<Chapter2-6-2>
「痛てて……。」
打ち込まれた腕や胴体、そして頭への衝撃を軽く引きずりつつ。
そして最も辛い両腕両足の地味な、懐かしい筋肉痛を引き摺っての帰り道。
『そんなに辛いのか?』
「使う筋肉も違うし、後は何だ……
踏み込みやら立ち会いの精神といった基礎的な剣道の初歩は俺も覚えている。
ただ、祖父ちゃんに頼んだのは何方かと言えば実践的な行動。
即ち、剣を用いた戦い方の修練。
『いきなりやるには早すぎたのではないか?』
「俺もそうは思ったけど……実際、剣道着を着込んだまま立ち会える相手ってわけでもないだろ?」
面、胴、小手に突き。
本来の剣道であれば一本を取れるような、残心を含めた精神修練を少しだけ外れた実践的な戦い方。
そんなものを学べる相手といえば、俺に思い当たるのは祖父ちゃんくらいしかいなかった。
……正確に言えば。
別の武器を用いて模擬戦のような、といえば一人思い当たらなくもないけれど。
今回の趣旨から外れるので、結局選択肢は唯一人。
『とは言ってもだな……。』
「実際、凄い勉強にはなるよ。 行えるかどうか、ってのは別として自分で色々研究する土台にはなる。」
少しばかり楽しかった、というのもまた事実。
嫌々やらされていた時期とは違って、今では自分の意志でやろうと思っている目的意識の違いもある。
後は……自分の身体が思った以上に動く、という事を再認識できたのはまず間違いなく今の気分に影響してる。
『研究、なぁ。』
「不満とか?」
『ある訳がなかろう。 ご主人が担い手として自分を鍛え上げてくれるのならば、吾輩としても誇らしいと言うのは否定できぬからの。』
ならなんで、という言葉が夜に響く。
少しばかりの灯りを頼りに、山には決して入らないように。
そしてムラサメちゃんの放つ霊力によって護られているからこそ、今俺はこうして安全に夜道を進めている。
『ただ……ほれ。 芳乃の耳の件があった場合、身体を引き摺ることになるであろう?』
「それは分かってる上で対応してるから気にしすぎ……でもないんだよなぁ。」
それだけの「呪い」が残る地で。
それだけの「執着」が残る場所。
夜に山を禁止――――それ自体は、何処の場所でも当たり前。
迷ってしまえばどうなるか分からない、そんな当然の内容とは一足違う。
祟り神という、オカルト方面に進んでしまった実体物。
「祟り神……か。」
『うん?』
「いや、これからどの程度続くのかなぁ、と。」
ああ、という言葉が闇に溶けた。
不安定な灯りが近く、遠く、揺れる。
暗闇という、決して離れ切らない世界が遠く、近い。
そんな不安にこそ、呪詛――――執念、或いは呪いは俺に纏わり付くと知っていても。
『これから、という言葉は正しくはないが……それでも、
「流石に終わらせたいよな。」
これ以上は、負担を掛けたくない。
事情を知ってしまってからは、ずっと心の内に秘めている……多分、俺の本心。
『そうじゃなぁ。 ずっと、ずっと。 ……吾輩も見ているだけじゃったしの。』
「そういう意味合いでは、俺が担い手で良かったのかな。」
『間違いなくの。 余りそのようなことを他の前で言うなよ、不安がらせるだけじゃ。』
「分かってるよ。 ムラサメちゃんくらいにしか言えないっての。」
話せる相手が限られる相方と。
内心を、弱音を漏らせる相手も限られる俺と。
凸凹しているとは言え、悪くはない関係性が出来つつあるようにも思えてくる。
『ならば良い。 ……が、吾輩にだけか。』
「? それが?」
『……いや、良い。』
砂を蹴り、石畳の道を外れ坂道へ。
神社へは後十分といった辺り。
小さく携帯電話が揺れて、ひと声かけて内容を確認する。
『後どれ位で帰りますか?』
送り主は
内容を他……クラスメイトが知ればどんな反応をするんだろう。
ふと考えて、苦笑いと。
心配してくれることへの小さな笑みが同時に溢れた。
『もうすぐ。』
それだけを打ち込んで、送信した。
「お待たせ。」
『誰からじゃ?』
「芳乃ちゃん。」
『そうか。 ……ならば、早く戻ってやるとしようかの。』
そうだな、と。
暗闇の中を、灯りが引き裂きつつ。
また帰路を一歩進み始めた。
PCを利用したネタとか仕込んでも許される?(レナルートのアレもあることだし)
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OK!
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NGNG