恋心、想花の如く。   作:氷桜

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茉子視点。
原作より人間っぽい視点あっちこっちに出すようにしてるから感情乱高下凄そう。


<Chapter2-2-8-M>

 

<Chapter2-2-8-M>

 

 

少しだけの時間が経って。

そろそろ寝る、と。

そんな言い訳じみた言葉を残し、足早に彼から距離をとった。

 

顔が、頬が、胸が熱い。

その場所にいたら、何を言ってしまうか分からない。

多分それは、自己防衛の反応だったのだと思う。

 

見えない位置、曲がり角まで来て大きく息を吐いて。

代々伝わる、精神を落ち着ける習慣行動(ルーティーン)で無理矢理にでも自分を「常陸」として定義し直す。

忍びとして、主に仕えるものとして。

 

「……で、どうじゃった?」

「わっひゃぁっ!?」

「いやどんな叫び声じゃ。」

 

頭の中にぐるぐると、思考が巡っているところに背中から声がして。

叫び声を上げると同時、苦無を握ってしまったけれど……其処にいたのは、ムラサメ様。

 

「脅かさないで下さいよ……。」

「普通に声掛けただけなんじゃが。」

 

話しながらに、自分の動揺を伝えさせないように。

これ以上、気取られないようにしようとしても難しい、と。

自分の何処かが囁きながら、それでもやれるだけやってしまう自分(ワタシ)がいる。

 

「そ、それで。 どう、とは……返すようですが、どう答えれば良いんでしょうか?」

「ご主人……もそうじゃが、お前も落ち着いたのか?茉子。」

「ワタシは元々落ち着いてましたよっ!」

「どうじゃかなぁ……。」

 

言うだけ言う。

見抜かれてそうだけど、言うだけは言う。

 

「まあ……あの時に伝えなかったのは間違いではなかったと思ってます。それは、芳乃様も同意見です。」

「成程、それで?」

「でも……ずっと伝えなかったのも不味かったかなぁ、なんて。」

「難しいからのぅ……特に、ご主人の立場は。」

 

部屋で何かをしている、考え込んでいる。

そんな事を教えてくれたのはムラサメ様。

初めは芳乃様を探していたようでしたけど……。

部屋で、何かを考え込むようにしていたとかで。

結局、何とかしてやってほしい。

そんな言葉を持ちかけられたのは、ワタシで。

 

「……。」

「まあ、あの調子を見れば大分復調はしたようだがの。」

 

ムラサメ様の視界の先には、未だ座って天を見上げる将臣さんの姿。

彼を視界に入れる、それだけで何かが狂ってしまう。

今のワタシは何かが崩れている、なんて。

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それでも、視線を外せないのは何でなんだろう。

 

「それで……芳乃様は?」

「先程見てきたが電灯が消えていた。もう眠ったのだと思うぞ。」

「そう、ですか。」

 

寝る前に、少しだけ話をしておきたかった。

事情を説明したこと。

将臣さんの変化。

芳乃様の、変化。

ワタシ自身の、変化。

 

移り変わり始めた全てに対して。

()()()()()()()()()()()、なんて。

そんな想像をしてしまうくらいに、変わり始めた全てについて。

でも、それは今日ではなかったらしい。

 

「何にしても――――ワタシも、将臣さんも大丈夫だと思います。」

「ほう。理由は?」

「一人じゃ、ありませんから。」

 

話していい相手がいる。

頼っていい相手がいる。

そんな事を、当たり前のことを再認識できたから。

 

「もう、寝ますね。明日は一度家に戻らないといけませんから。」

「む。詳しく聞いてみたいが……そうじゃな。寝る時間には丁度良いじゃろ。」

 

おやすみなさい、と挨拶をし。

何かがあった時に泊まる部屋へ足を運んだ。

普段なら、芳乃様の部屋に泊まるのに。

そちらを選んだ理由も、自分ではよく分からずに。

 

布団の中で。

自分の下腹部に疼いたように感じた、何かの感触は。

努めて、抑え込んで。

眠ったような、眠れないような。

浅い夢の世界で――――ワタシは、普段は見ない夢を見た。

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