(ちょっと短めです)
<Chapter4-2-16>
とは言え、だ。
大元の、根幹の原因に関わっているものが肥大化しただけの話。
逆の言い方をしてしまうのであれば、対処療法で何とかなっているのが奇跡に近いという現状を再認識しただけの今。
けれど。
対象が、「噂話」や「伝承」から「神」に移り変わるのならば。
今の朝武の家の在り方、伝承、血。
それら全てを活かす方法に繋がる可能性も同じく出てくる。
対応できる可能性と同じだけ、失敗した時の被害は広がるだろう。
一つの家系――――或いは幾つかに枝分かれした、先祖代々継いできた家系全てに波及するかもしれない呪い。
これを止めるための手段に手を出して、許されるのか。
多分、自分も取り込まれる覚悟を決めてでもなければ難しかっただろう。
(……婿養子、ね)
そう考えてしまえば、今の在り方も
好きな女の子の為。
その家系に組み込まれることを望んで、その前にある程度であっても事情を明かされて。
それでも一歩を踏み込むだけの勇気を必要とする立ち位置。
今の俺がそれに相応しい、なんてことが言えるかは分からないのに。
たった一人のためだけに、なんて決して言えることではないのは分かっているのに。
それでも、なんとかしたいと思えてしまう。
この考え方其の物に、何らかの介入がないと誰かが断じて言えるのか。
「…………」
――――其処まで考えて。
考えるだけ無駄だな、と切り捨てる。
隣に座り込み、同じようなことを考えている女の子。
彼女の家もまた、その在り方そのものが呪いの一部に組み込まれている。
同じような呪い、同じような在り方。
けれど、決して絶やしてはいけない血の在り方。
今代は茉子ちゃん、というたった一人の娘だけだから同じように誰かを呼び込まなければいけない。
知らない誰かを。
そう定められているから、いつかは嫌でも自分の心を押し殺して。
そんな二人の女の子に、俺は手を伸ばしている。
それがどういう意味を持つのか、認識していながら。
何とか出来なければ、手から零れ落ちるという未来を知っているから余計に。
早くしなければ、そう焦ってしまう自分自身がいるのも分かっている。
「狼、神、刀、宿る人格」
だから、口から言葉を零した。
独り言を言っているだけのように見せかけた、俺自身の揺れる心を押さえ付けるためだけの行為。
その本質を理解されながらも、多分口には出してくれないだろうという優しさに甘えて。
「始まり、血、呪い、事象」
多分。
多分だけれど。
自分自身でも理解しきれていないことを、理解するために。
「狼が始まり――――ただ、呪いの始まりは其処じゃない」
全ての背景を読み解くのに必要なピースが、多分獣としての過去。
呪い、という実害を齎しているモノを解くのに必要なのが、彼女達の家系、大元。
事象自体が幾つも面倒なくらいに絡まっているからこそ、答えを導き出せずに長引いているのだろう。
俺は、一旦そう決めつけることにした。
……周りから、どう見えるかを考えること無く。