……実際マジもマジで真っ当方面だったら相当良物件だと思うんです彼奴。
『宿泊客』に迷惑を掛けてないのならまだ矯正できるし、ヒロイン次第で。
*眠すぎて仮眠取ってたらこんな時間になってました
<Chapter2-1-2>
早朝の街中を走れば、人の姿も相応に少ない。
商店街、早朝から準備をする人々に声を掛けながら、高低差があちこちにある道程を進めば。
地元の真っ直ぐな道とはまた違った負担が掛かって来るのが分かり、これはこれで……と面白くなってきた。
(行きと帰りは別の道にしたいところだなー……。)
今の俺は『玄十郎さんの孫』と言う評価でしかない。
それ以上は広まらないように食い止めて貰っている筈だから、飽くまでお客さんでしか無い。
暫く暮らすことになる以上、もう少し知り合いも増やしたい所だけど……どうなるか。
茉子ちゃんに芳乃ちゃん、あの二人に迷惑を掛けないように。
そんな前提が生まれれば、更に難易度は上がるのだから。
(えーと、次は……ってこの通りか。)
青果店、八百屋の角を曲がり脳内で道をある程度補正する。
裏通りまでは流石にわからないけど、神社の方角とかは流石に馬鹿でも分かること。
そちらに向けて進むことを前提に、ある程度広い道を選んで進んでいけば見覚えのある通り。
幾度となく過去に通った道――――鞍馬兄妹の住む家のある通り。
ここから神社方向への進み方は流石に分かる。
(此処にするかー……。)
余り遅くなりすぎても変な心配をかける。
というか妙な誤解を持たせるのも良くないし、早めに……と。
そんな折。
見覚えのある家から、恐らくはジャージ姿の見覚えのある顔が見えた。
……あれって。
「……あれ、廉太郎?」
「その声は……何してんだ将臣。」
「そりゃ此方の台詞だよ。」
早朝と言い切っていい時間帯に運動着。
まあそれは俺も同じなんだが……剣道やめたと思ってたのは勘違いだったのだろうか。
少し近付き……家の方に視線を向けた後でこちらに向けて歩いてきた。
微妙な距離感の詰め合い方に、うっかり小さく笑ってしまった。
「何だよその笑い。」
「いやちょっと。 お前がジャージ姿ってのがな。」
「うっせぇ! お前もジャージになればいいんだよ!」
「流石にそれは理不尽だろ……?」
家に戻る、というわけでもないらしく。
俺は向こうに行く、と指差せばそれについて来るらしい。
まあ、廉太郎は事情ある程度知ってる筈だしオープン気味でもいいのかも知れないけど。
それを聞かれて……なんてのが最悪のケースだからな。
「で、何してんだ?」
「それもこっちの台詞なんだが……ランニング、体力維持だよ。」
「はー、お前もやってんのか。 マジか……。」
「『も』?」
その言い方だと……。
「俺もだよ、将臣が来なくなってから数年は大体朝走ってる。」
「……すまん、こう馬鹿にするつもりは一切ないんだが……お前が?」
「お前まで小春みたいなこと言うのやめろよな……。」
それは仲が良い兄妹ということでいいんじゃなかろうか。
首を傾げながら目で見れば、何も分かってないとばかりに肩を竦められた。
まあ確かに妹は愚か兄弟姉妹誰もいないが。
それはそれとして、その態度はムカつくんだが。
「いや、最初は俺も剣道続けてたんだがなー。 怪我して暫く離れてる間に……って感じ?」
「怪我……って大丈夫なのかよ。」
「へーきへーき。まぁ見栄張って女の子助けようとしてドジっただけだし、中学の頃だしな。」
「しかし……それなら祖父ちゃんも悲しんだだろうさ。」
「どーかなー。同年代でやれる相手がいなかったから気力が続かなかったかも。」
……まあ、この辺で部活ってのも難しいよな。
唯でさえ田舎なんだし、同年代は絶対に顔見知りになるし。
「そういや将臣こそ大丈夫なのかよ。」
「何が?」
「こないだ祖父ちゃんが青い顔して夜行っただろ。 詳しくは教えてもらえなかったけど。」
……ああ、そう言えば着替えさせてくれたのは祖父ちゃんって言ってたか。
何処まで言えるのかは分からないので、ある程度……そうだな、まあ大したことなかったのも事実だし。
「まあちょっとな。実際大したことがあったわけじゃないんだが、大げさにしてくれたんだよ。」
「そんなもんか?」
「そんなもん。まあ廉太郎からも祖父ちゃんに伝えておいてくれよ。」
「自分で言えよな……まだ苦手なのか?」
「そうじゃないけど中々言いに行くチャンスがなー。」
走るのではなく、朝方の散歩しながらの会話になってしまった。
遅くなりすぎないように余裕見たスケジュールだったとは言え、時間を見ながらの会話。
多分、それは此奴も同じなんだろうけど。
「ったく……まあ後で俺からも言っといてやるか。 自分でも言えよ?」
「そりゃ当然の礼儀だからな。」
「そーいや、お前転校してくるとか聞いたけど。」
「叢雨丸の件でな。だからまあ、宜しく頼むわ。」
「おう……つっても、本当に代わり映えしないクラスメイト共だからなぁ~。」
かつん。
蹴った石がころころと転がった。
「マジで何も言えねえ。」
「……いや、お前女の子助けようとしたとか言わなかったか?」
「ああ、そりゃ
…………ん?
んん?
「え、お前手伝う……っていうか今関わってんの?」
「言ってないっけ?」
「聞いてねえよ!?」
「まあ言うまでもなく本来は顔合わせる事になってたし、誰も言わなかったんかもな。」
今日一番の驚き、と言ってもまだ起きたばっかりではあるが。
「小春は色々あって関わってないしな。まあ、俺が携われる範囲も大分狭いんだが。」
「手伝いってなにしてんだ?」
「基本は裏方。人手が足りないときは表にも出てるんだが……何かなぁ、あんまり出られねえ。」
「ナンパとかしてたり?」
「しねえよ客だぞ。 観光客と宿泊客は別だわ。」
……あー、つまり?
何とも言えねえけど、それくらいなら良いんじゃないか……と思うのが俺の意見。
いや事実を知ると考えが変わるっていうのは良くあることだが、廉太郎でこうなるとは。
「……え、クラスメイトには?」
「いやぁ……何だろうな、去年くらいからか? 用事があって声掛けようとしてもなんかざわめくからしてねえ。」
「それお前のナンパがバレてるオチじゃないのか……?」
「いやクラスメイトにはした覚えはない。 一人やらかして妙に敵視されてるやつはいるけど。」
「ええ……。」
二人に聞いてみるか……?
いや、俗な話になるし分かってるかどうかはまた別かなぁ……?
「と、そうだ。将臣、お前連絡先変えたか?」
「あれ……今年の初めくらいにスマホなら変えたが送ってなかったっけ?」
「来てねーよ、今寄越せホラ。」
そんな、雑談混じりに。
同年代の同性と話すのが久々にも感じて。
戻ったのは結局、昨日起きたのと同じくらいの時間帯だった。