どんな説明しようね、と相談する話。
……全く嘘は言ってない。ただ何故そうしたいのか、を言ってないだけ。
<Chapter2-3-2>
安晴さんに勧められ。
何も口にはしないけれど、横目の冷たい目線を向ける芳乃ちゃんに従い。
何故か未だに落ち着かない様子の茉子ちゃんにタオルを借り、シャワー……がないから、汗だけを流しに行く。
正直に言ってしまえば温泉だからゆっくり浸かりたいような気もするけど……そんな時間があるわけもなく。
というか夜にすればいいだけの話だから。
「すいません、お待たせしました。」
「いやいや、それ程でもないよ。」
「お父さんはもう少ししっかり言って良いと思うけど。」
「あの……ごめん、俺なにかしたかな?」
三者三様の視線が飛んでくる。
苦笑い混じりの温和な視線。
冷たい視線。
普段とはなにか違う、『女の子』のような視線。
「……何もしてないっていうんですか?」
「いやしてないぞ!?」
「芳乃。ちゃんと言わないと分からないと思うよ?」
はぁ、と一息置いて。
視線を茉子ちゃんに向けながら一言。
「…………茉子に、何かしたんですか?」
……ああ、そういう事か。
確かに普段と違う状況がずっと続いてるなら不思議に思うよな。
普段通りの笑顔ではあるんだけど、誂ったりする余裕が一切無さそうな状態だし。
とは言え。
「いや大真面目に何もしてないんだけど。」
「怪しい……。」
じろり、と見られましても。
精々昨日の晩話したのと朝偶然会ったくらいだし、何かしたわけでもないし。
流石にそこまで疑われると此方も悲しいんだけど。
「……芳乃様、そこまでにしませんか?」
「でも、茉子。」
「
「本当に?」
「と言うかですね。
「それは…………そうね。」
「いやそこで納得するのか!?」
だったら最初から茉子ちゃんに聞けばいいだろうに。
じっとりとした目線を向ければ、ぺろりと舌先を唇から出していた。
少し胸が動悸しつつ、抑え込んで小さく溜息を吐いた。
「はは、芳乃は将臣君に取られたくないみたいだね?」
「お父さん!」
白い肌を薄く桃色に染めながら、安晴さんに大声を浴びせる。
……こういう所見ると親子だよなぁ、って思うのは何でだろうか。
互いに冷めきってるよりは、ずっとマシだと思うからか。
或いは――――昨日聞いた話のように、殺し合うなんて以ての外だと分かっているからなのか。
二人の姿を眺めていれば、横からすっと手が伸びてきた。
そちらを向けば、茉子ちゃんが手を伸ばしている姿。
「お代わりはどうですか?」
「ああ……そうだな、少し貰っていい?」
「はい、お待ち下さいね。」
にこりと浮かべる顔。
そんな姿は、先程までの何かが違うものではなく普段通りで。
だからこそ、何処か小さく安心した。
(ええと……。)
ふと、朝方の廉太郎からの忠告を思い起こした。
……時計を見れば、まだ少し余裕はある。
だったら、今話を持ち出してしまっても良い……か?
一応、言うだけ言っておこう。
「あの……三人とも、ちょっといいですかね?」
そんな声を上げた所、三者三様の視線が此方に向かう。
「?」
「ああ、勿論構わないけれど……何か困ったことでもあったかな?」
「困ったと言うか、どう説明して良いものなのかの意見が欲しいことがありまして。」
「意見、ですか。ワタシで宜しければ。」
どうぞ、と持ってきて貰った茶碗に半分ほどの白米。
有難う、と答えながらテーブルに置いて。
「今朝方廉太郎から忠告を受けたんですけどね。」
「廉太郎……というと、鞍馬君からですか?」
「そう。まあそれを受けて俺も思ったんだけど。」
詳しい忠告の内容は……なんだろう。
今の段階では気恥ずかしくて言える気がしない。
さっきまでの言ってやろう、という気分がどこに行ったのか分からないが。
……通学途中に二人に言えるように努力しよう。
「俺と芳乃ちゃんと茉子ちゃん、クラスメイトに説明するならどんな関係が良いんでしょうか?」
「ああ……それもそうか。婚約者、という名目上であるだけだし、表立って言うには
根回し。
つまりそれを本気にするくらいの準備はある、と。
……やめよう、芳乃ちゃんに目線向けるの。
多分今見たら顔が赤くなってしまう。
「友人?」
「と言うには距離が近いし、理由を聞かれると思うよ?」
「そうですねえ……まあ、そのまま言うとか?」
「そのまま……と言うと?」
各々が自分の意見を言い合う中。
茉子ちゃんが指を立てて、そんな事を呟いた。
「玄十郎さんの孫で、鞍馬君の従兄妹。その関係で建実神社……というよりはワタシ達ですか。とは顔見知り。」
「まあ、その通りね。」
「ですよね。それで転校してくることになったけれど、昔からの縁を利用してワタシ達が面倒を買って出た、と。」
……確かに、それなら納得できなくはないけれど。
「だったら廉太郎か小春が見るもんじゃないか?って言われないかな。」
「少なくとも鞍馬君は学校外じゃ忙しいですからね、寧ろ納得されると思いますよ。」
「……そこまで?」
「女の子の間で噂になるくらいには?」
「そうなの?」
何処から聞いてきたのか分からない情報を告げる一人。
全く知らなそうな素振りをしている一人。
……この差とは一体。
「そりゃもう、ワタシは忍者ですからね。」
「あの、俺何も言ってないはずなんだけど。」
「目は口ほどにものを言い、ですよ。 将臣さん。」
……そうですか。
降参、とばかりに。
目の前のご飯を口に入れた。
もうすぐ学校だし……折角の手料理なんだし。
毎朝とは言っても、一粒残さずしっかり食べたい。
それくらいは、当然の礼儀だから。