<Chapter2-5-9>
「んー、もう少し大きいのありませんか?」
「これ以上ですか……少々お待ちください。」
その後。
話をしながら志那都荘前へと到着したのが二時五分前。
高祖父の影響で元々興味があって、とか。
互いに話しやすさを感じつつ、ゆったりとした歩みを進め。
当然のように少し早く立っていた廉太郎に意外な顔を浮かべながら合流した俺達。
『やっと来たか…………ん?』
俺と茉子ちゃん、そしてもう一人。
リヒテナウアーさんが同行していることに理解が出来なさそうな、怪訝そうな顔を浮かべつつ。
『悪い悪い。 途中で偶然出会っちゃってな。 此方、言ってた留学生……っつーか、お手伝いさん?』
『おー! とても素敵です!』
『お、おう……。』
簡単に話を通し、外観に感動している彼女を紹介して。
互いに簡単に挨拶を交わし。
この後の予定に関して改めて確認した。
やはり夕方までは手が空かないとのことで、優先して諸々の準備をしに四人で出ることになった。
そして、現在。
俺達は服屋の前、庇の下で二人佇んでいる。
「なぁ、将臣……。」
「何だよ。」
中から聞こえる黄色い(?)声から思考を外していれば。
隣に立つ廉太郎からひそひそと問い掛けられる。
「マジであの子?」
「他に誰がいるんだよ……。」
「いや悪い、大分パニクってる気がするわ。」
だよな。
見て分かる。
俺が此処に当初来たときよりも酷く見えるのは外から見てるからなのか。
二つの意味で同情しようと思えば出来てしまう。
一つは旅館の手伝い、という形でやってくる留学生が文字通りの美少女だったという事実。
普通に暮らしていて中々そんなもん想像できるはずもない。
もう一つはその少女の指導に多少なりともこいつが関わるだろう、という事実に関して。
「まあ気持ちは分からんでもないが、当人の前で見せるなよ?」
「そりゃ分かってるが……その、分かるだろ?」
駄目だ。
駄目な時の、というか
祖父ちゃんの懸念が当たっていた、と言い切ってしまって良いものか――――と。
一応、親類ということもあって一言だけ言っておくことにした。
「少なくとも。」
「ん?」
「初対面からそんな感じの相手にお前は近寄りたいのか?」
……そう考えると芳乃ちゃんに茉子ちゃんもよく俺を受け入れてくれたな。
ちょっとしたあれこれはあったけれど。
それでも、同年代の異性を同じ屋根の下に迎え入れるって割り切れるもんでもないだろうに。
「…………そりゃ、嫌だな。」
「だったら何とかしろよ。 ったく、柄でもない。」
「やれるだけやってみるわ。」
最悪は小春辺りに伝えれば妹目線からなんか言ってくれる気もする。
……最終手段として控えるのもそうだが、自然と伝わりそうだよな。
ちらり、と隣の顔を覗けば珍しく考え込むような表情で。
大丈夫そうだ、と思う反面。
外国の留学生、というたった一人の身をフォローするのも必要そうだな、と思い至る。
「まー、なんだ。」
「?」
「変に取り繕いすぎても仕方ないし、無理しすぎない程度に頑張れば良いんじゃないか?」
結局何処かでボロが出るし。
其処までは言わずに。
廉太郎がそれに対し、口を開こうとして。
「……んー、サイズはこのままで胸周りだけ広いのとかお願いできませんか?」
「このままで、ですか……。」
店の奥から聞こえてきた言葉が、俺達の耳に入って。
苦笑いというか、なんとも言えない表情を浮かべたまま。
口を閉ざした一人と、モゴモゴした一人とで。
無言で立ち尽くす羽目になった。
……結局、彼女をどう思ったのか聞けずじまいだったが。
露骨過ぎる態度からして、そう思って良いのかな、とか。
そんなことをふと、思いながら。