恋心、想花の如く。   作:氷桜

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普段通りの日常、の筈なのに……?という回。
食事回描写書いてたら一話埋まってました。


<Chapter2-3-9>

 

<Chapter2-3-9>

 

 

「今日は一日悪かったね、急に任せてしまって。」

「いえ、俺なんかより安晴さんのほうが大変だったでしょう?」

「相手すること自体は慣れているからね。何方かといえば諦めずにずっと残られているのには参った、という感じかな。」

 

苦笑いを浮かべる彼にもう一度お疲れ様です、と告げて。

食事、夕御飯は幕を開けた。

 

今日のメニューもメニューで手が込んでいる。

恐らくはほうれん草の浸しにおから辺りを使ったのだろうサラダのような物。

主菜として並んでいたのは肉野菜炒めにワカメの味噌汁。

何方かといえば野菜が多いメニューではあるけれど、嫌いというわけでもなし。

アレルギーでもないのだから全部食べる、というのはずっと昔から続いていたことだった。

 

「何処を回ってきたんです?」

「志那都荘を出て、そこから街中の……名前で言って分かるかな、田心屋っていうお店なんだけど。」

「へえ。」

「ああ……彼処ですか、ちゃんと立ち寄ったことは無いんですよね~。」

「俺の知り合い……姉貴分みたいな人が経営に携わってる場所なんですよ。」

「将臣さんの?」

 

ただ、俺はそれで良いかも知れないけど。

芳乃ちゃんはどうなのか……と心配していたけど。

見る限り普段より少し量を減らしているだけでその他は変わらない。

舞の練習だけで体力を使うだろうし、その辺りは意識して摂るようにしてるのかも知れない。

 

「多分直接顔合わせたことあるのは……どうかなとは思うんですが、馬庭芦花って名前なんですけど。」

「ああ!馬庭さんのところの娘さんかぁ。」

「へ~……将臣さんにもそういう繋がりあったんですね。」

「随分親しそうでしたけど。」

「俺と……廉太郎と小春と、後芦花姉。昔は四人で大体過ごしてたものなので。」

 

戻ってきて……というよりは落ち着いてからだろうか。

上がっていたテンションから反比例するように以前のように何処か距離がある感じに変わっていた。

茉子ちゃんにも聞いてみたけど、苦笑いを浮かべるばかりで。

『一時的なものでしょうから』とだけ言っていたが……それで良いんだろうか。

 

「ああ、ひょっとして春祭りのときの三人かな?」

「え、安晴さん知ってるんですか?」

「玄十郎さんから三人に口止めをした、ということはね。そうか、そういう繋がりだったわけだ。」

「それであのお土産ですかぁ。」

 

茉子ちゃんが向けているのは袋に入った四人分のデザート。

白玉ぜんざいを持ち帰れるように容器に入れたもの、とは言っていたがちゃんと中身を見たわけじゃない。

何でも売れ残ってしまっていたというのもあって、割引してもらった上で四人分買ってきた形になったから。

 

「聞かなかったけど、苦手な人がいる……訳じゃないですよね?」

「うん、僕も甘いものは好きな方だけど……芳乃には負けるかな?」

「ですね~、ワタシも好きですけど芳乃様には負けます。」

「勝ち負けの話はしてないでしょ、お父さんに茉子も!」

「まあ、芳乃ちゃんが甘いもの好きなのは今日で良く分かりましたから。」

 

あのメニューの選び方は半端じゃなかった。

結局小さめのパフェにしていたけど、それを味わう間の姿は何処にでもいる女の子らしく。

店員……という立ち位置のはずの二人も隔意無く見ていたように思った。

 

「うう……。」

「別に知られたくなかったわけでは……無いんですよね?芳乃様。」

「それはそうだけど、何だか……。」

「お互いの好きなものが知れて良かった、と思っておきましょうよ。」

「茉子ぉ!」

 

食事時なのに騒ぎ声がするのを、安晴さんは笑って見逃して……と言うよりも楽しんでいるようだった。

こういった声も余り聞かなかったから、とでも答えるんだろうけど。

 

「あ、茉子ちゃん。」

「はい、お醤油ですか?」

「ポン酢かなぁ、取って貰っていい?」

「はい、勿論です。」

 

とはいえ、騒いだままで食事が進まないのもどうかと思う。

適時自分のペースで進めてはいるから最終的には大体同じくらいで片付くんだけども。

俺の量は他の人のものより目に見えて多かったりするから、少し早めに食べ終わらせないと待たせることになる。

 

「あ。」

「?」

「ああいえ。お土産和菓子でしたよね、と思いまして。」

「そうだけど?」

「芳乃様、何方かといえば洋菓子の方が好きですよね?」

「そうなの?」

 

甘い物、というのだけは知ってたけど。

目線が二つ、先程まで騒いでいたのが嘘のように姿勢を正して食事中の芳乃ちゃんに向かう。

それに反応するように小さく溜息を吐いて此方を向く。

 

「…………そうですね、何方かといえば。」

「なんだ、言ってくれればそっちにして貰ったのに。」

「……そういうのが恥ずかしいから言わなかったんです。」

「別に……好きなものは好き、でいいと思うんだけど。」

 

顔を背けた頬が少し赤くなっているのが見えた。

俺は地元だったらコンビニにちょっと出れば買えたし、種類で好みが分かれるわけじゃない。

特に新製品なら気になったら買う、くらいの気軽な感じで手を出せた。

そういうのが難しい穂織なら、甘い物……水物とは違う「菓子」なら、たまの贅沢みたいに好きにしていいと思う。

 

「その辺茉子ちゃんどう思う?」

「ワタシも……そうですね、カロリーを気にしつつにはなりますけどね?」

「全然細いのに。」

「あは~……有難うございます。」

 

……それにしても、洋菓子かぁ。

ホットケーキミックス使えば何処の過程でも作れる膨らむケーキみたいなの作れた記憶がある。

それに生クリームとか塗れば不格好にはなるけど、ケーキ作れるんじゃないだろうか。

 

「……ふむ。」

「ま、話は一旦そこまでにして。食事を済ませてからにしようか。」

「あ、はい。すいません。」

「謝るようなことじゃないよ。こういうの、僕も好きだしね。」

 

そうして――――夜も、少しずつ更けていく。

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