<Chapter4-2-6>
朝方の話はそれから十数分程続いた。
とは言っても、それ以上に細かい話は進むこともなく。
殆ど照れたような表情を浮かべた三人との雑談に終止した、という方が適切。
その後、恐らくは目覚めたのだろう。
複数の足音が聞こえ始めたことで話を終え。
朝食を断った二人を送っていく、という名目で神社の外へ。
朝だというのに、相変わらず熱を帯びる季節の始まり。
穂織は周囲が木々に囲まれている分、まだ涼しさが有るだけマシで。
文句を言えば蹴飛ばされそうだな、と思うに留めた。
「しっかし。」
「あん?」
ざくりざくりと踏み固められた道の上。
肩に引っ掛けるようにして
「今日一日……いや、昨日一日で知っちまった話で胃もたれしそうだわ。」
愚痴……というよりは雑談の切掛か。
空いた片手で腹のあたりを擦るフリをして、そんな言葉を口にすれば。
「レンタロウ、お腹空きました?」
「……いや、そうじゃないけども。」
大分関わりが深いはずのレナさんがそんなすっとぼけた言葉を発する。
……先ず間違いなく、今後も関わってくるんだよな。
今までも相談したりされたりしてるし、ちょっとだけでも声掛けておくか。
「あー……二人に言っときたい事があるんだが。」
「あん?」
「はい?」
ほぼ同時に反応を返す。
……いろんな都合を除けば、今こうしている姿だけを見ればお似合いなんだけどな。
特に――――実質的に留学生、という立場なら余計に。
「こっからレナさんにはたまに協力してもらうかもしれない、ってのは言ったよな?」
「あ~、その代わりに俺が動けって件だろ? 言ってたな。」
「オカミに無理はさせたくないのですけれど……。」
それもそうだよなぁ……。
ただ、此方も多少は無理しないといけない部分もある。
「出来る限り声は掛けないようにするし、そっちの予定にも従えるだけ従う……ってのは兎も角。」
「あん?」
その確認は間違いないんだが。
何方かと言えば……実際に働いている経験がある二人にこそ協力して欲しいのはもう一つ側。
足を止めた二人に近付き、出来る限り誰にも聞かれることのないように相談と願い事。
「前々から話してることでは有るんだが……。
ちょっと本腰入れて動かなきゃいけなくなりそうでな。」
「前々からぁ? 何のことだ?」
片目を大きく開きつつ。
口はそれ程良いと言い切れないが、実際此奴は色々と気が回る。
俺よりも周囲に顔が知られているのも有るし、協力して貰えれば凄い助かる。
「街の客足の話だよ。」
「……ああ、言ってたな。 つーか俺からも幾つか話したやつか。」
「そうなのでありますか?」
奇妙な言い回しをしつつ、レナさんが更に一歩近付く。
……色々と張った胸元とかが近付いてしまって目を逸らす。
それは目の前の廉太郎も全く同じだった。
「ゴホン。 んで、だ。」
「お、おう。」
「?」
一人気付いていないのか。
或いは
それとも発想がそうならないのか。
……多分最後のは無さそうだな。
そういうことに強いのか弱いのか、其処までは知らないけども。
「ちょっと色々あって本腰入れて俺達も動きたい。
んだが……俺達の立ち位置、ちょっとアレだろ?」
「……俺達、ですか?」
「あー、レナはまだ知らないよな。
……確かに外の人間に巫女姫。 それに常陸家ともなるとそうか。」
最初の二人に関しては俺も納得するが、茉子ちゃんも。
……一般に知られているのが朝武に付き従う影の存在。
まあ、真実を伏せ続けているなら知ることなんてほぼ無いとして。
そうなると……やはり「少しだけ違う」と取られていると思って間違いないとして。
念の為に確認しておく。
「……そういや、常陸家ってどんな感じだと思われてるんだ?」
「あー? そうだな……変な場所にある家で、非干渉的って感じか。
って言っても巫女姫様に付き従ってるから仕方ねーとも思われてるが。」
……やっぱりそんな感じか。
そうなると……唐突に動き始めれば奇妙にも思われる。
出来る限り実情を伏せながら関わり――――最後に静かに収めるしか無い。
表に出せる関係ではなく、事実婚とか妾とか。
そういった扱いを広められて喜ばしいかと言われれば、確実に否なのだし。
「……将臣?」
「ん?」
「なんかあったりしたのか?」
……ああ、まあ此処まで動き出そうとすればやっぱり聞くよな。
ただ出来れば今は身内だけで話を留めたい。
「ちょっとな。 話せる時になったら話すわ。」
「……おう。 なら、ちょいちょい協力して貰うって立場でいいよな?」
「取り敢えずな。 その内また時間が出来た時にでも話すが……。
一応俺も地元の知り合いに意見貰ったりで動いてみる。」
神社になるか、志那都荘になるか。
その会場はどうなるか分からないが、頭数だけは集まりそうなのは確実。
「外部の意見は大事だもんなぁ。」
「どう見られるか、ってやつな。」
「……ふむぅ。」
……二人だけで納得していると、レナさんが何かジロジロと見つめてくる。
あの、なんです?
美少女に見られるとそれはそれで緊張するんだけど。
「やっぱり、根本的な出分でレンタロウとマサオミは分かり合ってる気がします。」
「……部分な。 しかし、呼び捨て?」
「ダメでしたか? これからは仲間……なの、ですよね?」
だから、わたしもレナと呼んでください。
そんな言葉と共に、真っ直ぐな目線で俺を見る。
あー、そう言われると弱い。
いいです、としか言えなくなるんだが。
「…………チッ。」
「…………おい。」
……この場合睨まれるような理由ねえよな!?