<Chapter3-4-3>
金属製のネット際、幾本か立つ木々の真下。
丁度日陰となる其処へ敷かれたシートの上に、思い思いに腰掛ける。
校庭――――と言うよりは元は武道館だった建物の中庭に近い。
それでもある程度以上の広さはある平屋立ての建物だ。
普通に運動する程度であればそれを前提として計画を立てれば良い。
「……それで。」
ただ、今はその狭さが悪さをするかもしれない。
だからこそ、話し声は全員自然と小さく。
その場のメンバーに聞こえるかどうかという形へ自然と変わっていた。
食事を取りながらだから、嫌でもそういう方向性ではあったけれど。
「
今はそう呼ぶ。
つまり個々のメンバーはそれを良く知っている知り合い達だと告げている。
身内同士の話し合い、と言い換えても良い。
だから態度を崩し、どう返すかを確かめる。
「はい。 お二人を呼んだのも無論その件についてです。」
俺はあれ以来特に聞いていない。
つまり祖父ちゃんから直接、或いは安晴さんを通じて伝えられたということだ。
……昨日会った時に特に聞かされていないのは何故なのだろう。
俺経由で言ってくれても別に良かったのに。
「あー……ええと、ひょっとしてこないだ言ってた事ですか?」
「はい。 玄十郎さんからお父さんへ連絡を貰いました。」
「あのぉ……一体、何のことですか?」
やっぱり。
一人何も聞かされていないレナさんは右往左往している。
「レナさんに少々協力してほしいことがありまして。」
「協力、です……か? それは問題無いですが。」
「祖父ちゃんには許可取ってあることらしい。
だから仕事の心配はいらないよ。」
そうですか、と口にはするものの。
やはり始めたての仕事から少しでも離れるのが不安なのか、表情は暗い。
それを励ます廉太郎。
そして少しずつ顔色を戻していく姿を少しだけ眺め。
前々からこうしてれば真っ当だよな、と何度目かの感想を思い浮かべた。
「あー……失礼しましたのです。」
「いいえ。 それだけ頑張ってくれるのなら志那都荘も更に人気になるでしょうし。」
「いえ、わたしなんてまだまだですよ。」
謝罪とそれに対する返礼。
当たり前に見受けられる光景でも、”謙遜”に近い文化までも身に付けている。
やっぱり得難い人材だよなぁ、と感じつつ。
昼食の時間を無駄にしないためにも、話を元のラインへと引き戻す。
「芳乃ちゃん、具体的な日程は?」
「明後日の夜か三日後の午後の何方かみたいです。」
平日か休日か。
でも確か芳乃ちゃんは休日が忙しかった覚えがある。
それは時期に応じて、と言った部分もあるのだろうが……。
ひょっとすれば今の年齢だから、という側面もあるのだろうか。
つまりは。
「……成程。」
妙なことを考えてしまったからか。
言葉をそこで区切り、意見とした。
「ええっと、朝武さん。 その日程は此方で選んでも大丈夫なのか?」
「はい。 その二日間でしたら何とか。」
「そっか……。」
「どうします?
二人は顔を見合わせ話し合う。
日程の話だからか、普段から話しているからか。
さっきよりも距離感が少しだけ近付いているような錯覚。
「……将臣さん?」
そして、心配そうな表情を浮かべながら水筒の中身――――冷やされたお茶を差し出される。
有難う、と声を掛けて一気に煽り。
中から冷やされて、少しだけ落ち着いた。
「大丈夫、何でも無い。」
「余り思い詰めないでくださいね。」
分かった、と告げたはずでは有るが。
それが聞こえていたかどうかまでは分からない。
ただ、心配はさせたくなかった。
そんな感情を、特に強く抱き始めていたから。
「なら……無理をさせるかもしれないけど3日後でお願いできますか?」
「あ、それと何をするのか聞いてもいいですか? 芳乃。」
「勿論。 とは言っても、然程大掛かりなことでもないですよ。」
神社に早めに来て欲しい事。
その際に着替えを持ってきて欲しい事。
どれだけ掛かるかは分からないが、少し受けて欲しい儀式が有る事。
その後で二人に意見を聞かせて欲しい事。
言ってしまえばその四つ。
水垢離、穢れ祓いの儀式、受けた感想。
俺達が一昨日に実行した事と同じ。
「儀式、ですか。」
「はい。 私の家の関係でどうしても必要になりまして。」
そういう理由で、という形になっているのまでは知らなかった。
その方が多分納得させやすいとかだろうけど。
「おー! ちょっと気になります!」
「ああ、レナさんは時期的に見てませんもんね。」
「はい! その時には宜しくお願いします!」
前々から思っていたことでは有るが。
レナさんと芳乃ちゃんは息が合うのか相性が良いのか。
話をしていて何方も楽しそう。
長年の付き合いである
「あ、そうです芳乃。」
「はい?」
「ちょっと聞きたいことが有ったんですけど良いでしょうか?」
揚げ物を一口、そしてご飯を一口。
毎日では飽きてしまうけれど、時折食べる分には気分も上向きになる。
残り半分くらい、早く食べて教室に――――。
「はい、なんです?」
「たまに空を飛んでいく緑の女の子を見るんですが、アレは幽霊でしょうか?」
え、という言葉が誰からともなく聞こえた。
「こう、夜にぶわーっと飛んでいたり朝方にぶわーっと流されていたり。」
箸が、ビニールシートの上へと転がり落ちた。
俺だけではなく、芳乃ちゃんと茉子ちゃんも含めて。
唯一、何も分かっていない廉太郎だけが首を捻っている中で。
「? どうしました?」
一人だけ、キョトンとした表情を浮かべていた。
有り得ないモノを、聞いてしまったから。
それを見ることが出来る、才能がある。
つまりは……霊力を、持ち合わせている?