恋心、想花の如く。   作:氷桜

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日常描写は書いてて楽しいが書いてると何か砂糖を求めたくなる。
一人一人を活かすには大事な描写なんですけどね。 そんな感じの話。


<Chapter2-1-5>

 

<Chapter2-1-5>

 

 

ざばぁ、と。

全身を暖め続けていた湯から立ち上がった。

 

(絶対これ普通の家に設置する風呂じゃないよなぁ……。)

 

ちらり、と見るのは先程まで入っていた湯船。

檜とかなのだろうか、正直そこまで詳しくはないんだが。

何度か入ったことのある、志那都荘の温泉にも勝るとも劣らない。

……多分だが、祟り神関係なんだろうか。

そんな予感だけはしているのだが。

 

(流石に水垢離とかまでやってるとは思えないしなぁ……いや大事なことではあるんだけど。)

 

精神を、肉体を清める神事の一環であり。

同時に修行としての意味合いもあるとかそんな感じだった筈の水垢離。

まあ、やるならこの風呂場になるのだろうか。

そう考えて、少し想像して。

慌てて首を振った。

 

(余計なこと考えるな俺ェ!)

 

ただ、そうやって祓えないのが煩悩というもので。

浮かんできたのはついさっき入っていたはずの女の子二人。

ついでに言えば一人は色々と肌の感触を服越しに知ってるから余計にだ。

明日の朝の仕込みがあるから、ということで普段よりも長く残っているらしいんだけど。

 

(柔らか……じゃない!)

 

急ぎ脱衣所へ。

着込み、頬を張って外へ出る。

多分ぱしん、といういい音が響いた気がする……誰も来ないなら大丈夫だな。ヨシ。

ぎしりぎしりと廊下を進み、途中でリビング……というよりは冷やしていたペットボトルを取りに冷蔵庫へ。

障子戸を開ける前に、テレビの小さい音がしていた。

 

「茉子はこの曲どう思った?」

「あんまり合いませんねえ……芳乃様は?」

「私も。」

 

……音楽番組でも聞いてるのか?

ざらり、と戸を開けば向けられる視線が二通り。

座布団に正座……を少しだけ崩している芳乃ちゃん。

その隣で、テレビを眺める茉子ちゃん。

 

「お風呂頂きましたー。」

「あ、将臣さん。 丁度いいところに。」

「?」

「ちょ、ちょっと茉子。」

 

ちょいちょい、と誘われて。

近付いてみれば、指で指された先はテレビ番組。

余り見覚えのないそれは、今の流行りの曲というテーマの音楽番組だった。

 

「都会って、今こんな曲が流行ってるんですか?」

「あー、そういう?」

「ワタシ達には合わなくてですね~。」

「……どーだろ、俺もあんまり音楽とかに詳しいわけじゃないしなぁ。」

 

一応流行ってる曲とかは買い物に出たりすれば耳に挟むことも多いけど。

少なくとも今流れてるのは初めて聞いた。

……というか、出てる出演者もほぼ知らないんだがどうなってるんだ?

 

「……なあ二人共、これ何処の番組?」

「え、知らないんですか?」

「俺は知らないな……。」

 

番組名を聞いて、電波が入りにくい中苦労しながらスマホで調べてみる。

ええと、この番組だから……うわ。

 

「…………。」

「あの、どうしました?」

「将臣さんの顔がなんだか怪しいんですよねぇ。」

「あー…………地方番組過ぎるって言って通じる?」

 

普通に調べて出てくる範囲。

ただ、俺の住んでいた場所。

「穂織」から見れば都会で見たことがないのも道理で、地方番組としてやっているから。

……それで都会で流行ってる云々は詐欺じゃないのか?

都会ってどこから見て言ってるんだよ。

 

「少なくとも俺の住んでた場所じゃやってなかった番組だな……。」

「……え、じゃあこれの都会って。」

「何処でしょうかね本当に。」

 

……あ、二人共固まった。

まあそれもそうか、この辺だとちょっとした情報を仕入れるのも一苦労だろう。

漫画とかを買うにしても……多分あのコンビニくらいか?

本屋とかそういやあるかも覚えてない、後で廉太郎にでも聞いてみよう。

 

「俺の実家の方だと……あー、何だろうなぁ。 どういう曲、って言えないからなぁ。」

「と言いますと。」

 

ずい、と近寄ってきたのは茉子ちゃんだった。

芳乃ちゃんは少しずつ再起動して……それでも音楽番組見てる。

耳は此方に向けてる様子だけど。

 

「近い近い近い!」

「逃げることはないと思いますけどぉ?」

「逃げるよ!?」

 

髪からいい匂いしたりするし!

これでも青少年だって自覚はあるんだからな!?

 

「こほん。 と言っても茉子ちゃんだって持ってるだろ、スマホ。」

「?」

「いや首傾げました?」

 

冗談だよな!?

 

「いえ、普段殆どそういう用途で使わないので……。」

「あ、ああ……そっちか。なら俺のでいいか。」

 

極端に言えば電話さえ出来れば言い、と割り切ってしまっているタイプなんだろう。

……まあ、そういう発想に至る理由の一端に関わっている訳だが。

完全に()()()()()()から開放された時、どう変わるのかがちょっと見てみたくなったりした。

 

「ほら、芳乃様も見ませんか?」

「わ、私は……。」

「芳乃ちゃん好みのもあるかもよ。どういうのが好き?」

「…………でしたら。」

 

テーブルの上。

一つの小さなスマホを囲むように、三人で動画サイトをああだこうだと言いながら見ている時間。

 

「あ、これは好きですね~ワタシ。」

「へえ、確かこの人のアルバム出てるんじゃなかったかな。」

「……このサイト見られるように、契約内容変えるか悩みますね。」

「茉子ったら。」

 

小さく笑いながら、見ている今。

何だか。

有り得なかった、昔にも同じようなことをしていた――――そんな気分になって。

 

その日は結局、茉子ちゃんは泊まっていく事になったのだった。

夜遅くまで見すぎたな、全員反省。

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