多分「父親」と「娘婿」の立場がメイン?
事件が解決してないし。
<Chapter4-2-1>
<Chapter4-2-1>
すう、すうと。
枕元の携帯電話。
暗い中で手探りし、それを手に取り布団の中で時間を見る。
(……眠りが浅くなってる、ってわけじゃないとは思うが。)
普段よりも更に一時間ほど早い目覚め。
隣り合う彼女達……そして気付けば端に混じっていたムラサメちゃんを傍目に。
身体の調子を確かめて、疲労は完全に抜けているのを確かめた。
(案外俺も鈍感ってことなのかね、これは。)
同衾までは許さないし出来ないだろ、という指摘に頷き。
『ですから別に布団を用意する分には良いですよね』と。
まるで子供のような論理を振り翳し、理解を求めた彼女達。
顔の端に隠し切れない暗さが映っていたのもあって、致し方なくそれを認めたが。
……何かあったんだろうな、という気持ちは否めない。
調べ物。
廉太郎とレナさん。
その後の頼み込み。
恐らくはその辺りが起因してなんだろうけれど、細かい内容は口にせず。
明らかに甘えを見せる時と、そうではなく隠す時。
この差も、彼女の疲労に理性が押し負けた時なのかな、とか。
他愛もない事の空想に耽りながら。
そっと起き上がり、起こさないことに気をつけながら部屋を出る。
「……はぁ。」
とは言え、俺だって男だ。
二人の――いや、三人か?――可愛い女の子に囲まれて何も思わないわけじゃない。
そういった感情は考えないようにしつつ、或いは身体の疲労に身を任せる。
それで対応は出来てきていたけれど。
……同居するって羨ましいと思ってたが、苦しい面も多いよな。
既に聞き慣れた、ぎしりと鳴る板音を従わせて縁側を進む。
(どうすっかなぁ。)
まだ運動するには早すぎる。
とは言え二度寝するにも目が冴えてしまった。
軽く調べ物でもしたいところだが、部屋は彼女達で埋まっているし。
……早朝過ぎて絶対寝てるとは思うが。
彼奴に相談するか悩んでいたことでも考えてみるか。
(おじさんから意見も欲しいがジャンル外だろうしなー……。)
穂織の観光客の低下。
それに伴う
流通の鈍化に若者の流出。
段々と滅びていく、置いていかれるのを食い止めるために出来ること。
結局一番対応しなければいけないのは観光に関して、ということになる筈だ。
そして観光客の増加、となれば行える手段。
(街興し……じゃないにしても、
確かちょっとだけ耳に挟んだ。
『繰り返し来てくれる観光客』の総数は其処まで変わっていないとか。
つまり、一度でも来てくれれば良さが通じると思って良い。
幸いなことに温泉街としての側面も持つのが穂織。
温泉に対して
何より俺自身がその効果を大きく受けている。
(……多分、そういう意味もあっての春祭りの叢雨丸のイベントだったんだよな。)
何度か考えていた結論に至り、小さく溜息を漏らす。
似たような状態に戻せればいいけれど。
そうでないのなら、俺が実際に動く必要性も有ると思う。
例えば――――そう、芳乃ちゃんと合わせて剣舞を舞うとか。
当たり前だよな、と思わないでもない。
外の空気でも吸おうと、玄関口へと踏み出した。
からりと開く戸の音。
暗闇の世界。
外へと踏み出し、表側へ回る。
(良さそうな写真も上手く撮れないし。)
彼奴に諸々の写真を送ってみたが、『唯の田舎じゃないか?』と。
何も知らない一観光客からの言葉を真正面から受けた。
……だから、やはり探すとしたら強みということになる。
(……あー、駄目だ。 何にしろ何かしら動けるように準備するしか無い。)
温泉街という面で押し出すのは元からの住人が動いているはず。
俺達だから――――外からの目線か、若いからこそ納得できる方法を探したい。
……最初に浮かんだ、
本殿の前で、天を見上げる。
朝日が昇る前の、一番暗い時。
灯りもなく、ただ自分ひとりでいられるような感覚。
「…………ふぅ。」
大きく、小さく深呼吸。
こうして一人で過ごす事も最近は減ってきているような、そんな気がする。
後から後から対応しないといけないこと。
動きたいこと。
やるべきことが積み重なって、立ち止まる事を忘れてしまったような。
かつん。
石畳を叩く軽い音。
そんな音に振り向けば、竹箒を担いだ壮年の男性の姿。
「や、おはよう将臣君。」
「安晴さん?」
普段から見る顔の神主。
芳乃ちゃんの父親。
「普段からこんな時間に起きてるんですか?」
「いやいや、流石に朝日が出てからの方が多いよ。
ただ、毎日掃除はするようにしてるっていうだけでね。」
……だよな。
今まで朝のランニングの時に見掛けた覚えがない。
つまり何かしら別の仕事……本殿の対応とか書類仕事か。
であれば、今日こうしているのは……。
「朝に玄関が開く音がしたけど、普段よりも早いから。
最初は茉子君かとも思ったんだけど。」
「……成程。 ちょっと、外の空気が吸いたくて。」
俺のせい、か。
内心を全て漏らすのは、どうにも気が引けて。
表向きの理由だけを口にする。
「まあ、そういう日もあるだろう。」
そうして、掃き掃除を始めるでもなく。
隣に立って、何も言わずに佇んでくれた。
……不思議と、それだけで少しだけ精神が安らぐような。
安心感を心の何処かで抱くような錯覚を覚える。
「……君には、色々と迷惑を掛けているからね。」
「いえ……俺が、したくてしてることです。」
最初は唯の婚約者としての名義貸しとして。
今は…………それを、本当にしようとして。
「……安晴さん。」
「うん?」
だから、彼女達と。
彼に対して今後を告げる前に。
たった一人で、言っておきたいことが有る。
「少し、時間貰ってもいいですか?」
「ああ……勿論。」
今、この場所で。
たった二人でいる場所だからこそ、言えることを。