妙な誤解。
<Chapter2-4-10-Y>
「……はぁ。」
いけないと分かっていて、息が漏れていた。
それが嬉しさから来るものなのか、それとも自分に対する叱責なのか。
割合としては半々くらいかなぁ、なんて思いつつ。
また、繰り返すように息を吐いた。
――――料理、か。
あの時に胸に浮かんでいたのはそんな思い。
彼の良心に頼るように、恐らくは無意識に頼りにしていた。
それが彼に対して負担になっていて。
立場と役割が、彼を蝕んでいる可能性があると知って。
自分を叱咤した後、何が出来るのかを考えた。
その結果が、夕食の手伝い。
(……多分。)
笑ってくれていたはずだ。
顔をまともに見れなくて。
恐らくは端的に話を済ませて、その場所を立ち去ってしまったのだと思う。
考えれば考えるだけ、
何故なのか、その理由には目をずっと背けて。
「……芳乃。」
「ひゃっ!?」
そんな事を思っていたはずなのに。
部屋の中には誰もいないときに、そんな誰かから呼ぶ声が聞こえて。
思わず声を出してしまった。
「そんなに驚くことなかろう。吾輩じゃよ。」
「む、ムラサメ様。」
「……芳乃らしくないのう。何かあった、というわけでもなかろうに。」
一応、何かあったと言えばあったけど。
心に押し留めておく内容だから口には出来ない。
それに、明日はお父さんと外部に出なければいけないというのもある。
……外。
今までは、可能な限り直ぐに用件を済ませて直ぐに帰ってきていた。
理由は――――私にとっては、
朝武の領地が穂織ならば。
相手の領地が出先。
言ってしまえば……手伝うまでは同業だとしても。
それを超えてしまえば、また別の目で見てしまう。
「……ううむ。」
「?」
「いや、何かあったんじゃな? 普段の芳乃なら返す返事もなし、か。」
「ムラサメ様?」
何かを一方的に、それも思い込みで言われても。
そんな風に考えて、言葉を出そうとして。
「……念の為、言っておくぞ。」
「何を、ですか?」
「ご主人に関してじゃ。」
「……将臣くんに関して?」
何故か、口が止まってしまう。
自分の本心とは別の意思が、何かを動かそうとしているように。
「茉子にも常に見ておくように再度言ってある。芳乃も同様に、今日頼んだように頼んだ。」
「……何か、あったんですか?」
「吾輩の想定が当たってしまった……と言って、分かるな?」
ムラサメ様から逃げるように、隠れるようにする穢れ。
体内に潜み、それをかき消す手段といえば強引に対処するしか無いそれ。
その想定が、当たっていた?
「対応できるのは吾輩と芳乃だけじゃ。茉子は見ておるだけしかできんが……恐らくは、警戒されないと思う。」
「それ、は?」
「
……長男と次男。
遠い未来、もう薄くなってしまったけれど。
私と茉子は、親戚のようなもの。
けれど、その差は決定的なもの。
私は、祓うしか出来ない?
その後、どんな話をしたのかは余り覚えていない。
ただ、ふらりと外に出て。
忘れようにも忘れられない、言葉を思い浮かべながら。
顔を赤くした茉子を見て。
「ずるい。」
多分。
そんな言葉を、呟いていた。