恋心、想花の如く。   作:氷桜

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原作の気配何処行った?な回。
色々不穏な感じ。

*UA1万突破しました、有難うございます。


<Chapter2-3-6>

 

<Chapter2-3-6>

 

 

そんな行動を繰り返しながら学校を出て。

人影が見え始めるくらいには、普段と変わらない『巫女姫』の仮面を纏っていた。

 

「巫女姫様だ。」

「学校の帰り際かの?」

「春祭りの舞素晴らしかったですよー!」

 

会釈し、笑顔を浮かべ。

有難うございます、と呟く三歩先。

 

「誰だ彼奴」なんてやっと言われなくなってきた俺だけど。

それでも呼ばれるのは「玄十郎さんのとこの子(じいちゃんのまご)」という言葉ありき。

「俺自身」を見て欲しいなんて言うつもりもないが……。

誰かのところの、どこそこの。

そんな大前提が成り立っているのがこの街だからこそ。

余計に、芳乃ちゃんや茉子ちゃんは立場から抜け出せなかったんだろう。

 

「……朝武さん。」

 

少しだけ速度を落とし、隣り合う状態になってこそ聞こえるような小声で囁く。

志那都荘への道はここからだと民家も殆ど無くなる、観光客が商店街へと行き来するための場所だ。

先程まで見えていた影は消え、隣を歩む少女と二人きり……にも関わらず、呼ぶ名前は外向けのもの。

 

「芳乃、でも良いんですけど……変な勘繰りされますかね?」

「少なくとも今は……多分?」

 

祖父ちゃんからか、或いは安晴さんからか。

「そう呼ばれる理由」が周知され始めれれば別だけど。

……丁度いいし、今日聞いてみるか。

周囲から見て不自然ではない程度に歩く速度を並べ、視線を介さずに言葉だけを呟く。

 

……妙な技術ばっかり身に着けてるな俺。

これもムラサメちゃんとの特訓の成果だから何とも言えない。

 

「それで……どうしました?将臣、くん。」

「そう言っておいてそう呼ぶんだ……まあ良いけど。少し急ぐか聞こうと思っただけ。 戻りの予定は?」

「お父さんからの連絡だと……()()()()()()()()にしろ、と。」

 

それは……いや、薄々気付いてはいたが穂織の外の人間か。

日が落ちた後まで神社に残ろうとする客は、それがどうしても必要か……そもそもその事実を知らない相手で。

知らない相手なら急にやって来るような理解し難い行動を取ることも考えられる――――考えられてしまう。

 

「祟り神、大丈夫かな……。」

「少なくともまだ出てはいませんが……。」

「それでも、出る可能性があるだけで不味いだろ。」

 

考えるだけ無駄なのに、異様に悪い方向へと意識が向いてしまう。

もし、もし、もし。

仮定でしか無いのに、その方向へ。

周囲の影の色が濃くなるように、『もしも』の想像が深くまで潜ってしまう直前。

 

()()()。」

 

ぱん、と耳元で小さく音がして我に返った。

そちらを向けば、両手を合わせて打った様子の芳乃ちゃんの姿。

さあ、と首筋を風が走って――――先程までの考え事が霧散する。

 

「あれ、今……え?」

「余り、考えすぎないで下さいね……もうすぐ、志那都荘ですよ。」

「芳乃ちゃん、何を……?」

 

一瞬前までの自分が嘘のように。

混乱しながら、一歩先を進む芳乃ちゃんの後を追う。

志那都荘の入り口では、いつかも見た初老……というには些か若い、働き盛りくらいの女性がいた。

 

「こんにちわ。」

「あら……巫女姫様? どうかなされたんですか?」

「玄十郎さんに少し用事がありまして。居られますか?」

「先程お戻りになられたばかりです。 大旦那様を呼んで参りますから、少しお待ち下さい。」

「すいません、お願いします。」

 

俺のことを置いて……というよりも質問されるのを避けるように。

芳乃ちゃんは、本来俺がしようとしていたことを口にする。

……いや、見ているだけじゃ駄目だ。

 

「……将臣君。大丈夫ですか?」

 

心配そうに見つめられて。

護られるだけが嫌だから、自分で決めたことなのに。

自分の意志で言わなきゃ何の意味もない。

 

「……ごめん、何か変な感じだったみたいだ。」

「みたいですね……急に、ですよね。」

「うん……何だったんだろ、あの感じ。」

 

自分でも良く分かっていないというより、理解しきれていない事。

何でこんな事が起こったのか、深く考えすぎるのもまた不味いと直感していて。

内容に触れないようにする芳乃ちゃんは、何かを理解しているようでもあり。

ただ()()()()()()()()わけでもない――――そんな気がしていた。

 

「繰り返しますけど。」

「分かってる、今は考えないほうが良いんだろ?」

「はい。……少なくとも、神社に戻るまではやめておいて下さい。」

「それって……?」

「戻ったら……説明、します。」

 

言おうとするその言葉を抑えながら、それでもはっきりと。

言語化してくれた彼女へ。

ありがとう、とだけ告げた。

当たり前のことです、なんて返ってきて。

 

お互いの顔を見ていないで、入り口を見つめているのに。

微笑み合っているのが分かったような気がした。

 

「……お待たせしました。」

 

そんな事をしながら待つこと少し。

やや足早に顔を見せた祖父ちゃんは、何処か少し機嫌が悪そうだった。

 

「いえ、此方こそ急に申し訳ありません。」

「いえ……将臣、お前も来ていたのか。」

「ああ……祖父ちゃんに頼み事があってね。」

「この間の……剣に関してか?」

「ああ。祖父ちゃんの都合のいい時からで構わない――――もう一度、教えて下さい。」

 

一度、剣の道から離れたけど。

目的が出来た……やれるだけ、やりたいんだ。

 

「ああ、分かった。具体的にいつからかは後で連絡する。」

「明日からとかじゃないの?」

 

俺としてはそう言い出すとばかり思ってたんだが。

 

「将臣……と、巫女姫様も知っておいて困ることもありますまい。」

「何を、ですか?」

「志那都荘に新しい従業員を迎え入れる事にしたのですが……未だ学生でしてな。丁度同い年なのです。」

「……従業員で、学生?」

 

立ち話もなんです、と。

中に招き入れる祖父ちゃん……互いに顔を見合わせて。

息を合わせたように、同時にその背を追い掛けた。

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