なんか長くなりそうですね2-4。
<Chapter2-4-6>
「案外涼しいんだなぁ、これ……。」
甚平を基本とした、紺に近い染められた上下を纏いながらの一言。
「夏用ですからね~。」
「丁度合うサイズがあって良かったですね。」
「割と普通だと思うんだけどなぁ、俺……。」
電気屋に立ち寄った後。
善は急げとばかりに衣服店へと引っ張れるようにして移動することになった。
多分電気屋にいた時間より、衣服店で過ごした時間のほうが倍くらい長かった気がする。
それくらいには精神的に疲れたし、二人に付き合う時間に浪費して。
当てもなく、裏通りを三人で歩いていく。
「それで……その、良かったの?」
「何がですか?」
「パパっと携帯変えて、俺の方優先して。」
靴だけはそのまま。
下駄やらも勧められたけど、履き慣れてないなら危険だと判断して。
がさりと鳴るビニール袋には今日着ていた服の一式が入っている。
今の格好は、今日買った服装そのもの。
明日初めて着ても良かったけれど……二人の目線が訴えかけていて。
着替えざるを得なかった、という方が正しいのだけど。
「事前に調べてましたし、電気屋のおじさんにはお願いしてましたからね~。」
「特に私達は其処まで性能がいいのが欲しいわけでもないですし。」
「だよね……。」
あの光景を見てれば誰でもそう思うだろう。
何しろ最初に発した声が「お願いしていたようなの有りましたか?」だったし。
元々持っていた物を見せてもらったけど、確かに電話とメールが出来ればそれでいい、というようなもの。
更新したものも、前よりも色々動くような仕様ではあるけれど第一優先が
後は各々好みの色……なんと言えば良いのか。
(
まあ俺自身付き合いがあった訳じゃないから勝手に思い込んでる部分はあるけど。
それでも二人が重点的に選んでいるのは何方かと言えば男、或いはアウトドアを好む場合だと思う。
祟り祓い、穢れ祓いのことを考えれば破損とかを警戒して、というのは分かるけど。
ただ二人して同一機種、色違いを即座に選んだのは電気屋の人も苦笑交じりだったと思う。
「何か変な事考えてません?」
「考えてません。」
「そう言っておいて。いつも変な事考えてるんじゃないですか~?」
「え、まさか今も……?」
「”変なこと”の定義について話し合おうか……!」
じろり、と下から見上げられて。
言葉を返せば、妙な決めつけのような返答。
あはは、と小さく笑う茉子ちゃんは煽るだけ煽って止めようともせずに。
「だって試着してたワタシ達待ってる間、何してました?」
「他の似たような服見てたけど……?」
色違い、サイズ違い。
観光客のお土産としても売り出されているらしい服装を色々見てただけ。
……いやまあ、想像しなかったかと言えば嘘になるけどさ。
「変なことって……ほら、そういうことですよ!」
「どういうこと!?」
顔を逸らして赤くして。
妙なことを考えてる、と断定されるような理由が思い当たらないんだけど。
その、生理現象的なことだとしても何もしてないし。
というかその言い分は大分理不尽だと思うんだがなぁ!?
「ほら、お二人共。騒がないで下さいね?」
「茉子が問題大きくしたんでしょ!?」
自分だけが安全圏にいられる訳もなく。
「よひのはま、ひっぱらはひてくださひ~!」
言った一言に反応したように、両方の頬を引っ張っている光景。
珍しいな、芳乃ちゃんが一方的にやり込めてるの。
ただ、顔を赤くしているのと。
物理的に赤くされているのとで、似たりよったりな感じになってしまっているけど。
「……まあ、うん。此処でやるのはやめない?」
此処で、というよりは外で、か。
子供の頃、地元で似たようなことして遊んでた頃を思い出す。
今じゃやれるとしても同性にしか無理だけど。
……廉太郎辺りならやれるか?
いややっても気持ち悪くなるだけだな。殴るだけのほうがマシだわ。
「……そうですね。」
「芳乃様、ヒリヒリします。」
「戻ったら続きをします。」
「あの、もうやめません?」
相変わらず仲が良い……と言って良いのだろうか。
まあ仲が悪ければこんな事せずに、そもそも一緒に出かけるのも拒否してるか。
本心ではどうなのか、までは――――流石に分からないけど。
冷や汗をかいているようにも見える彼女をフォローするように。
「えーと……後どうする?」
「そうです、ねえ……。芳乃様、どうしましょう?」
二人で並んで、芳乃ちゃんの機嫌を伺えば。
「……茉子、今日の夕御飯の予定は?」
「今日ですか?」
ちょっと予想外の方向からの一言が飛んできた。
予定と言えば予定だけど。
「そうですねえ……良さそうなお勧めを見て決めようと思ってたんですけど。」
「だったら……一つ、お願いを聞いてくれない?」
「内容にもよりますよ?」
「分かってる。聞いてくれるならさっきのことは忘れるつもりだから。」
うわズルい。
「はあ……それで、何でしょう?」
「……ええと、ね。」
俺に聞こえないように、耳に近付き何かを呟いている。
いや聞かれたくないなら離れるけど……一体何?
「ははぁ。……良いんじゃないですか?ただ、簡単な物からですよ?」
「分かってる。」
良く分からない取引。
指で作る笑みを露骨に俺に向けている茉子ちゃん。
…………あれ?
(笑ってないよな、多分。)
作り笑いですら無く。
ふざけているようにも見える動作なのに。
多分、それは――――半分以上、笑みという成分を含まない顔色だった。
残りに何が含まれるかまでは。
次の瞬間には消えていたから、分からなかったけど。
「なら……将臣さん。他に用事がないのでしたら此方を優先しても良いですかぁ?」
「あ、だったらごめん。コンビニだけ行きたい。」
深く聞かないほうが良さそうだと。
今は、そっとしておくことにした。