恋心、想花の如く。   作:氷桜

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戦闘後の話。


<Chapter4-1-6>

 

<Chapter4-1-6>

 

戦闘を終えて木々の下で休めた時間としては多分五分少々。

その間もムラサメちゃんは刀の中に収まったままで。

ぽつりぽつりと話をしていた。

 

消耗度の話。

霊力の話。

()()()()()()の話。

 

『恐らくだが、ご主人も妙な方向に成長しておるな。』

 

不明点は多過ぎるが、変わっていることは間違いないと。

数百年の知識の持ち主は、そんな風に断言していた。

 

『と言うと?』

『肉体面の強靭性が上がっている……というのとはまた別にな。

 ()()()()()()()()()()()気がする。』

『今まで以上に?』

『うむ。 それに霊力も比例して溜まっていそうじゃな。』

 

そんな言葉に、空を見上げて。

そうか、とだけ口にした。

 

何のために、という大きな疑問点がまず一つ。

どういう経緯で、という純粋な謎がまた一つ。

貯蔵量を増やす――――つまり、溜め込む必要があるからか。

祟り神に関われば関わるほどに増えてしまうモノなのか。

まるで経験値かなにかみたいだな、とあながち間違ってはいないだろう答えに繋げる。

 

(……ただ、霊力が増えるってのは異常だよな。)

 

周囲が瘴気……霊力の正反対の存在であるのなら。

当然摩耗していくし、ムラサメちゃんのように存在を保てなくなるのも理解できる。

にも関わらず、俺の体内に比例して増える理由。

今までは特に気付いておらず、気付く理由も薄く。

今回だからこそ気付く事ができた要因。

 

「ひょっとして――――。」

「将臣くん!」

「将臣さん!」

 

その取っ掛かりを口にしようとした瞬間。

奥からがさりがさりと茂みを掻き分ける音。

そして異口同音に呼ばれる名前を耳にする。

 

「芳乃ちゃんに茉子ちゃん。 良かった、無事だった?」

 

視線を二人へ向ける。

あちこちで引っ掛かったのか、或いは戦闘で引き裂かれたのか。

肌に薄い傷と、服装のあちこちが破れた何処か扇情的な衣装と化していて。

直視できずに。

少しだけ周辺視で彼女達を見る。

 

「はい、私達は然程……あちこちに逃げ回るのを追い詰めるのが忙しかったくらいで。」

「予定通り、芳乃様には霊力を殆ど使って貰っていませんからね。

 その分体力は使って頂きましたが。」

 

……どっちがマシなんだろう。

一晩眠れば体力は回復しきるだろうとして、霊力はどうなんだ?

少なくともムラサメちゃんを見る限り一晩では無理っぽい気がするが。

 

「それよりも……将臣さんは。」

「ああ、疲労のほうが大きいくらいで直撃は貰ってないよ。 ……っと。」

「そういう問題じゃないです!」

「え?」

 

立ち上がろうとして、少しだけバランスを崩す。

その手を二人に支えられつつ、じろりとした眼で睨まれる。

俺何かしたか?

 

「服もボロボロですし……傷だらけじゃないですか!」

「無茶し過ぎなんです!」

 

支えていた手を、二人が肩に回してくる。

見た目だけで本当にダメージはあまり無いんだが。

風呂とかに浸かったらヒリヒリとかはしそうだけど。

それを口で伝えて理解して貰えるのかどうなのか。

 

「いや……他に方法なかっただろ……?」

 

それにボロボロなのは二人も同じだろ、とは言わない。

言い返しても口で勝てるとは思えないし。

それに服の損傷度で言えば俺のほうが上なのもまた事実だから。

……この服もう駄目だよなぁ、また買わないと。

 

「だとしても、です!」

「ずっと心配したままだったんですよ!?」

 

両腕を掴まれている状態で挟まれているから逃げ場がない。

声が耳元でするから、聞こえない振りなんかも当然出来ない。

その本心が俺のことを心配して、だから色々と苦しい。

 

「えーと……悪かった。 でも二人にも同じこと言い返すぞ?」

 

その感情は鏡写し。

二人が心配だったと同じだけ、俺も彼女達を心配だった。

何方が上か下か、なんて比較できるものではないから。

 

「…………そう言われると、そうですね。」

 

うっ、と言葉に詰まった茉子ちゃんに。

言葉を出せずに、口の中で幾つかの単語が入り混じったような気難しい顔をした芳乃ちゃん。

二人の違いに少しだけ口元を緩めつつ。

真正面しか見られない光景は未だに続いている。

……いや、正確には俺達全員が。

 

「そういえば、欠片はあった?」

 

話の方向性を少しだけ変える。

実際問題、それがあったかどうかでかなり違いが出ると思う。

 

「あ、はい。 直接拾うのは避けて此方に。」

 

そう返したのは茉子ちゃん側。

恐らくは何かの布……服?を裂いて作ったのだろう小さな手拭き。

それで包むようにして、髪を留めていたのだろう紐で纏められた巾着が揺れている。

 

「分かった、帰り際に川に寄っていこう。」

「川……沈めるんですか?」

「この状況じゃ持ち帰れないだろ?」

 

確かに、と口にしたのは芳乃ちゃん側。

疲労の方向性が違うからか。

思考労働と肉体労働、その差が見える気がして。

少しばかり自分も含めて労ろうと口を開く。

 

「あー……なぁ、二人共。」

「はい。」

「後でさ、時間が有るときでいいから……。」

 

破れた服買いに行きたいんだけど、どうかな。

 

山を下る道の中。

木々に隠れていた月が漸く姿を見せた、瘴気の中。

 

はい、と。

勿論、と。

良かった、と。

三者三様の、言葉が響いた。

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