<Chapter1-1-2>
田舎道、というよりも山道を少し歩いた先。
穂織の町並みが見え始めた。
「……変わらないなー。」
何処か古さを残したままで、【和】の雰囲気を残したまま変わった発展を遂げた土地。
自分の記憶にある4年前の頃と殆ど変わっていないような気がして、少し嬉しくなった。
穂織は温泉街として発展を遂げた土地。
効能は……思いつく良さそうなもの全部、といった感じの雑さ加減だがそれも事実。
飲む、と言った方向性には余り向かない性質だが事入る、となれば治療にはもってこい。
そんな事もあり、古くからも湯治客は多かった――――とは、祖父からの聞き齧りだ。
ただ。
ざっと見えるだけで、昔とは明確に変わっていることが一つ。
あちこちで見かける浅黒かったり逆に真白かったりする、異人達の姿。
「観光客……?」
そんな言葉が口に出るくらいの数。
思い思いにキャリーバッグやらリュックやら、或いは手ぶらで町中を歩いていた。
それが記憶に有る限りのものより明らかに増えているように思えた。
とは言っても、俺の記憶に有るのは4年前のものが最新なんだけど。
(英語は殆ど喋れないけど大丈夫なんだろうか……。)
まあ、立ち尽くしていても仕方ない。
動き出そうとしたその時に。
「んー…………?」
視界の外れ、やや赤い髪色をした年上の女性が立っている。
何処か、見覚えがあるような。
そんな事を思っていれば、声を投げ掛けられた。
「あの、すいません。」
「はい?」
「人違いならごめんなさい。 ひょっとして……まー坊?」
その言葉と、聞き覚えのある声。
脳内に走ったのは、ずっと昔に遊んでいた……言ってしまえば、幼馴染の。
たしか2つ3つ年上で、名前が――――。
「もしかして、
「やっぱりまー坊!? 人違いじゃなかったんだ、久しぶり!」
「うん、久しぶり。」
「元気してた?」
彼女が俺を見上げ、俺が彼女を
こんな感じになるのは、昔じゃ考え難かった。
それだけの年月ぶりなのか、と思ってしまえば何か懐かしさよりも寂しさが先に立った。
「元気も元気。 なんか芦花姉、縮んだ?」
「縮むわけ無いでしょーっ!」
頭をペしりと叩かれる。
こんなやり取りも何処か懐かしい。
「うわ、ギリギリかぁ。 おっきくなったねえ。」
「去年くらいから急に。」
「そっかぁ。 まあ……何年も経てばそうだよねえ。 というかどうしたの、急に来て。 一人?」
「祖父ちゃん関係で、母さんに追い出されてねー。」
「玄十郎さんに?」
「宿の手が足りないとか何とかで。 しかも二人は旅行だよ? ズルくない?」
道端での会話は弾む。
ずっと話していなかった相手だから、というのもあるけど……小気味いい、とでもいうのか。
打てば返ってくる会話は、幼い時から知っている相手だからというのもある気がする。
「確かにそれもそうだけどねー。 全然顔見せに来なかったまー坊も悪いと思います。」
「それもそうだけどさぁ、俺だって部活とか受験とかあったわけだし。」
「部活に受験……はあ、学生の特権だねえ。」
芦花姉にちらちら見られていると、気恥ずかしくなってくる。
祖父ちゃんに昔から叩き込まれていた剣道部に惰性で所属して三年。
元々やる気がなかったから、大会とかでそこまで結果を残せたわけでもなかったし受験を契機に離れ。
ただ身体を動かさずにいるのもどうにもむず痒く、ランニングみたいなことはずっと続けてはいるんだけど。
お陰で腕と足の筋肉の差がひどいとは母さん談。
「で、このまま
「そのつもり。 荷物も有るし。」
「アタシも一緒に行こうかな。 もう少し話しながらでも良いでしょ?」
「別に俺はいいけど……芦花姉は大丈夫なの?」
「へーきへーき、買い出しの途中だし。」
「まあ、ならいいけど。」
そのまま、最近のこととかを話しながらの歩み。
昔見た光景ではあったけど、こうして背が伸びて来ると見える景色も変わってくる。
……後はまあ、隣の女性とか。
「……? 何、なにか顔についてる?」
「いや?」
「じゃあ何よ、見惚れてたとか~?」
そんな視線に気付いたのか、首を小さく傾げながらに問い掛けられ。
少しだけ口籠りながら、正直に言ってしまう。
「…………ああ、まあ、うん。」
「…………え、あ、ありがと。」
正直に言ったのに妙な空気。
昔よりもずっと「女性」らしくなった――――なんて言えば口説くみたいに聞こえるし。
口にはしないけど。
「……で、で本当のところは?」
「あー……そういえばそんな服装してたよなぁって。」
「? 変?」
「いや、よく似合ってるけど……外じゃ見ない格好だから。」
「あ~……確かに。」
和服を元にしたんだろう格好は、穂織で独自の発展を遂げた。
そんな格好が似合って見えるのも、着慣れているからという部分はあるんだろ多分。
俺が着て似合うかどうか。
「そういえば、今は芦花姉何してんの?」
「アタシ? ウチが元々お店やってたの覚えてる?」
「あ~……ごめん、忘れてる。」
「ま、だろうね。 甘味処やっててね、そこで経営に携わってる。」
甘味処。
都会で言うところの喫茶店みたいなものだろうか。
「ほら、外国人の人増えてるじゃない? それに対応していくために、っていう口実で。」
「口実て。」
「お父さんとかは裏で作ってるのが楽しいからね。 押し付けられた、みたいな?」
というか、芦花姉も結構見られてる気がするんだが良いんだろうか。
ちょっとばかり優越感。
「確かに増えたなぁ、とは思ったけど……ここまでだっけ?」
「ああ、今日は春祭りだからね。」
「春祭り?」
「あれ、まー坊ひょっとして初めて?」
「普段は時期ずらしてたから。 何するの?」
「中央通りを鎧着た格好で練り歩いたり……かなぁ。」
顎に指を付けながら、思い当たるものを口にする。
……なにかの過去の伝承的な?
「なにかそれ、言い伝えとか有るの?」
「あるよ? ……仕方ないなぁ、ここはお姉さんが教えて差し上げましょう!」
偉そうだなぁ。
まあいいけど。