みづはさん回。
<Chapter2-2-5>
「……全く!」
「ごめんって……。」
「あはは……。」
始業式が終わり。
今日は授業もなく解散を告げられて。
何人かが興味を持ったように話しかけてきたのを受け流した後のこと。
帰るのだろうか、と思って残っていた様子の芳乃ちゃんへ視線を向ければ。
表面上は笑顔、但し全く笑っていない目で俺のことを見ていた。
少しばかり震えが走り。
二人が他のクラスメイトに用事があるから、と告げて別れるまでは手持ち無沙汰のまま隅に。
色々と片付けとかをしている振りをしながら待つこと数分。
お怒りの様子を隠すつもりもない彼女へ頭を下げ続けているのが今。
……周りに見られていたら色々と誤解されないか不安で仕方ないけど。
「鞍馬君も鞍馬君です!」
「まあまあ、芳乃様。将臣さんを取られたからってそんな怒らなくても。」
「誰が取られたことに怒ってるんですか!?」
「まあまあ、どうどう。」
明らかに笑ってるというか、遊んでるというか。
それに気付いていない芳乃ちゃんもだが、茉子ちゃんも……なんというか。
俺の考えすぎならいいんだろうけど……。
「え、えーと……それで、帰らないの?」
「あ、そーですね。芳乃様、どうするか聞いてますよ?」
「あ、う、うんそうね。」
こほんと息を整えて。
自分が暴れている……とまでは言わないけど、普段とは違う行動を取っている自覚はあるらしい。
それを鍵にして落ち着きを取り戻して。
「この間言っていた……陰陽師の話覚えてる?」
「ああ、うん。」
「その人、この学校の嘱託医をやってるの。この間の崖から落ちた時も面倒を見てくれたお医者さんでね。」
「丁度いいから今日紹介しよう、って話になってるんです。恐らくはもう少し待てば来ると思うんですが。」
「成程……。」
確か色々調べてくれてる人、だったよな。
しかし陰陽師が医者。
……間違ってはないんだろうけど時代の移り変わりが凄いな。
「まあ、あまりに遅くなるようでしたら連絡してまた後日になりますが。」
「その辺りは任せる。紹介してもらう側で何か言えると思ってもないし。」
そんな俺の返答に何かを言いたそうにして、飲み込んだ。
……最近、何となく察し始めたけど。
芳乃ちゃんも茉子ちゃんも、俺が下手に出すぎる行動を妙に嫌う。
その理由までは――――流石に、分からなかったけど。
「あ。そういえば芳乃様、来週末くらいに一度電気屋の方に出向きませんか?」
「私は別に構わないけど……なにか買うの?」
「こないだの動画の事があったじゃないですか。それで携帯毎更新しようと思ってまして。」
「ああ……私のも古いものね。」
時計、というよりも連絡が無いか携帯を開いたことで何かを思い出したように呟く茉子ちゃんの声。
こないだの……というと、アレか。 三人で観たやつ。
変えるのは別に良いと思うけど……。
「えーっと、どういうのが良いとか分かるの?」
「大体はおじさんに聞けば。ワタシ達が外に出難いのは分かってますから、契約は何とかしてくれますし。」
「……一応、俺も行くよ。邪魔になるだけかも知れないけど。」
そう告げるのと同じくらいか。
廊下の方からかつ、かつと人の歩く音がした。
「そうですか……って、来ましたかね?」
「多分そうだと思うけれど。」
「まあ、みづはさんも忙しいですからねえ……。」
みづはさん、というのがその人の名前だろうか。
どんな人なのか、とか詳しく聞こうと口を開き。
がらり、と扉が開くのは同じタイミングだった。
「申し訳ない、待たせたみたいだね。」
入ってきたのは白衣を着た女性。
眼鏡を掛けて胸のボタンを幾つか外しているのが目立つ、そんな人だった。
研究者、とかそんな言葉が似合いそうだな……なんて感想が浮かぶ。
「みづはさん。」
「いや失礼。急患が入っててんやわんやしてたところでね。」
「それなら連絡くらいくれれば良かったんですよ?」
「間に合うとは思っていたんですがね、巫女姫様。本当に申し訳ない。」
親しげに話す二人。
……陰陽師、で古くから研究してるってことは。
「……あの?」
「ああ、失礼。私は知っているが……君からすれば初めましてだものね。」
腕を組んだ上で、片目を瞑り軽いウインクのようなポーズ。
腕を組む姿が妙に似合う。
「改めて初めまして、有地将臣君。私は駒川みづは、この町で開業医を営んでいる。」
「改めまして、有地将臣です。ええと……みづはさん、で大丈夫ですか?」
「構わないよ。駒川、とだけ呼ばれても誰か分からなさそうだ。」
なんというか、接しやすそうな人で良かった。
と、そうだ。
「そういえば、山の時は看てくれたとかで。遅くなりましたがありがとうございました。」
「ああ、あの時か。構わないよ。それが私の仕事だしね。」
「それでもきちんと礼は言いたかったので。」
「ふぅん。流石は玄十郎さんのとこの子って感じかな。」
当然のように出てくる祖父ちゃんの名前。
まあ、旅館と診療所ならそりゃ当然のように密着してるよな。
病院なんて無いんだし、地域密着型の医者……となると、多分彼女しかいないんだろうし。
「それで……将臣君。」
「はい?」
「気になることがあるとか、巫女姫様たちから聞いたんだけど――――ここで話せる内容かな?」
視線を二人へ向けて。
……どうするか、少しだけ悩んで。
逆に、二人にこう問い掛けた。
「ええっと……二人共。多分俺が聞きたいことって相当失礼な部分があるかも知れないけど……大丈夫?」
「内容によります。ですので聞かせて下さい。」
「ワタシは芳乃様に任せますので~。」
「それが怖いんだけどな……。」
まあ、仕方ないか。
最悪は二人が途中で止めに入るだろうし。
万が一にでも、他に誰かに聞かれないように声を抑え。
「
ほう、と。
瞼を上げて、面白がる姿があった。