恋心、想花の如く。   作:氷桜

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新規Chapter。
メインになるのは鎮魂の儀の影響とかかなぁ……?


<Chapter4-1>
<Chapter4-1-1>


 

<Chapter4-1-1>

 

一晩明けて翌日。

この時期にしては珍しくカラッとした早朝。

 

(……いや、昨日は酷い目にあった。)

 

走りながら思う事はそんな事。

 

結局あの圧は減ることはなかった。

……いや、何を求めてるかは分かってるぞ。

ただ、それに踏み込んだら抑えが効かないだろうと確信してるだけで。

我ながら贅沢言っているとは思うが。

お陰で少し寝不足で欠伸が浮かびそうになるのを噛み殺す。

 

「……しっかし。」

『どうしたのじゃ?』

 

走り出し、坂道を下り街の外周部。

早朝だからこそ殆ど人影が見えない住宅地の更に外。

珍しく付いてきた、ふわふわとした緑色の影に目を向ける。

 

「体調大丈夫なのか? それに鎮魂の儀は?」

『何とかな。 横になってばかりでは飽いてしまうしのう。』

 

儀式は……と呟きつつも、神社の方を見上げている。

釣られてそちらを見ても、木々に囲まれ丁度隠れる位置。

彼女には何が見えているのか……結界とか?

 

『吾輩が存在するだけで勝手に進むからのう。 あの場にいなくとも問題はない。』

「……本当に”いるだけ”な所あるんだなぁ。」

 

まあの、と言葉にしながらも。

背中に張り付くようにして抱き着いてくる。

 

「……おい?」

『別にいーじゃろ。 まだ病人じゃぞ。』

「さっき自分で言ってたじゃねーか、もう大丈夫だとか。」

『病み上がりって知っておるか?』

 

周りから見れば独り言。

だからこそ街中では出来ない会話。

見えない住民から『そう』思われてしまえば俺の身分は簡単に消える。

それを望まないのは、多分俺以外にも多数いてくれると思う。

 

「……っと、そうだ。 ムラサメちゃんよ。」

 

昨日聞いた事について、二人しかいないから聞ける事が有ると思い出した。

肩越しの、背負うような形で。

もう既にランニングではなく散歩になってしまっているが、疑問を解消しようと問い掛ける。

 

『うん?』

「昨日言ってたことの続きなんだが、ムラサメちゃんが見えた()()()ってどんな感じだったんだ?」

『あぁ……朝武・常陸家を除いて、ということか?』

 

ああ、と小声で漏らす。

背中に重みは余り感じない。

骨のような硬さとそれとは違う肌の柔らかさを確かに感じる。

……実際、俺以外じゃ誰も触れられないからな。

こうした態度をとることも致し方ない、と思う範疇。

 

『そうじゃなぁ……人それぞれではあったな。』

「やっぱり理由があるわけでは無いのか?」

『はっきり分かる由縁があれば言っておるわ。』

 

だよなぁ。

余りに阿呆らしいからあの場では聞かなかったし。

同時に彼女もそれを指摘していただろうし。

 

『あー、ただ。』

「ん?」

 

そういえば、と言わんばかりの言葉。

危うく聞き流しそうになったその台詞。

 

()()()()()()()()()()()()のぉ。』

「…………は?」

『玄十郎の妻、お主にしてみれば祖母か?』

 

だからあ奴も吾輩を強く信じていた側面があった、と言っている。

……いや、そんな事聞いたこともないぞ。

言っても見えないのだから黙っていた、と……そういう事か?

 

『とは言え、茉子よりも大分劣る程度……微かに見える時もある程度ではあったが。』

「……祖父ちゃんも婆ちゃんも、聞いてねえぞ。」

『見えようが然程変わらんからなぁ、普通であれば。』

 

いや、信仰対象……とまでは言わないとしてもだ。

ムラサメ様という存在自体が語り継がれ、同時に見える相手が時折いる守護者としての在り方。

その存在が保証されるのであれば、古い家系であればある程更に深く信仰するもんじゃないのか?

 

「こんなロリをなぁ。」

『あ゛?』

「やっべ。」

 

珍しく失言が漏れた。

背中を蹴られて地味に痛い……が離れようとしない。

おいそんな事するなら降りろ、と振り落とそうとしても駄目。

 

『何度も言うがロリってどういう意味じゃご主人!』

「いやぁ……なぁ……?」

 

見た目が幼い、ってのもまずあるけれど。

比較対象にしてしまう芳乃ちゃんと茉子ちゃん(ふたり)が悪いのか。

或いは色々な意味で弩級なレナさんと比べてしまって良いのか。

小春と見比べても多分…………うん。

 

「まあ俺の基準が狂いつつあるのも間違いない気はするんだが……。」

『基準ん?』

 

お怒りですね。

言葉の節々から隠しきれてないオーラが漂ってる。

 

「彼奴の妹分みたいなやつの影響もあるんだろうなぁ。」

『彼奴……? ご主人がたまにやり取りしてる相手か?』

「そうそう。 まあそっちもそっちで色々と成長が早い相手でな。」

 

直接会った……事は一回はあったか?

写真で見せられたことは有るが、其処まで気にもしなかったしな。

 

『……今後そのような呼び名で呼ぶのはやめよ。 良いな?』

「はいはい。」

『真剣に聞けと言うとろうに!』

 

だから暴れないでくれ。

微かにでも背中が揺れれば柔らかさが伝わるのは間違いないんだし。

……茉子ちゃんの時よりは精神保つのも楽だしな。

 

「病人はそんな叫ばないでくださーい。」

『うぐ。』

 

押し黙った彼女を背負い直して、気が削がれてしまったのもあって。

ゆっくりと神社方面へと戻っていく。

 

そんな、早朝際に思い出していたのはかの友人。

どこかの長期連休中にでも顔出して意見欲しいもんだがな。

……流石に忙しいかね、昂晴の奴も。

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