恋心、想花の如く。   作:氷桜

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既に独自回っていうかなんていうか。
真面目にどう砂糖吐かせましょうかねえ……転校すらまだ終わってないよ……?


<Chapter2-1>
<Chapter2-1-1>


 

<Chapter2-1-1>

 

 

――――ぴぴぴっ、ぴぴぴっ。

 

「んー…………。」

 

五月蝿く鳴り響く頭の上の目覚まし……携帯電話の音を止めて、時間を見た。

朝の五時半…………ああ、ついさっき寝たと思ったのにもうこんな時間か。

 

「……ごしゅじーん?」

「んー……今起きる。」

 

そんな目覚ましの音に反応して、空中からふわりとムラサメちゃんが現れた。

念の為頼んでおいた、『起きないようなら起こしてくれ』という依頼のため。

 

「ふぁあ……おはよう。」

「うむ。 いい朝じゃな。」

「晴れてるならそれに越したことはないなー……。」

 

携帯……スマホの指す日時は、祟り神退治から二日後を示していた。

昨日も昨日で動こうとしたのだけど、朝から小雨と周囲から心配されて取りやめて。

結局動き出せるのは今日から。

 

「しかし、なんと言うか。」

「? 何?」

「いや、見栄を張るのはあの場だけかと思っておっただけじゃ。」

「それは流石に酷くないか?」

 

後ろ向いてて、と頼んでからその場で着替える。

運動がしやすい、前の高校でのジャージも考えたけど……流石にそんな物は持ってきていない。

伸縮性に優れた私服の中の一着、地元でも「それ用」としていた上下へと着替えて。

 

「良し。」

「ほう、それが……ご主人の『うんどうぎ』とやらか。」

「そんな所。」

 

穂織に来てから行っていなかった、ランニングを再開しようとしていた。

多かれ少なかれ(と言うよりも絶対に)祟り神に関わる以上、運動をしておいて困ることはないと理解した。

本来なら祖父ちゃんにも依頼したいところなんだけれど……転校云々で若干バタついている今は難しそうで。

それに転校先での状況を確認してから依頼するのでも遅くはない、と判断した。

……こっそり叢雨丸を振って、重さに慣れておくことくらいはしようと思うけれど。

 

「今は色んな格好があるんじゃのう……。」

「それで、ムラサメちゃんはどうする?」

「吾輩は……そうじゃの、芳乃の様子でも見ておくことにする。」

()()()()()……んんっ、朝武さんの?」

 

二日前、帰宅後。

安晴さんに無事戻ったことを報告した後、リビングで。

 

『ええと、その。 ……朝武さん、なんて呼ばないでいいですよ?』

『……と言うと?』

『さっきみたいに、呼んでくれていいですよ。 ()()()()。』

 

なんて、朝武さんに言われたりはしたけど。

常陸さんが後ろでニヤニヤしながら言われたけど。

……そうするなら、どっちも名前で呼ぶべきかなぁなんて思ったりしながら。

ただ、名前で呼ぶのは気恥ずかしすぎる。

安晴さんも、何があったんだみたいに目を見開いてたし。

 

「全く、当人がそれでいいと言っているのだから。 そう呼んでやれば良いものを。」

「慣れないんだよ!」

「芳乃も芳乃で距離の詰め方が下手なんじゃよなぁ……。」

「俺は何も言わないぞ。 ……取り敢えず暫くはルート決めも兼ねてあっちこっち走ってみる。」

「うむ。 何かあれば吾輩が向かうから心配するな。」

 

一度頷いて、部屋から出た。

板張りの廊下を滑るように進めば。

 

「あ。」

「あ、おはよう常陸さん。」

「おはようございます、()()()()?」

「うぐ。」

 

玄関口で、常陸さんと遭遇。

朝から晩まで色々手伝っているという話ではあったけど、こんな時間から?

自分も()()呼べ、という無言での圧力を一旦横に置いて。

 

「……こんな時間から手伝ってるの?」

「それは此方の台詞ですよ? 何方へ?」

「あー……ちょっと、趣味をしに。」

「趣味。」

「そう、趣味。」

 

別にランニングしてくる、ということくらいは伝えても良いんだろうけど。

今後がどうなるかはわからないから、趣味という大まかな言葉だけを伝える。

嘘ではないのだし。

…………なんだか言い訳してる感じがするな、何故だろう。

 

「で、常陸さん……茉子()()()はこんな朝から?」

「はい。 これからお風呂場の掃除をしようと思ってたところです。」

「早くない……?」

「結構時間掛かりますからねー、広さがありますから。」

 

そんなことを言っている茉子ちゃんは、確かに上下ともに薄着と言うか脱ぎやすい格好に見える。

ということは……風呂掃除を終わらせてから朝食事作り、か。

……毎日それだと、流石に疲れそうだけど。

 

「実際疲れないの?」

「お風呂を使っていい、と言って貰えてますから。」

 

ちょっと考えてしまったのは、この間の背後からの感触。

……朝一の男子としては、ちょっと、こう、辛い。

 

「あは~? 何か、思い浮かべたりしたんですか?」

「……いや、まあ、うん。」

「……そ、そこで照れないで下さいよ。」

「無理を言わないで下さい。」

 

初めてだったんだぞあんな感触!

……とそうだ。

雑談し続けるのも楽しいけど、このままじゃ戻ってくるのが遅れて朝食で迷惑掛けてしまう。

まあ、自分のペースは何となく理解してるし……丁度いいし、聞いてみるか。

 

「そうだ、茉子ちゃん。」

「ですから、ちゃんは……なんですか?」

「ここから往復で2kmってどれくらいかな。」

「……そうですねえ、一昨日行った野菜屋さん覚えてます? あのくらいまでだと思いますよ。」

「そっか、ありがと。」

 

なら、今日は其処までを目標にしてみよう。

運動靴、紐をきちんと確認して玄関口へ降り。

 

「なら……一時間くらいで戻るよ。 朝御飯には遅れないようにする。」

「まあ、何をするも自由ですが……運動したら、汗は流してくださいね?」

「それは当然。」

 

からから、と戸を開いた。

 

「じゃあ、行ってきます。」

「はい、行ってらっしゃい。」

 

そんな、至極当然の挨拶をしながら。

それでも、同年代の女の子に送り出されるのは少し心が弾みながら。

太陽が顔を出し始めた外へ、踏み出した。

 

出ていく姿を、じっと見ている視線に気付きながら。

深く考えてなかったけれど……そういえば、女の子の手料理食べてるのか今、と。

どうでもいいことを、考えていた。

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