恋心、想花の如く。   作:氷桜

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原作だと切っ掛けになるチャプター。
どっちかというと今作の場合はオカルト偏重チャプターかなぁ。


<Chapter2-2>
<Chapter2-2-1>


 

<Chapter2-2-1>

 

 

携帯が数度振動して。

昔に向こうで入れていた曲の始まりが流れ出すくらいで手を伸ばして止めた。

 

「ん、んん…………。」

 

半目で時計を見れば、()()()()()()()()()――――けれど、余裕のある時間帯。

にも関わらず眠気が消えないのは、恐らくは昨日の祟り神祓いの疲労が残っているからだと思う。

 

「ご主人ー?」

「起きてる、起きるよ……。」

 

布団の中で一度伸びをして、そのまま起き上がる。

普段の如く、と言って良いのか。

ムラサメちゃんが起こしに来て、腹の辺りに乗っているような状態に慣れてしまった今は大分危険だと思う。

まだ若いし、朝の生理現象対策も中々出来てないんだけど……。

 

「しかし不運じゃのう、学校が始まる前日にまた祟り神とは。」

「本当に発生が不定期すぎるよなぁ。」

「まあ、神というものは本来自由なものじゃしなぁ。」

「土地神様の使いがそんなこと言って良いのか……?」

 

もぞもぞとしていれば、少しずつ眠気も晴れていく。

今までと同じ生活を続けるか悩んだけれど、今日だけは自分の意志で走るのを取り止めた日。

学校に通う以上、生活の流れを今日一日で把握してから明日以降に反映したかったから。

走るのをやめないにしても、戻ってきたら汗だけでも流さないと多分気持ち悪くなってくるだろうし。

その辺りを考えて、芳乃ちゃん茉子ちゃんと(多分途中まで)登校することを視野に入れると時間の再認識は必須。

祖父ちゃんにもお願いしなければいけないし…………一応、軽く制服を買いに行く時に話だけはしておいたんだけど。

 

今までは私服……というよりも「人の家」という印象が強かったけれど。

春休みを共に過ごして、「お世話になっている家」へと俺の認識が1段階進んだ気がする。

 

「さて、一応……。」

 

上から退いてもらい、立ち上がって。

服――――上着を脱いで、右の腹部の辺りを確認する。

見える範囲では微かに痕になっている程度だし、問題はないと思うけど。

 

「ムラサメちゃん、背中側見てくれる?」

「うむ。」

 

くるりと背中を見せれば、視線を感じる。

……見られている感覚を感じるんだけど、何でか俺以外に触れないんだよな。

良く分からない。

 

「少し触れるぞ。」

「うん。」

 

指先の感じが皮膚の表面を擦って、正直に言って擽ったい。

それと同時に思うのは、細い指なんだなぁという当たり前な感想だった。

 

「うむ、パッと見る限り問題なさそうだ。若干痕はあるが、すぐに消えてなくなるだろう。」

「そっか、良かった。」

 

昨日のは……多分運が悪かった。

茉子ちゃんが攻撃を受けたところが丁度木の根が出ている所で、バランスを崩したのを支えようとしての追撃。

咄嗟に叢雨丸で受けきれたから良かったけれど、下手に失敗していたら二人共大怪我していたかも知れない。

ただ、昨日の流れで何となく朧気に感じていた疑問に答えが出た気がする。

 

「そういやさ、ムラサメちゃん。」

「ああ、昨日言ってたことか?」

「そう。俺の気の所為かも知れないけど……()()()()()()()()()()よな?」

 

元々呪術的な意味でも、術者の才能やら恨みの深さ次第で効果なんかは変わったりする。

にしても、朝武家が数百年にも渡って呪いを鎮め、祓っているにも関わらずずっと出現し続けている。

『同一の強度を保ちながら一定周期で生み出し、長期的に苦しめ続ける』……みたいなものを考えはした。

ただ、昨日の一撃。

少なくとも前々回の個体よりも一撃の威力が重かったのは間違いない。

感覚的に麻痺してるのか、或いはまた別の理由があるのか。

俺が言及するまで、二人はそれに気付いていないような素振りで…………ああいや、()()()()()()()は薄っすら気付いていたか?

 

「そうじゃな。昨日ご主人が眠った後で神力を精査してみたが……確かに、減少量に差異があった。」

「それはアレか?祓うのに必要なエネルギー的な?」

「ううむ、言語にするのは中々難しいんじゃが……吾輩の疲れ?みたいなものと考えてくれると有り難い。」

「ああ、どれくらい疲れたかの感覚的な……。」

 

明確に数値化出来るわけではない。

ただ、そういう可能性があるのなら……その差を詰めることで一歩進めるんじゃないだろうか。

そんな感触も別にある。

その場で立ち止まり続ける対処療法も大事だけれど……方向性を少しでも見出したかった。

 

「それはそうとご主人よ。」

「何?」

「上半身と下半身の差が酷すぎやしないかの。いや、腕周りは少しだけマシになってきているように見えるが。」

「酷くないか?」

 

いや自分でも自覚はしてるがストレート過ぎるだろ。

その辺考えて今トレーニングだってしてるのに。

というかそれはムラサメちゃんだって知ってる癖に。

 

「いや、ご主人が頑張ってるのは知っとるぞ?それでものう。」

「比較対象誰だよ……。」

「昔見たことがある人物やら……玄十郎かの?」

「祖父ちゃん比較対象にするのはやめてくださーい。」

 

本当に年齢に逆らうくらいにがっしりしてるし。

アレは素直に尊敬するレベルなんだし。

……俺もずっと続けてればあんな感じになれたのかなぁ。

 

「いつまでも呆けてないで、そろそろ着替えないのか?」

「最初に話振ってきたのそっちなのになぁ。」

「吾輩は良いのじゃ。」

「そういう態度似合いませんぞよ。」

「もう一度言ってみろご主人よ。」

 

おろし立ての制服に手を伸ばしながら。

周囲から見れば、独り言を言っているようにも見える光景。

……ただ、目の前にいるその少女と雑談をしながら。

最後に頭に手を伸ばす。

 

そんな日常にも、慣れつつあった。

 

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