恋心、想花の如く。   作:氷桜

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変な話の後はちょっと先取りする話。
それと距離を詰めようとする話。
観光で成り立ってる以上そこまで忌避感はないんでしょうけど、多分話を通してるかどうかとか「何方が」頼んだ形なのか、とか形式には拘るイメージがあります。


<Chapter2-3-7>

<Chapter2-3-7>

 

 

ついていった先は普通の客室を超えた先。

良くある「従業員以外立ち入り禁止」の戸を超えた先にある、幾つかある部屋の一角だった。

昔穂織に遊びに来ていた頃はこの一室を借りて遊び回っていた、そんな思い入れすらある場所。

 

「一先ずは此処で。余り他のものに顔を見せて、要らぬ勘ぐりもされたくないと思いまして。」

「ですね。失礼します。」

「……失礼します。」

 

()()()()()()として扱われ。

()()()()()()として慣れ切っている。

一部の人を除けば――――『巫女姫様』というのは、彼女自身ではなく。

そういうモノとして確立しているかのよう。

 

「さて、此処にいるのは儂だけですので崩して貰って構いませんが……口で言うだけでは中々難しいですかな。」

「いえ、有り難く。」

「ええと……祖父ちゃん、さっき言ってた同級生?が入ってくるって?」

「ああ、それに関してか。廉太郎にも伝えたのだが。」

 

……何だろう、凄い曖昧な表情を浮かべてる。

祖父ちゃんがそんな感じの顔をするのなんて珍しいもんだが。

 

「彼奴が外人、観光客に声を掛けているのは知っているな?」

「ああ…………うん、まぁ。」

「その……好みのたいぷ?とやらに合致した場合、どうなるかが読めなくてな。」

「従業員って立場とかが色々絡むから、ってことか。」

 

小さく頷く姿を見て、確信する。

信用はしないんだろうか、とも思ったが。

まあ……本気で好きなタイプの女の子だったらどうなるか読めないのは同意する。

()()()()大丈夫だと思うけど、セーフティが欲しいと。

単独で合わせて平気か、って意味で心配されるのはちょっと可哀想と思わなくもないが。

 

「それにな、巫女姫様……いや、芳乃様にも知っておいて頂きたかったというのもある。」

「ああ――――()()()()()()、ですね。はい、そちらの方は私と茉子で。」

「ご迷惑をお掛けします。」

 

ただ、此方に関して……祖父ちゃんが芳乃ちゃんに伝えようとする理由まではわからない。

俺越しに、とかの形ではなくきちんと話しておく必要性がある?

 

「不思議そうな顔だな、将臣。」

「まあ……転校生が入ってくるだけでそこまで仰々しくする?と思わなくはないかな。」

 

俺だって立場だけで言えば転校生だったし。

当然のように受け入れられた感じはあったから、違和感はなかったけど。

 

「そうだな……この辺りの土地の大半が朝武家の物だというのは知っているか?」

「え。」

「名義上は、ですけどね。」

 

確かに、アパートみたいな集合住宅昔から見ないとは思ってたが。

特にこういう観光地なら何処か裏手に出来てもおかしくないイメージがあるし。

それは……そもそも、土地が売られてないからってことか?

 

「穂織に住もうとする人間は、私の家に多かれ少なかれ関係する……っていうのはそういうことなんです。」

「今回は志那都荘(ここ)に寝泊まりする形で雇うとは言え、筋は通す必要があると思わんか?」

「……まあ、うん。 じゃあ、仮に穂織に俺が家を建てるとするなら。」

「私の家から土地を借りる……という形になると思います。勿論、将臣君なら別の扱いはされると思いますけど。」

 

はぁ、と納得した。

土地長者……なんて口が裂けても言えないし、言うつもりもないが。

確かに今でも穂織の主なんだな、朝武家は。

 

「それにだ。」

「まだなにかあるの?」

「やってきた先に誰一人知り合いがいない……というのは辛いと思わんか?」

「確かに……。」

 

どういう形で来ることになったのかは……まあ、後で聞くとしても。

先んじて知り合いを作ってやろう、という感情は分からない訳がなかった。

 

「実際やってくる時になればまた連絡はするが、一度は顔合わせを頼むことになると思う。構わんな?」

「分かった、その時は言ってくれ。」

「うむ。」

 

まだ用事が残っているから失礼する。

帰る時はそのままにしてくれて構わない、と言い残し。

祖父ちゃんが部屋から去って、取り残されたのは俺達二人。

時計を見れば、未だ日が暮れ切るには早い時間帯で。

 

「……どうしようか。」

「どうしましょう。」

 

時間を潰せるものも無く、互いに過ごしやすい形に身体を崩しての一言。

勉強でも、なんて思ったけど時間的に中途半端になりそうだし。

それもこれも帰れないのが悪いんだけど。

 

「芳乃ちゃんとしては何時頃には戻っておきたい?」

「具体的な時間で言われなかったから……夕御飯前まで、って考えれば。」

「だとするとやっぱり時間空くよね……。」

「うん……。七時くらいって考えても。」

 

指折り数えて、何が出来るのかを考えてみる。

さっきの事は神社に戻ってから、と言われているし後回し。

時間的に何処か遠く……例えばコンビニに行くには心許ない。

行けるとしたら、ここから近い場所になるけど。

 

「あ。」

「?」

 

あったな、時間潰せそうで近い場所。

問題は芳乃ちゃんの好き嫌いだけなんだけど……朝食を見てれば平気か?

大概甘党だし。

金銭的にもまだ余裕はある。

毎月一定額が振り込まれるのと、祖父ちゃんからも渡されてるからまだ懐は暖かいし。

 

「芳乃ちゃん、もう一箇所寄り道していい?」

「私は構いませんけど……?」

「じゃあ……うん、多分気に入る場所を紹介する、けどその前に。」

「?」

「俺に対しても、茉子ちゃんくらいの態度で接してくれていいから。」

 

前々から少し気になってはいた。

誰に対しても接し方を余り変えない茉子ちゃんに対し、芳乃ちゃんは極端なくらいには他人と身内を区別する。

その間辺りにいるからなんだろうけど、どっち付かずに思えていたのもまた事実で。

 

「…………分かりました。努力は、してみます。」

「うん。……大変なのは、俺に見える範囲だけでも分かるから。」

 

それだけを伝えて。

部屋を二人で辞して。

向かうは――――芦花姉の店。

 

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