*レナ→廉太郎の呼称をレナ√に沿って「レンタロウ」に変えています。
見逃しあったら誤字報告で訂正指摘お願いします。
<Chapter4-1-13>
結局、その誓詞のみを入れて再度御守を作り直し。
念の為今日一日は残って貰い、明日の朝一番で帰る手筈を整えた。
客間を更に二つ。
唯でさえ広い、とは思っていたけれど。
(……城、とまでは言わないが普通に豪邸クラスだよな。)
日常的に客を迎え入れ、対応できるだけの態勢。
……いや、逆か?
そうしなければこの家が持たなかった可能性。
500年、口で言うだけならば簡単だが。
家に娘しか生まれない、つまりは毎回の世代交代時期には入婿を取る。
それに出産率はまだしも、無事に成長してくれる割合を考えれば――――。
(……此処まで持ったのも、色んな意味で加護のお陰かもな。)
今は二人を監視……見守ってくれているムラサメちゃんのことをふと思い。
夕闇から夜へと更けていく空白の時間に、部屋からそっと抜け出した。
行き先は特にあるわけではない。
ただなんとなく、一人でいたくなかったというだけ。
「……ん?」
ふと、本殿の方へと視線を動かす。
人工的な灯りが一つ、二つ。
誰かがいるのか、ちらりちらりと揺れている。
「……誰かいるのか?」
そんな声を投げ掛けながら、本殿へと顔を覗かせれば。
「あ。」
声に反応したのだろう、茉子ちゃんが此方へ振り返る。
座っていた先は神具を置く台の前。
普段であれば欠片を安置している場所。
「……あれ、茉子ちゃん?」
何かしているのなら芳乃ちゃんか安晴さんだと思っていたが。
彼女が――――未だに巫女姿のままで其処にいるのは、どうにも新鮮さのほうが強い。
「将臣さんこそどうして?」
「いや、なんかやること無くてさ。 茉子ちゃんは?」
「少しだけ自主練習を……それで休憩中です。」
自主練、巫女服……ああ、儀式のか。
今日実際に行うところを見ていたわけだし。
……本とかが有るわけでもないから口伝で、しかも実の親からの指導だよな。
よくこれだけ継がれてきたと感心してしまう。
門前の小僧習わぬ経を読む、とも言うし日常的に見ることで学んでいた側面はありそうだが。
「それで巫女服なのか。 納得。」
「練習としても、服装は出来れば同じで行いたいですから。」
「服が変われば動き方も変わるしね。」
流石に時間帯もあるのか、いつもの鈴は無かったけれど。
右手側に置かれた同重量程に見える、練習用のモノ。
ひょっとすれば代々使われていたものかもしれない。
よ、っと声を出しながら。
なんとなしに隣に座る。
「ムラサメ様は?」
「今は二人を見てくれてる。 『監視じゃ』とか強がってたけど。」
「目に浮かびますね……。」
なんとなくの、互いの情報交換。
ゆっくり出来る時間が貴重なのは互いに同じ。
だからこそ、ちょっとした話でも出来るのは互いにとって幸せな時間だと思う。
それは芳乃ちゃんであっても、ムラサメちゃんであっても同じこと。
勿論、目の前の――――茉子ちゃんとだって。
「芳乃ちゃんは?」
「今は調べ物をしている筈です。」
「調べ物?」
ふと気になって聞いてみる。
練習するともなれば、彼女が本殿にいないというのもおかしな話。
自主練、と言い切っていたからおかしくはないんだろうけど……
「あの……誓詞に関してです。」
「……ごめん、どういうこと?」
少しだけ顔を赤くした彼女が、何に関してかを口にする。
……誓詞に関して調べ物?
俺も然程詳しいわけじゃないが、なんか集団で約束する際に名前を書く証紙的な物だったよな?
「ワタシも詳しくは聞いてませんが……朝武の名前が書かれていましたよね?」
「あー……うん、あった。」
「恐らくアレを書いたその代の巫女姫と、あの欠片に対して対応した人物は同じです。
ですから……。」
ああ、と口から漏れていた。
以降どれだけ大事にしてきたか、という部分で分かれるとしても。
穂織の地から離れてからもあれだけ保たれているというのは術者が相当に優れていた証拠でも有る。
唯でさえ代変わりが激しい朝武家だ。
レナさんの家系と同じ期間……つまり単純に4代遡ればいいというわけでも無いのだろう。
「でも実際、何かしら書き残したものでも見つかれば変わるよな。」
「そうですね……
残せなかった。
或いは消された。
そう考えてしまっても仕方のないこと。
「……それに。」
「ん?」
「私事ですけど……誓詞が残せて羨ましいな、という思いがなくもないんです。」
これは――――弱音、に近いのだろうか。
周囲に俺しかいないから。
暫くの付き合いで、茉子ちゃんは。
俺だけがいるところで言葉を漏らすことが増えているな……そんな風に思っていた。
「羨ましい……か。」
「
……私達は、
全てが終わるまでは、と言うのは本当にそのままの意味で。
心身全てを捧げての奉公、と呼ぶのに相応しいような在り方。
だからこそ、彼女達は互いに――――引け目を持っているのだろう。
「……実際、さ。」
「……はい。」
「作れるとしたら……作ってみたいの?」
「……そう、ですね。」
神に誓う。
その重さを、十二分以上に分かっているからこそ。
「……それだけ、思える人がいれば。 幸せだとは、思っていました。」
そっか、と。
そうです、と。
小さく、互いに囁いた。
今は、とは。
決して問い掛けないけれど。
――――互いに、そう思っていることを確信していた。