恋心、想花の如く。   作:氷桜

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最初の出会いが真っ当だった場合。
レナルートのあの二人見る限り初回の出会いは其処まで大きな要因ではなかったと思いますが……まあ、ねえ。


<Chapter2-5-8>

 

<Chapter2-5-8>

 

「あー、えーっと。 大丈夫?」

「いえ、すみません! ヘーキですか?」

 

寒気の元を意識して考えと視界から外し。

笑っているように見えるのに、何処か顔に影が見えたようなそうでもないような。

そんなわけないよな、茉子ちゃんだし。 うん。

 

「此方は大丈夫。 ()()()()は?」

「ぁ。 はい、大丈夫です。」

 

同年代なんだろうな、という考えから学校と同じ呼び方に切り替える。

一瞬だけ先程の顔色から呆けたような形になって、そして直ぐに芳乃ちゃんの前と似たように態度を作る。

長年の経験からなのか、染み付いているからなのか。

そして()()()()()()()()()()()()は、別として。

 

「わたしも助けて貰いました。 誠に申し訳ないでした。」

 

()()()()()、と少しだけ古いようなお婆ちゃんのような。

少しだけ間違った日本語を口にしながらバランスを取り直し、肩口や膝なんかを見た上での台詞。

強がりとかじゃないなら良かったけど。

 

「それは良いけど……危ないよ?」

「考えていたよりも坂道が酷くて。 つい荷物に勢いが付きすぎてしまいました。」

 

それを抑えようとして引っ張られるようになって速度が付いて、と。

あー、びっくりしましたー、と道の端辺りに転がっている運搬用のキャリーバッグ(だっけ?)に目を向ける。

何処か軽そうに言っているように聞こえなくもないが……顔を見れば危なかった事自体は分かっているようで。

初対面の俺が何かを言うでもなく、口を閉ざして様子を窺う。

 

「確かに……大きな荷物ですね。 お一人で観光を?」

 

少なくとも俺が持ち込んだ(持ってこられた)手荷物よりも遥かに大きな荷物入れ。

一人分というよりは二人分くらいを詰めてもまだ余裕がありそうな大きさで。

髪色だけで判断できるわけでもないのだけど、()()()立派な辺り外国からの観光客とか?

 

「日本には一人で来ました。 でも、観光ではなく留学のためでありまして。」

「留学……。」

 

その言葉に反応してしまったのは、今から移動しようとしていた先が先だったから。

或いは先程の動きの影響で、脳が奇妙な程に働いているからなのか。

 

「もし間違ってたらごめん。 ひょっとして、レナ・リヒテナウアーさん?」

「あ、はい……。 そうであります、が……?」

 

何故名前を、と。

そんな当たり前のことを聞かれる前に。

 

「やっぱりそうか。」

「有地さん? ひょっとして……?」

「ああ、うん。 この子みたい。」

「あの、一体何を……?」

 

勝手に納得し、茉子ちゃんも遅れて理解して。

自分だけが分かっていないことに焦る。

それはそうだ、と少しだけ反省。

 

「初めまして。 俺は有地将臣といいます。 今日リヒテナウアーさんを案内するように頼まれてた一人です。」

「改めまして、常陸茉子です。 有地さんに頼まれた……付き添い? のようなものですね。」

 

そこで、改めて自己紹介。

本来は志那都荘前でやるべきことだっただろうに、想定外すぎる出会い方。

……本来のメインである廉太郎だけ遅れてるのは何なんだろうな。

 

「そうなのですか? おぅ、これはご丁寧にありがとうございます。 以後、お見知りおきを。」

 

互いに挨拶を行う交差路の真ん中。

ただ、時間も時間なので転がっている荷物を拾い上げ彼女に持ち手を渡す。

ありがとうございます、と少しだけ奇妙に訛った話し方は。

何故だか、彼女に似合っているように思えた。

 

「あと一人案内人がいるんだけど……多分待ち合わせ(ほんらいの)場所で待ってるはずだし。 移動しながら話そう。」

 

分かりました、と出る言葉は異口同音。

汚れが付いていないのを改めて確認してから三人並んで歩き出す。

 

「それで……何故坂の上から?」

「待ち合わせ先……志那都荘とは全然違う場所だよね?」

 

場所が場所ではあるけれど、誰かに聞けば直ぐに分かるような場所。

それだけの歴史を保っているし、周囲からの知名度も持っているはずなんだけど。

 

「ああ……少し早めに着いたので、少々観光をば。 そうしたら、道に迷ってしまいまして。」

「あ~……。」

「気付けば時間も近付いていて、慌てて走り回ってしまったのです。」

 

それで坂の角度がすっぽ抜けてしまって勢いがついた、か。

()()()じゃないけれど、見た目と実際の角度が違う坂が何個かあるんだよな。

早朝のランニングのときとかには重宝するんだけど、そこそこ距離があるのが欠点。

 

「まあ……それなら俺達が出会えたのは運が良かったってところかな。」

「かもしれませんね~。」

 

下手に観光客と当たっていたら、という言葉は暗に秘めて。

何もなくてよかった、と二人で頷きあった。

 

「はい。 お二人と会えて助かりました!」

 

そして、その言葉には気付かないまでも。

はっきり笑顔を浮かべているリヒテナウアーさんには良かった、と思いたい。

 

……未だに背中の寒気は残ったままだったりするのだけど。

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