<Chapter1-1-5>
「で、どうだった? 巫女姫様の舞は。」
舞が終わり、見ていた全員が落ち着くまでに少しだけ掛かり。
そこから三々五々別れて移動する中、呆けている俺へ芦花姉が聞いてくる。
……ニヤニヤしてる、絶対からかい半分だよな。
天邪鬼みたいに答えることも考えたけど、する意味もないので正直に。
「凄い綺麗だったよ。 正直最初から見ておけばよかったってちょっと後悔してる。」
「でしょ~。 お姉ちゃんの言うことに間違いはないんだって。」
「いや流石にそれは言い過ぎ。」
「全く、素直じゃないんだから。 まあ、巫女姫様の舞は祭祀とかでも披露されるから。」
「ああ、春祭りだから観光客が多いけど……って?」
「そうそう。 定期的にやってるしね。」
神社、神道に関してはそこまで詳しくないけれど……確かに『祭祀』と呼ばれる慰撫するための行事だ。
ある程度定期でやらなければ意味がないのは分かりやすい。
「で、そろそろ玄十郎さんのところ行く?」
「あ。 そういやそうだった、挨拶しに来たんだった。」
「まだ若いのにボケた?」
「それなら芦花姉のほうが先に……あたっ。」
女の子に対して年の話をするんじゃない、と脳天に一発。
そっちが先にしてきたんでしょ、と言っても多分無視される。
「全く、女心が分からないのは良いことなんだか悪いことなんだか。」
「え、まだ追撃されてる?」
「えーと……あ、いた。 廉太郎ー! 小春ちゃーん!」
「また無視!?」
人のこと散々に言っておいて用事を済ませようと立ち回る。
これが……女…………?
「うん? どうかしたか、芦花姉。」
「どうしたの、お姉ちゃん。 用事?」
そんな、芦花姉に呼ばれた二人が振返る。
一人は茶髪の、短髪に整えた少年と言うか青年になりかけの男。
もう一人は明るい……桃色とでも言うのか、頭をお団子に纏めつつツインテールに整えた少女。
……というか、呼ばれた名前に思い切り心当たりがある。
「あれ……ひょっとして将臣か?」
「え……本当だ、お兄ちゃんだ!」
「よ、久しぶり。」
俺からすると従兄妹に当たる、祖父ちゃんの孫。
うちの母さんが外に嫁に出て、その兄がこの二人の父親。
だから、昔遊びに来る度に芦花姉も合わせた四人で良く遊んだものだ。
「本当だよ、最近全然顔見てなかったけど急にどうしたんだ?」
「祖父ちゃんの宿の手伝い。 母さんに追い出されてな。」
「追い出されたって……何だ、なんかやらかしたのか? 女とか。」
「そんなのバカ兄じゃないんだからしないでしょ!」
……いや、随分と口が悪くなったな小春。
というかお前は何をしたんだ廉太郎。
「しねーよ。 二人は旅行なんだと。」
「で、お前は置いていかれたと。」
「うっせ。 それに随分来てなかったし顔見せもしてこいって感じ。」
「ああ、だからいつもみたいにおばさんが来なかったんだ。」
そうそう、と小春に小さく頷く。
それで理解して貰えたのは助かる。
「まあそう言われるのも分かるなぁ。 全然帰ってこないんだもん。」
「こっちもこっちで忙しくてなぁ。」
「言い訳ばっかり。 でもすっごい背伸びたよね。 最初誰か分からなかったもん。」
「あ、やっぱり小春ちゃんもそう思う?」
「思う思う!」
こうしているとまるで本当の姉妹のように仲がいい。
それは前から変わらない様子で。
「小春だって、昔よりずっと成長してるよな。」
「え、本当!? わ、嬉しい。」
「いやお世辞だろ。 何処に成長要素が有るんだよ、その平たい胸で。」
「あるよ! 去年より0.2ミリも成長したもん!」
「いやそれ誤差って言わね?」
「
そんなコントじみた会話を聞きつつ。
「相変わらず仲が良い兄妹だねえ。」
「喧嘩するほど、っていうものね。」
傍観している俺達からすれば、それらは仲が良いだけの会話にしか聞こえない。
「まあきっと、廉太郎は普段から接してるから気付かないだけだと思うぞ。」
「お兄ちゃん優しい……ちゃんと見てくれる人は見てくれるんだね……!」
「いやだからお世辞だろ?」
あ、ローキックされてる。
「全く……こんなバカ兄じゃなくお兄ちゃんが本当のお兄ちゃんだったら……!」
「こんな小憎たらしい妹じゃなく、もっとキュートでプリチーな妹が欲しかった……!」
「お前ら言ってること変わらないからな?」
「うっさいバーカバーカ!」
「ブースブース!」
「えー……そろそろ止めるか。 そこまでね、二人とも。」
芦花姉が間に入ったら一瞬で止まる。
じゃれ合ってるだけ仲が良いんだろうなぁ、きょうだいがいないから俺には良く分からない関係だが。
「それで、玄十郎さん何処にいるか知ってる?」
「祖父ちゃん? 今は中にいるはず。」
「ほら、今丁度例のイベントやってるから。」
「あー、今アレの時間かー。」
アレ?
疑問を浮かべた俺に対し、廉太郎が助言のように説明し始める。
「君も勇者になろう!ってイベント。」
「…………は?」
「伝説の勇者イベントには変わりないけど、何かその言い方子供っぽくない?」
「うっせ分かりやすさ重視で良いんだよ!」
なんのこっちゃ。
芦花姉に視線を向ける。
「建実神社の御神刀。 話くらいは聞いたこと無い?」
「…………あー、アレか。 話でしか聞いたこと無いんだよな。」
ちょっと特別な刀が奉納されているこの神社。
なんか岩に突き刺さってるとかいう話、だった筈。
気にはなってたけど、実際見る機会に恵まれなかった。
「でも確かアレ、抽選で選ばれなきゃ駄目じゃなかったっけ?」
「そりゃ無関係な観光客ならそうさ。 でも祖父ちゃんに挨拶するだけなんだし、そのついでに見るくらいなら大丈夫だと思うぞ。」
まあ、それが良いというのなら。
「なら、行ってみるか。」
駄目なら素直に宿か外で待てばいいし。