恋心、想花の如く。   作:氷桜

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あけましておめでとうございまーす。


<Chapter2-5-5>

 

<Chapter2-5-5>

 

「それで。」

「うん?」

 

普段見慣れている、という程見ているわけではないけれど。

制服とは違う服装に身を包みながら。

同時に頭……髪飾り、髪留めを別のものに変えた彼女と歩き始めて。

神社の影が見えなくなり始めた辺りで茉子ちゃんはそう口火を切った。

 

「あまり詳しくは聞いてませんでしたけど、その子は何故穂織に?」

「……あ、そっか。 祖父ちゃんから聞いたのも俺と芳乃ちゃんだったし。」

 

茉子ちゃんには付いてきて貰う、と言ったくらいで。

同学年の学生の留学生、そんな簡単なプロフィールしか言っていない。

とは言っても俺自身聞いただけなので詳しくないんだけど。

追加で俺だけが聞いたことと言えば。

電話で聞いた名前と、留学の簡単な理由についてくらいだろうか。

 

「何でも昔から穂織に憧れてて、留学が夢だったんだってさ。」

穂織(ここ)に?」

 

目をぱちくり。

疑うというは純粋な驚きに近いように思える表情で。

 

「珍しいですね……。 観光ならまぁ分かるんですけど。」

「実際外国ではそこそこ評判だし、その繋がりとか?」

「可能性はありますけど……確かに聞く話では、日本の旅館とかに働きに出てくる人もいるとかいないとか。」

「ただ、それでも……一回も来たことがない場所に来ようとするバイタリティは凄いよね。」

 

以前に来日した経験はあるのか、という問い掛け。

それに否と答えた祖父ちゃんはこんな言葉を付け加えていた。

 

『その子の故郷で日本語を学んだらしくてな。 最低限の会話はできると思って良い。』

 

……まあ、意思疎通が完全に取れないなら俺達も困ってしまっていたから其処はいい。

英語とかもある程度必修になるのかもな、これからの場合。

俺も読む方はできるっちゃ出来るんだが、話す方は其処まで得意じゃないし。

 

「ですねえ……。 あれ、でも確か。」

「うん?」

「その子、学生なんですよね?」

「そう。 廉太郎と似たような感じ……なのかな? 働きながら学校に通うって話だね。」

 

実際には彼奴は孫という身分があってこそ、なので根底が違うだろうけど。

ただ手伝ったり働いたり、そういう部分に関しては同じと思って良さそう。

休日はどうなるかはわからないけど、客が多い時はかなり大変だろうな。

自分がどういう理由で此処に送られたのか、という部分を棚に上げてそんな事を考える。

 

「そうですかぁ。 だったら同じクラスに?」

「だね。」

 

本来は廉太郎の見張り、というのは黙っておく。

実際同性無し、という状態を心配していたので半分くらいは内心そんな事を考えてたとは思うけど。

ああ、そういえば。

 

「祖父ちゃんも言ってたんだ。 早々に辞められると困るし、相談事とかあったら協力してやってくれって。」

「気を配ってますねえ。」

 

だよなぁ、と孫の身分からも考える。

厳しそうに見えて(実際厳しいんだけど。)欠かさない気配りがあるからこそ、祖父ちゃんは色んな人に尊敬され続けているんだろうし。

 

「そんな訳で、茉子ちゃんに教えて欲しいこととかが3つあります。」

「はい?」

「1つ目は……そうだね。 穂織のどの辺りを紹介すれば好印象持って貰えると思う?」

 

好印象ですかぁ、と口元に指を当てて考え込む。

足を止め、彼女が思い付く……言葉を発するまで数秒。

 

「やっぱり美味しいものとかでしょうか。 舌に合う合わないもあるでしょうけども。」

「あー、成程。」

「でもこの辺り、美味しい物があるところ……。」

「何でも良いと思うよ?」

 

外食、という定義では難しくても。

軽食、という定義でなら幾つかある――――詳しい場所までは記されていなかったけど、そんなメールを芦花姉から先ほど受け取っていた。

 

「軽食みたいな感じ、おやつみたいなのでもあるとないじゃ全然違うだろうし。」

「そうですかねえ。 だったら……焼き魚?」

「あるんだ、焼き魚売ってるところ。」

「あるんですよ。 其処行ってみます?」

 

そうだねえ、と頷いた。

昼食は結局神社では取らないことになったし、先に自分の舌で確かめるのは悪くない。

 

「それで2つ目。 これはお願いです。」

「はぁ。」

「彼女の生活用品揃えるのに手伝いをお願いします。」

「構いませんが、何故敬語で?」

 

いや、何となく。

というよりも、自然に?

 

「気分で……ってのが一番近いかな。」

「将臣さんからの頼みですから勿論受けますが……気分ですか。」

「そう、気分。」

 

こほん。

少しばかり妙な空気を一度リセット。

 

「で、最後だけど――――。」

 

その髪飾り、普段と違ってるけど似合ってるね。

そんな言葉を口にして。

普段通りの笑みに加え、頬が真っ赤になる姿が浮かび上がり。

可愛らしいなぁ、なんて呑気な考えをしていた。

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