恋心、想花の如く。   作:氷桜

62 / 171
芳乃様視点。
妙な誤解。


<Chapter2-4-10-Y>

 

<Chapter2-4-10-Y>

 

 

 

「……はぁ。」

 

いけないと分かっていて、息が漏れていた。

それが嬉しさから来るものなのか、それとも自分に対する叱責なのか。

割合としては半々くらいかなぁ、なんて思いつつ。

また、繰り返すように息を吐いた。

 

――――料理、か。

あの時に胸に浮かんでいたのはそんな思い。

彼の良心に頼るように、恐らくは無意識に頼りにしていた。

それが彼に対して負担になっていて。

立場と役割が、彼を蝕んでいる可能性があると知って。

自分を叱咤した後、何が出来るのかを考えた。

その結果が、夕食の手伝い。

 

(……多分。)

 

笑ってくれていたはずだ。

顔をまともに見れなくて。

恐らくは端的に話を済ませて、その場所を立ち去ってしまったのだと思う。

考えれば考えるだけ、()()()()

何故なのか、その理由には目をずっと背けて。

 

「……芳乃。」

「ひゃっ!?」

 

そんな事を思っていたはずなのに。

部屋の中には誰もいないときに、そんな誰かから呼ぶ声が聞こえて。

思わず声を出してしまった。

 

「そんなに驚くことなかろう。吾輩じゃよ。」

「む、ムラサメ様。」

「……芳乃らしくないのう。何かあった、というわけでもなかろうに。」

 

一応、何かあったと言えばあったけど。

心に押し留めておく内容だから口には出来ない。

それに、明日はお父さんと外部に出なければいけないというのもある。

 

……外。

今までは、可能な限り直ぐに用件を済ませて直ぐに帰ってきていた。

理由は――――私にとっては、()()()()()()()()()()()

朝武の領地が穂織ならば。

相手の領地が出先。

言ってしまえば……手伝うまでは同業だとしても。

それを超えてしまえば、また別の目で見てしまう。

 

「……ううむ。」

「?」

「いや、何かあったんじゃな? 普段の芳乃なら返す返事もなし、か。」

「ムラサメ様?」

 

何かを一方的に、それも思い込みで言われても。

そんな風に考えて、言葉を出そうとして。

 

「……念の為、言っておくぞ。」

「何を、ですか?」

「ご主人に関してじゃ。」

「……将臣くんに関して?」

 

何故か、口が止まってしまう。

自分の本心とは別の意思が、何かを動かそうとしているように。

 

「茉子にも常に見ておくように再度言ってある。芳乃も同様に、今日頼んだように頼んだ。」

「……何か、あったんですか?」

「吾輩の想定が当たってしまった……と言って、分かるな?」

 

ムラサメ様から逃げるように、隠れるようにする穢れ。

体内に潜み、それをかき消す手段といえば強引に対処するしか無いそれ。

その想定が、当たっていた?

 

「対応できるのは吾輩と芳乃だけじゃ。茉子は見ておるだけしかできんが……恐らくは、警戒されないと思う。」

「それ、は?」

()()()()()()()()()じゃよ。」

 

……長男と次男。

遠い未来、もう薄くなってしまったけれど。

私と茉子は、親戚のようなもの。

けれど、その差は決定的なもの。

私は、祓うしか出来ない?

 

その後、どんな話をしたのかは余り覚えていない。

ただ、ふらりと外に出て。

忘れようにも忘れられない、言葉を思い浮かべながら。

顔を赤くした茉子を見て。

 

「ずるい。」

 

多分。

そんな言葉を、呟いていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。