恋心、想花の如く。   作:氷桜

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高校ってスルーするものなんかなぁ……?
ほぼ独自設定です。ほぼ。


<Chapter2-2-4>

 

<Chapter2-2-4>

 

職員室で簡単な書類に記入して、説明を受け。

朝のホームルームの際に紹介を受ける。

がらり、と扉を開けば向けられる視線の山。

一瞬足が止まりそうになったけれど、廉太郎が何やら手をひらひらしているので気が抜けた。

 

「今日からお世話になります、有地将臣です。家の事情で引っ越してきました。」

 

極めて単純な挨拶。

余計なことを言えば言うだけ疑問に思われるし、出来るだけ口を閉ざしておく。

……そういや、学校の中で俺の事情を知ってる人って誰がいるんだ?

さっき書いた書類に住所が書いてあったが、志那都荘の物になってたし。

あの時の三人と……芳乃ちゃん茉子ちゃんを除けばいないのだろうか。

俺から確認する手段もないから……後で祖父ちゃんか安晴さんにちゃんと聞いておくか。

 

「はい、有難う。 じゃあ席はあの一番後ろの空いてる所。鞍馬君の後ろにお願いします。」

「分かりました。」

 

廉太郎の後ろか。

色々楽ではありそうだが……片肘立てた状態で返答するのはどうなんだ。

まあ、女子はともなく男子は似たような体勢してるやつは珍しくないように見える。

元いた学校も人それぞれだったし、深く考えないほうがマシか。

 

「鞍馬君も、ちゃんと面倒見てあげてくださいね。」

「分かってますよ、先生。」

「まあ鞍馬君だから心配はしてませんけど。」

 

……ただ、この評価は何だ。

学校の先生も持ち上がりで変わっていくとかで、ずっと見てきたからからなのか?

 

「さて。それじゃあ始業式です。皆さん移動しましょうか。」

 

三々五々、各々が立ち上がり式……の会場というか。

道場だった場所らしき方へ向かっていくが、俺は詳しい場所を知るわけでもなく。

 

「ほれ、行くぞ将臣。」

「案内されなきゃ知らないのにどう行けっていうんだよ……。」

「天性の勘的な何かで?」

「そんなもんがあれば楽だっただろうけどなぁ。」

 

流れに付き従うように最後の方を歩く。

ほんの少し先に見えるのが二人、同級生らしい女子生徒と話しているのが見える。

……他に友人っぽいのいたんだな。

 

「ん? 何見てんだ?」

「いやぁ……友達っぽいのいないと思ってたからさぁ。」

「お前、流石にそれは失礼だろ……。」

「ああいや、そういう意味じゃないぞ!? 敬われてるから距離取られてると思ってたってだけで。」

「分かってる分かってる。まあ、実際の所距離は置いてるぞ、あれで。」

 

見た目的には親しげなんだが……。

 

「あれでか?」

「朝武さんは一挙一動が見られる立場だからな。俺が知る限り小学生の頃からあんなんだよ。」

「へー……。」

 

ということは、あの時は……。

学校とかも全く関係ないからこそ、ああいう態度をとってくれたんだろうか。

それが今に繋がってると言うのは……少し、何とも言えない感情が湧く。

頬を指で擦りながら、そんな内面を押し込めて。

 

「ならお前は何なんだ、あの先生からの見られ方。」

「あ?俺?」

「小春ならまだ分かるんだが……。」

「酷くね?」

 

従兄だからこそある程度気楽に話せる。

特に此奴とはここ一週間くらい馬鹿話とかもしたりしたしな。

芳乃ちゃん茉子ちゃんとはまた別の方向で一番親しいと言ってもおかしくはない。

 

「いやまあ……幾つかの理由があってこそなのは事実なんだが。」

「幾つもあるのかよ。」

「ほれ、穂織の代表といえば朝武さんの家……巫女姫様だろ?」

「まあそうだな。」

 

あの扱いといい、歴史といい。

寧ろそれ以外の名前を出したら祖父ちゃんにぶっ飛ばされる。

 

「ただ、住人としての代表……というか、顔役みたいなのはそれなりにいるわけだ。」

「ああ……朝武家に仕えてた武士の家みたいな……?」

「多分お前も顔だけは見たと思うけどな、あの春祭りの時の神社にいた顔とか。」

「………………悪い、全く記憶にない。」

 

その後に起こったことで記憶が埋まってる。

まあ祖父ちゃんが神社にいた理由は祭りの運営委員だったから、って話だが……。

そもそも運営委員とかになる時点でそういう立ち位置だよな。

今まで細かく考えてなかったが。

 

「まあお前は仕方ないと思うわ。 で、そんな顔役の家の嫡男が俺。」

「いや、他にもいるだろ。顔役の家のやつなら。」

「ついでに言えば俺は志那都荘(じいちゃん)の手伝いで顔が広い。後は分かるな?」

「……既に先のことを考えて地盤固めにしか聞こえないんだが?」

「ま、そんな訳で色々と俺に押し付けられるわけだ。」

 

ただ、それをちゃんと熟してきてるからこそのその目線だろうに。

なんつーか、大人になった?

そんな気がする。

 

「ま、だから迂闊に彼女も作れねえんだけどな!」

「うわぁ……。」

「憐れむのはやめろ。」

 

そんな、雑談を交えて。

そろそろ見えてきたのが道場の入り口。

上履き、或いはサンダルに近い履物を脱いで棚に収める。

既に俺の名前が書かれているのは……有り難いと思っていいんだろうなぁ。

 

「あ、そうそう。」

「?」

 

上の学年と下の学年、それぞれに並んで開始を待つ。

……確かにこれしか生徒数がいないってのも新鮮だなぁ、なんて思いながら。

そんな俺の耳に囁くように、何かを告げようとして。

 

「……あ、駄目だ始まるな。また後で言うわ。」

 

視界の先に、少し年を取った男性が中央に向かっている。

あれが、校長……という立場になるんだろうか。

どんな話をするのか、ちゃんと耳を傾けないと。

 

そうじゃないと。

さっきから笑ってない目で見てる巫女姫様が、後でお説教してくるのが目に見えてるから。

……許してもらえるかなぁ。

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