一方その頃、みたいな感じ。
<Chapter4-1-14-Y>
もうもうと舞う埃。
左手で
幸いなことに鼻や口には入らずに、暫し経って落ち着いてくれた。
(……普段見ませんからね、こんな場所。)
裏倉庫とはまた別の、代々の巫女姫だけが入ることを許される古びた一室。
その中で一冊の、古びた和紙を取り纏めた書物を探していた。
私がこれから書いていく本。
お母さんが書いたのだろう、未だに読むことが出来ない本。
その前の、更にその前の。
ずらりと並んだその中で、四代から六代程前のそれを見つけるまでにそう時間は掛からなかった。
(……なんでか、こういう決まりが多いんですよね。)
私達でさえ普通なら入ることを許可されない場所だって有る。
本殿の奥、建実神社の奉る神様がいると言われる場所。
その隣、常に閉じられた部屋。
それに、
雁字搦めに縛られた、私達。
それさえも、もう普通だと思っていたけど。
(そんな訳、無いんですよね。)
自縄自縛の状態から解放されて。
少しだけ、気持ちが外向きになれたと私も思う。
だからこそ、少しだけ積極的になれたし。
だからこそ――――あ、
(でも、まだ足りない。)
うん、と小さく頷いて。
ちかちかと光る、切れそうな白熱灯を一度付け直す。
そろそろ交換時期かな、と思いつつ。
今日得てしまった、あの誓詞に関しての記述を追いかける。
四代前。
五代前。
(…………あった。)
やはり、私達は切り替えが早いから。
どうしても苦痛に耐えきれずに、耳が発現したままで死んでしまうから。
同年代にはならないだろう、とは思っていたけれど。
指で記録を追いかける。
”リヒテナウアー”と書かれたドイツ人に関しての記述。
詳しいことは何もなく。
ただ、行ったことと済ませたことを記録する中。
少しだけ、文字が滲んだページが一つ。
誓詞について書かれた部分。
欠片に関して行った技法の記録。
『穢れを纏っていたけれど、唯それしか見えなかった。』
そんな単純な、彼女は何も知り得なかった欠片の事。
それらに続いてたった一言、『良いなぁ』と。
それだけが書かれた、そんなページ。
(……。)
技法は確認した。
けれど、それは私には実行できるものではなかった。
ぱたん、とその本を閉じて。
はぁ、と深く息を吐いて床に転がる。
背中に埃が纏わり付くけれど、今は。 今だけは。
私にしてみれば五代の祖。
お父さんやお母さんからすれば高祖父。
そんなご先祖様の記録でも、これを見られるのは直系の主……巫女姫だけ。
だから。
多分お母さんも読んだのかな、とか。
好きな人と結婚できなかったのかな、とか。
そんな暗い感情と、嘗ての記憶が入り混じって刺激する。
(鞍馬くんと、レナさんもいるけど。)
二人は隣り合った一室に案内した。
けれど部屋の前を通りがかった時。
一つの部屋で、少し盛り上がっているような声が聞こえていた。
あれが青春なのかな。
毎日が大変そうで、それでも楽しそうで。
私だって――――。
(…………お願い、しちゃおうかな。)
多分、私が望めば彼は断らない。
分かった上で、受け止めてくれる。
茉子とはまた別の意味で、私もまた縛られているから。
頼ってばかりで。
寄りかかってばかりで。
……私自身、そんな自分を嫌悪していたはずなのに。
(……うん。 茉子も誘って。)
今は、そんな自分を嫌いではない。
気持ちをちゃんと明かせたからか。
少しずつでも、解決までの道程が見え始めたからか。
だから。
せめて。
――――ちゃんと結ばれるまで、私は生きていられる事を。
ゆっくりと、起き上がりながら。
唯、静かに祈った。