを置いて。
最近はちょっとだけ気になった小物くらいを並べ始めた小さなお城。
……後は、彼から貰ったものとかが窓沿いに置いてあるだけの場所。
そんな場所で、声が二つ。
「ええっと、そのぉ……。」
顔を真赤にした
多分同じくらいに赤くした、私。
ぼそぼそと深夜の話し合い。
明日も朝は早いのに、それでも続けてしまう理由。
――――私達を受け入れてくれた、彼のことだから。
こんな、学生みたいな恋話ができるだなんて思ってもなかったけれど。
「そのまま、少しだけ過ごしたら茹だってしまったみたいで……。」
「……そっか。」
何かその後にあったのか、と聴き込めば。
それ以上には進まなかったし、進めなかったとか細い声で呟く。
それが聞こえるだけの近さだからか、吐いた息が少しこそばゆい。
そうして、
自分が先だとか後だとか――――そんな事は考えもしたことはなかった。
ただ、
私が先だ、という独占欲が湧き出てきたような気がする。
私のものだ。
そんな風に思っていた誰かは、もういない。
「……それにしても。」
誤魔化すように、そんな言葉を口にする。
「?」
「そういった事に興味があってよかったなぁ……って、茉子も思わない?」
……実際。
将臣くんを見ていて禁欲的だと思うところが多々ある。
勿論そう言った目線で見られて嬉しいかどうかは相手次第で別問題としても。
殆ど見られない、と言うのはそれはそれで女としての矜持に傷が付く。
「……芳乃様。」
「はい?」
「今日とか多分見られてましたよ?」
え?
「誰に?」
「将臣さんに。」
え。
え?
「いつ?」
「体育の時……ですかね? 以前からも時折。」
体操服姿?
え、それって……そういう、何!?
「なにそれ!?」
「気付いておられなかったんですか……?」
呆れられた。
そんな目をしていただなんて知らない。
ずっと品定めされるような目で見られ続けていたからだろうか。
気にしないように、そういう部分は多分相当に鈍化している……と思う。
でも、だからって。
「だから、大丈夫だとは思いますけど……。」
「けど?」
「我慢強すぎる、っていうのはあるかもしれませんね。」
普段からの自己鍛錬。
ランニング、祟り神退治に学校の勉強。
ムラサメ様が前に漏らしていた言葉から考えれば、穂織についても独自に動いているとか。
そういった物を楽しみながらやっているとしても、自分の時間が殆ど無いような気はする。
「確かに……。」
「ワタシも芳乃様も色々と抱えてますから、余り言えた身分でもないのですが。」
明後日の川辺の事を考えて。
恐らくはまた同じ様になることを覚悟して。
彼にばかり負担を掛けないようにと強く思う。
「それはまあ、やるべきことをやるだけでしょう?」
「ですから、似たりよったりではありますよね。」
私も彼も、何も考えずにゆっくり出来る時間はいつ来るのだろうか。
ほんの少しはあったとしても、それは決して長続きしない。
快楽に身を任すなんて以ての外。
それはそれとしても。
私だって、女なんだし。
「私も機会見つけようかな……。」
言葉を漏らす。
苦笑しながらに、告げられる言葉。
「芳乃様ですと失敗しそうですね~。」
「何よその言い方。」
気付けば宵の口。
深夜の時間帯になって、漸く。
部屋の小さな灯りが消え去った。