恋心、想花の如く。   作:氷桜

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なにもない所で話を盛っておかないと……。
仮面の下を暴くために。
そんな感じの茉子回。


<Chapter2-1-3>

 

<Chapter2-1-3>

 

 

部屋に戻り、軽く汗を拭った上で私服に着替える。

シャワーとかがあるのなら、それを借りる……というのも考えたけど。

生憎とこの神社にあるのは妙に広い風呂のみ。

……というか、源泉引っ張ってきてるらしいけどどういうことなんだ?

後で誰かに聞いてみよう。

 

「おはようございます……ま、将臣くん。」

「おはようございます……あの、恥ずかしいならやめても良いと思うけど。」

「恥ずかしいんじゃなくて……言い慣れないんですっ!」

 

そんな考えのままリビングに行けば、丁度同じタイミングで朝武さん……芳乃ちゃんも入ってくる。

まあ、それならそれで構わないけど……。

 

「あ、おはようございます、お二人とも。」

「おはよう、茉子。」

 

余り朝から騒ぎすぎても仕方ない部分もあるし。

そんな事を考えていれば、私服の上からエプロンを付けた茉子ちゃんが顔を見せた。

 

「え~と、将臣さん。目玉焼きの硬さはどうします?」

「え、何でも良いけど……言っていいなら半熟で。」

「はい、少々お待ち下さいね。」

「……半熟。」

 

どうやら、朝出ていたことは特に今は話題に出さないらしい。

その上で、朝ご飯の個人の好みまで調整してくれるのか。

……実家だと、母さんの気分次第だったからな。

まあ自分好みにするために少しは練習したし。

ただ、妙に芳乃ちゃんがブツブツ言ってる気がするのは何故だろうか。

 

そんなこんなの朝食を終わらせた後。

各々のやることをしに別れていくが――――俺自身には、やらなければいけないことはない。

いや正確には制服の準備だとかそういうのはあるけれど、それは今日ではないから。

時間が空いた分、自由に過ごして構わないなんて言われているけど……何もしないでいるとそれはそれで退屈。

と、なると……。

 

(何するかなぁ……。)

 

簡単に浮かんだのは洗濯、掃除の手伝い、或いは勉強。

指折り考え、結局何をするにも俺一人でやるのは難しい現状。

他の誰かの時間を分けてもらえるのなら良いんだけれど……。

 

「あれ、将臣さん。どうされたんですか?」

「あ、茉子ちゃん。いや、時間出来たし何から片付けようかなって考えてた。」

「何から……ですか?」

「そう。」

 

そんな事を部屋の前で悩んでいれば、後ろから声を掛けられた。

……頼んでみるか?

芳乃ちゃんは舞の練習があるし、安晴さんは神主としての責務がある。

丁度手には幾つかの服を詰めた籠を持っている様子だし。

 

「なぁるほど……それもそれで贅沢な悩みですよねぇ。」

「自分でもそれは自覚してる。」

「まあ、ワタシに話を振って頂けたのは助かります。やること取られちゃいますから。」

「休んでても良いぞ?」

「またまたぁ。好きでやってることなんですよ?」

 

まあ確かに、立ち入りすぎて仕事を奪ってしまうのも申し訳ないと思うのだが。

かと言って一日テレビを流したままでいるのも性格的に合わない。

夕方とかになって、また買い物にでも行くのならそれに付き合わさせてもらいたい所だけど。

 

「でしたら、そうですねえ。」

「お、何かやることある?」

「お洗濯、手伝って頂けますか?多分将臣さんも洗濯物ありますよね?」

「そうだなぁ……。なら、俺は安晴さんの物と一緒に洗うよ。気をつけるべきことあったら言ってくれる?」

「別にワタシは慣れてますから大丈夫ですよ?」

 

いや、茉子ちゃんが慣れてる慣れてないじゃないんです。

俺が気にするんです。

というかそれに慣れてしまったら大事な何かを一つ失う気がする。

 

「まあ、男の子ですもんねぇ。」

「何その面白可笑しいような目。」

「いえ?別に?」

「目が笑ってるんですけど……?」

 

そんな雑談を飛ばしながら、上着に混ぜるように下着を持ってくる。

まあ干した段階で色々と見られるけど、もうそこは仕方ない。

自分の部屋で干しておいても大分乾くけど、割り切れる範囲では割り切ったほうが良いんだろうし……。

いや、でもなぁ。

 

「……変な動きしてますよ?」

「はっ。」

「そこまで悩むことですか……?」

「立場を入れ替えて考えると分かりやすい気がする。」

 

洗面所、或いは脱衣所。

その片隅に置かれているのは結構大型の洗濯機だ。

三人だけで使うには大きすぎるような気もしていたけど……お客様が来ることを考えれば。

そういう事も考えないといけないんだな、と一人勝手に勉強していたりする。

 

「あ、将臣さん。色移りも考えて下さいね。」

「あ、あぁ……ごめん。俺そこまで分からないや。 気をつけたほうが良いのある?」

「そうですね、基本は真っ白のものと柄が濃いものは避けて……。」

 

まあ、そこでも迷惑を掛けてしまったわけだけど。

大体洗濯物はポーイと全部まとめて突っ込んで洗ってたのが実家。

だから色移りなんかは殆ど気にしたことがなかった。

……一人暮らしするならこの辺りも勉強しなきゃいけないのか。

するかどうかは別だけど。

 

「良し、後は終わったら干すだけですね。」

「意外と気にすること多いんだな……。」

「気にする人は本当に気にしますからね~。特に神事の物なんかは気をつけてます。」

「ああ、確かに。」

 

ごうんごうんと廻る洗濯機。

そんな前での、二人での他愛もない質問、お喋り、意思疎通。

 

「ふと思ったんだけど、加護の宿る……忍者装束とか巫女服?」

「ああ、祟り神退治の時の服装ですね。」

「それが破れた場合って加護とかどうしてるんだ……?」

「多少なら問題有りませんけども……そうですねえ。アレは一式全てが――――。」

 

その場でのお喋り、雑談。

そんなものが楽しくて。

 

気付けば、時間がかなり流れて……茉子ちゃんが慌てて準備を始め。

俺も同じように慌ててしまって。

ドタバタとした昼前の時間になってしまったけれど――――。

 

お互い、笑いながら過ごせたのだから。

良かった、ということにしておこう。

 

「…………むぅ。」

「あの、芳乃様……?」

 

ただ一人が不機嫌になってしまったのは…………俺が悪かったです、はい。

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