恋心、想花の如く。   作:氷桜

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「彼女」にも手を。


<Chapter4-2-5>

 

<Chapter4-2-5>

 

結局、芳乃ちゃんが落ち着くまでに数分の時間を要した。

まあ、その気持ちは分からないではない。

実の親に自分の取ってきた行動が全部知られていて。

しかもそれを許された――――気恥ずかしさで埋もれてしまうだろうから。

 

それも腕を組んだりみたいな()()()()()()()ではなく。

大人でもやるかやらないか。

俺で言うなら、まあ。

()()()()()()とかでしか見ることもないだろう行動も含んでいたので。

 

「……落ち着いた?」

「は、はい……。」

 

普段では絶対に見られない光景。

そして同じくらいに羞恥に襲われていた茉子ちゃん。

二人の間に座りつつ、下手に関われば更に膨れ上がる感情。

結局、これは自分で抑えて貰うしか無かった訳だ。

 

『お主等……その程度覚悟してやらぬか……?』

「ムラサメちゃんだってなんだかんだ言ってたのに。」

『吾輩は覚悟してに決まっておろう!?』

 

げしげしと後ろから身体に当たる感覚。

痛い痛い、背中を蹴るな。

 

「あー……で、相談しても大丈夫か?

 俺は後で走ればいいけど、二人は色々忙しいだろ?」

「やらなければいけないことはありますけども……。

 此方のほうが大事ですから。 なんとでもします。」

 

少し悩みつつの口振り。

 

「ただ、その分午前は詰まってしまうので。

 手が空いているのでしたら力仕事や掃除を手伝って貰えますか?」

「ああ、走ってきた後で良い?」

「はい。 普段使われない部屋や倉庫の掃除が主になりますから。」

 

……常陸家がどうなっているのか、少しばかり恐ろしいところもあるが。

主の家系からの依頼の側面もある以上、逆らえないと思うのが妥当な所か。

 

「私は……そうですね。 茉子、今日の午後は大丈夫?」

「はい、買い物を済ませた後は多少家事をしておくくらいですから。」

「分かった。 なら、儀式の修練……()()()()()にしておきましょう。」

 

と、言う事?

 

「実際にはやらない、って意味?」

「違います。

 実際に教え込みはしますが……これを教えるというのは、巫女姫の持つ権利の一つなんです。」

「つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことですね。」

 

成程。

実際この方針は安晴さんも了承済みのことだ。

本格的に話し合うのは午後に回す事が出来るのなら、全体像を話す程度ならなんとでもなるか。

 

「ああ……というかそうしないといけないってのも本来おかしいんだけどなぁ。」

「どうしても学生だと学校で時間使いますから……。

 それに加えて婚約者を押し付けようとする名家は後を絶たなかったので。」

『逆に言うなら成人を超えると自由な時間が多々生まれる、ということでもあるんだがの。

 ……とは言っても、()()()()()()じゃが。』

 

次の代を産まなければならない、という強迫観念。

呪いが解けない限りは、子供に呪いを引き継がなければならない悲哀。

この家がこれだけ長続きしてこれた、というのも一種の奇跡だとさえ思える。

 

「……さて。 話を戻しましょう。

 それで安晴様から求められたのは成果、でしたよね?」

「そう。 或いは認めざるを得ない答えの何方か。」

『……中々難しい問い掛けじゃなぁ。』

 

本当にそうだと思う。

 

仮に、の話をするとして。

安晴さんだけに成果や答えを見せるのならば手段は幾つか浮かぶ。

呪いを解き、先祖代々の悲願を達成してみせればいい。

それは今やっていることの延長線上。

ただ、彼が言ったのは恐らく『古い家系が認める』成果か答え。

つまり。

『数限られた人員だけが知る』内容だけでは足りない、と見做される可能性がある。

 

「先ず条件を整理するところからですかね?」

「そうね。 成果か答え。

 つまり、何かを成した結果そうしても許せると言えるだけの見える結果。」

「答え、だと……そうしなければそもそも解決が出来ない何か……だよな?」

 

こうして整理すれば、幾つか見えてくる物がないわけではない。

言い換えてしまえば褒美、或いは致し方ない理由。

これは何方も同一線上にある答えではない、と俺は判断する。

 

『吾輩からも意見を言っていいか?』

「はい、勿論。」

『少なくとも、二人の呪いを解くのは大前提。

 その上で皆に見せられる成果……つまり、何かしらの悩みが有ると思って良いと思うがな』

 

……そう言われると、浮かぶのは。

段々と減っている観光客の対策。

呪いに関しては今まで通り。

そして、()()()()

 

「……そうだな。 ムラサメちゃんに関しても動いたほうが良いかも。」

『は? 吾輩?』

 

彼女が現世に残っている理由。

叢雨丸に関しての護り手としての元人間。 贄。

生まれた当初から憑いていた訳では無い、と考えれば――――。

土地の呪いと合わせれば、それが済んだ後にどうするかは考えても良いと思う。

 

「見える見えないは兎も角、俺にとってはもう大事な相手だ。

 その事を考えてもいいだろ?」

『…………。』

 

仕方ないな、と二つ浮かぶのは苦笑い。

ずっと昔から、俺よりも前からの付き合いの二人からすれば更に親しい相手だ。

その相手のことを考えるのは良いけれど……そんな内心の感情が透けて見える気がした。

そして、それを聞いた彼女の頬には。

季節外れの朱色の花が咲いていた。

 

『……なあご主人よ。 女誑しと言われたことはないか?』

「ねーよ。 女の子とか身の回りにいた事はない。」

『…………それは良かったのか悪かったのか。』

 

何度か聞いたような答えを吐き捨てられた。

……相変わらず俺への評価が酷くないか?

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