後いい加減怪しまれ始めてる気もするので伏線その1。
<Chapter2-4-4>
「…………さぁて。」
持ってきていた服の中で、一番気に入っているものを選ぶ。
穂織の立地上、どうしても熱が籠もりやすい――――そんな前提があるから。
薄手の、それでいて動きやすさの為に身体に密着しすぎない半袖にカーディガン。
下はあんまり種類を持たないのでジーンズ一択。
「妙に気合入っておるな?」
「普段と変わらないと思うんだけどね。」
「だったら気合を入れてやれ。」
軽口にも似た会話を踏まえて着替え完了。
上着なんかを買う口実も、理由もなかったから幾つか追加で消耗品を買ったくらいで。
結局穂織独特の衣装には手を出せていないんだが。
「やっぱり一着は揃えたほうが良いと思う?」
「何の話じゃ……ああ、上着か?」
「そうそう。」
「そんなもん趣味だと思うがのう。」
合う合わないって良く分からないから大体着やすい服装で統一してるんだが。
まあ昔の認識だと服に拘る、ってのは分かりにくいかも知れない。
「今何やら侮辱された気がするんじゃが。」
「気のせいでしょ。」
「……まあ良い、吾輩の好みも何も無いのは事実じゃからの。」
「と言うと?」
何か違和感でも無いよな、と一回り確認し。
持っていくものと言えば幾つかポケットに入るものくらい。
「今日共に出るのは?」
「芳乃ちゃんと茉子ちゃん。」
「……ならやはり、吾輩の意見を聞く理由がないではないか。」
「?」
えっと、つまり?
「聞くなら、二人に聞けって意味?」
「そう言っておるではないか!」
「ならそう言って欲しかったんだけどな……。」
聞く……好みを聞く、というのは有りかも知れない。
「……?」
その時だ。
ムラサメちゃんの目付きが妙に鋭く、怪しいものを見るように変化したのは。
「え、どうかしたのムラサメちゃん。」
「……ご主人。今何を考えておった?」
「何を、って……。」
え、そんな聞かれるような内容もないはずなんだが。
「
「他には?」
「……
え、一体何だっていうんだ。
急な質問、急な顔色の変化。
何か不味いことでもあると?
「……いや、今問い掛けても無駄じゃな。芳乃と茉子には告げておく必要があるかもしれんが。」
「あの?」
「すまんご主人、二人に用があるから……そうじゃの、
「俺はいいけど……おい?」
何かを言い残し、壁をすり抜けて去っていく。
こういう時は便利そうだよな、と見送りつつ。
「……どうしろと?」
空いてしまった時間をどうするべきか考える。
テレビ……も見たいものがあるわけでもないし。
というか簡単に時間が過ぎてしまうし、特訓も午前中に終わらせていた。
そうなると、出来ることと言えばそれだけ早く玄関前で待ってる事?
……いや不自然すぎるだろ。
充電器に繋ぎながら携帯を適当に眺めようか、何て考えつつも。
気付いたら立ち上がり、靴を履いて外へと出ていた。
日光が突き刺さり、肌に熱を感じ。
まだ夏……どころか春の陽気の盛りだと言うのに異様な温度に舌打ちをしそうになってしまう。
(何してるかなー……。)
神社の裏手に転がっていた小石を蹴り飛ばす。
ころころと転がった先は山の裾、茂みへと消えて。
瞬間聞こえていたがさ、という音も当然のように途切れ。
時間を潰す手段を模索しながら、庇の下の影に座って空を眺める。
白い雲が流れ、長く伸びるようにも見えて。
(地元ならもう少し時間潰す手段あったけど……なぁ。)
時間を潰せるだけで、何かを求めてするなんてことも無く。
言ってしまえば惰性の中で、時間を浪費しながら過ごす日々。
それに比べれば、穂織の生活は妙に自分に合っているようにも思えるが――――。
くぁ、と欠伸を一つ。
今、時間を潰せるような訳でもなく。
少しずつ、少しずつ。
思考が闇に落ちていく。
気付けば、完全に瞼が落ちきって。
『――――。』
『――――。――――!』
誰かと誰かが話す、そんな光景が見えた気がした。
良くは分からず。
話す内容も分からず。
何処なのかも分からない、影が二つ。
それが何なのか、確認しようと動こうとして。
「!??!?!??」
頬に異様な冷たさを感じて飛び上がった。
「なぁにこんな所で寝てるんです?」
視界の先にいたのは茉子ちゃん。
太陽を背にしているから、その服装や顔までははっきりと見えないけれど。
口調と、呆れたような声色で誰なのかはすぐに特定できた。
「え、あれ…………?」
「ムラサメ様の用件の後、何処か行っちゃったって少し探したんですよ?」
「……ごめん、良く分からないけど寝てたみたい。」
「それは知ってます。見ましたし起こしたのもワタシですし。」
「はい。」
自分でも、良く分からない感覚だった。
どうせ寝るなら部屋でいいのに。
気付いたら外で、気付いたら空を見上げながら。
自然と眠りについていた、とでも呼ぶように。
「それで。」
「うん?」
「体調が悪いとかってわけではないんですよね?」
「それは……うん、大丈夫。」
食事を取った後に眠くなる感覚とも違ったけれど。
妙に身体から疲れなんかが抜けて、万全の体調である……というのは間違いない。
「そうですか……。」
「心配させてごめん。」
「後で芳乃様にも直接言って下さいね。それと、これ。」
手に持っていたのは、凍ったペットボトル。
中に入っている液体と、パッケージからしてスポーツドリンクに見える。
「水分だけはきっちり取って下さいね。」
「……そうする。」
手を伸ばし、受け取って。
彼女の手を取り、立ち上がり。
小さく頭を振って。
良く分からない感覚を、頭から追い出すことにした。