恋心、想花の如く。   作:氷桜

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話の展開が遅くて申し訳ない……。


<Chapter2-2-2>

 

<Chapter2-2-2>

 

 

「よく似合っているよ、将臣くん。」

 

着替えてリビングに足を運んだ時。

珍しく其処にいるのは安晴さんだけだった。

 

「有難うございます。でも、こういう制服を着るのは初めてなんですけど……間違ってたりしません?」

「うん、大丈夫。元の学校ではどんな制服だったんだい?」

「学ランでしたね。だからなんというか、かっちりした格好だとばかり思ってましたけど。」

「あはは、確かに少し特殊かもしれないね。でも、僕もその制服を着て通ったんだし……その頃から変わってないみたいだから。」

 

いやー懐かしい、となにかを思い出すような表情。

何を思い浮かべてるのまでは分からないけど、少しだけ……寂しそうに見えた。

 

「安晴さんは、ずっと穂織に?」

「大学に行くために一度外へは出たよ。神主の勉強をしにね。」

「ああ……あんまり詳しくはないんですけど、神主も資格がいるんですよね。」

「そうだね。神職資格って言うんだけど……住み込みでの実習とかもあったりするんだ。」

「しっかりしてるんですねえ……。」

 

実際の経験者の話は、軽く調べただけの俺にとって新鮮だった。

はぁ、と聞きながら。 ふと、気になったことが一つ。

 

「あれ……もう、その頃には神社を継ぐことが決まってたんですか?」

「そうだね。秋穂……芳乃の母親の名前なんだけど、彼女と僕は幼馴染でね。」

「幼馴染ですかぁ……。俺の周りだとあんまり聞かないフレーズですね。」

 

…………俺の場合は幼馴染って定義で良いのだろうか。

何と呼んで良いのか分からない間柄だよな、と思いつつ彼との話を続ける。

 

「まあ、僕等はずっと一緒にいたからね。中学に上がるくらいにはお互いを意識してたと思う。少なくとも僕は。」

 

少しだけ、目が開くように見えた。

 

「朝武の家は知っての通り由緒正しい上に、事情が事情だろう?だから、何よりも血筋を残すことを重視しているわけだ。」

「まあ……そうでしょうね。」

「だからね。芳乃くらいの歳になれば婚約者がいて当然なんだ。」

「……随分と早いですね。」

「まあ、将臣くんを婚約者に出来たのもそういう都合もあってからだからね。卒業と同時に子供を産むことだって珍しくない。」

 

浮かんだのは芳乃ちゃんの母親姿。

……少し想像して振り払った。

大分キテるんだろうか。

 

「秋穂は……20代後半だったから。慣習に従えば大分遅い部類だね。」

「でも……それくらいなら普通に思えるんですけどね。」

「跡を継ぐ者がいないと困るし、周りから突かれてもいたけどね。」

「あれ。 ってことはひょっとして、芳乃ちゃんも?」

「ああ。今までに何度もお見合いの話は持ち込まれてる。ただ、あの性格だろう?」

「目に浮かびますね……。」

 

『嫌です。』

『関係ありません。』

『そういうのは考えている余裕もありません。』

 

うん。

安晴さんが断れなかったとしてもそんな感じで全部跳ね除ける姿が見える。

やはり、今の彼女の姿のほうが特殊というか……本来の姿に近いんだとは思うけど。

 

「だから、そういう意味でも……将臣くんには感謝してるんだよ。」

「いえ、此方こそ。」

「土地神様のお導きでもあったのかも知れないね。」

「かもしれませんね~。」

 

朝から、二人で小さく笑いあった。

少しだけ聞いておきたい……「呪詛」に関してのことがあったけれど。

以前に二人に紹介して貰える、と言った本職の人に聞いてからでいいと割り切った。

得ている情報に違いがあるとは中々思えないけども。

 

そんな事を思っていれば、廊下から足音。

それも二人分だから……芳乃ちゃんと茉子ちゃんか。

時計を見れば、いつもの朝食くらいの時間帯。

 

「すみません、遅くなってしまいました。」

「お待たせしてごめんなさい。」

 

そんな声を上げながら入ってくる二人の服装。

 

「…………。」

「……? 将臣さん? どうかしましたか?」

 

ちゃんと制服姿を見るのは初めてだったからこそ、口をついたのは多分本心から。

混じりっけなしに、つい。

 

「……可愛い。」

「…………ッ!」

「ひゃっ!?」

 

そんな事を言ってしまったから、二人の表情が急に赤くなる。

俺自身も、恥ずかしすぎて目線を下へ。

それでも当然のように視界に入る下半身の格好からしても、浮かぶ感想は同じ。

 

「あ、有難うございます……。」

「その…………将臣くんも、似合って、ます、よ?」

 

戸惑いながら伝えられた、()()()()()()()言葉。

制服一つをとっても女の子に褒められたことなんて無いから。

多分正直に言ってくれているんだと思うけど……どうにもそのまま受け取れない。

 

「普段の……和装に近い格好ばっかり見てたけど。」

「も、もう言わないでくださいっ!」

 

顔の赤さが破裂寸前にも見えた芳乃ちゃんが叫ぶ。

……そう言えば、髪型も普段と違う。

ポニーテール……髪を上げてリボンで止めて、それだけでも新鮮に見える。

 

「そ、そうですよねぇ……。」

 

それに応じるように、普段の余裕な部分がなくなったような口調で茉子ちゃんも答える。

髪型とかが違うわけではないけれど、動きやすい格好で統一しているようでスパッツ姿。

露出の激しさを求めてるって言うわけでもないけど……少しだけ「御洒落」に見える格好に惚れ惚れする。

 

「ええ……じゃあどうすればいいんだよ……?」

「そ、それにしても……将臣さん、ひょっとして制服がご趣味とか……? うら若き乙女の少しだけ違う服装……。」

 

何とかリズムを取り戻そうとしたのか、茉子ちゃんが普段のように頬に指を当てて呟く。

 

「ああいや、二人だからなんだけど。」

 

そしてもう一度うっかり口に出た言葉で。

今度こそ、空気が完全に固まった。

 

三者三様が顔を真っ赤にして。

そんな俺達を、安晴さんがなにか懐かしいものを見るように見上げる。

そんな、不可思議な空間となっていた。

 

……実際。

二人は相当に可愛いっていうのは事実なんだけどな。

何でこんなに恥ずかしく感じるのかと、突き詰めることは――――()()()、しなかった。

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