<Chapter2-6-6>
「アレ?」
「っ!?」
それぞれが、それぞれの仕草で手を離す。
慌てて、というよりは結ぼうとしたところで弾かれたような。
そんな
「朝武さん? レナさん?」
「どうかしたの?」
握手した途端に手を離した二人。
その光景を眺めていた周囲のクラスメイトたちは何が起こったか分からない。
だからこそ、焦ったように。
心配するように声を掛ける。
「え、ええ……多分静電気? のような。」
両手を開き、閉じ。
グー、パーと繰り返して何事もないことをアピールするのと問題がないのを確認している芳乃ちゃん。
「モチっと来ました。 モチっと。」
「なんだか柔らかそうですね……。」
ただ、今の間で。
明らかな異常が
一つは直ぐに。
もう一つは、当人から言われて知ったこと。
『レナさん、そういう時は”バチッと”。』
『日本語、妙なところだけ覚えきれてない……っていうか難しいもんねえ。』
周りは、レナさんから漏れた言葉の訂正でワイワイとしていて。
だからこそ、なのか。
或いは今教室に漂っている空気が何か悪さでもしているのか。
不自然なことに気付けたのは、ほんの何名か。
「では、もう一度。」
「は、はい……。」
表面上はしん、としたままで再度握手を進める芳乃ちゃん。
若干ビクッとしながらも、同じく握手を進めるレナさん。
二度目は果たして――――起こらずに。
握手をする二人を見て、少しだけ遅緩した雰囲気が漂う。
ただ、そんな中で。
「……。」
明らかな異常の一つ。
驚いたように。
そしてほんの少し、呆けたような――――内面の顔が溢れたような表情を浮かべた後。
芳乃ちゃんに声を掛けることさえ忘れて何かを考え込み続ける茉子ちゃん。
「茉子……?」
そんな彼女の、普段と違う行動にこそ不自然さを感じて。
口を開きかけ、けれどその目つきの真剣さに言葉が微かにだけ漏れ。
周囲のざわめきに言葉が呑まれる、芳乃ちゃん。
(……今の黒いの、何だ?)
手と手の間に放たれたような……或いは漏れたような。
白と黒、なんて分かり易すぎる形で俺には見えた。
静電気がそもそも目に見える程に大きく、というのは分からないでもないが。
こんな季節に、唐突に。
人と人の間に急に流れるものなのか?
そんな事を考え込む。
その一部始終を眺めていた俺と。
「……なあ、将臣。」
「ん?」
「気のせいかもしれねえけどさ。 朝方から気になってたんだが……。」
「だからなんだよ。」
「
そして
廉太郎が周囲を見回し、同時に問い掛けた疑問。
――――周囲の空気に気付いている廉太郎。
その言葉に、一瞬思考が固まった。
「は……?」
「いや、お前気付いてなかった感じ?」
「いや違う、そうじゃない。」
思考がはっきり回らない。
どう言葉にするか。
それを誤れば、また厄介なことに此奴まで巻き込むことになりそうで。
「……空気が悪い、ってーと?」
「あー……なんだ。 澱んでる? 重い?」
考える時間を作ろうと、一旦問い掛け直す。
ごまかしにすらなっていない返し方で。
けれど、少しだけ悩んだ様子を見せた。
……廉太郎自身もはっきりと分かってるわけではない、のか?
両手込みでなにやら動作をしているが、言葉にしきれていない。
「
「空気がおかしく見える、ってことか?」
「そう、そんな感じ。」
だから、大雑把に包括して言えば。
その意を得たり、とばかりに指を向けてくる。
人に指を向けるんじゃねえ……と思うがそんな場合じゃない。
「……ああ、確かに俺もそう感じる。」
はっきりと、それでいて周囲に聞こえないように告げる。
向こうの騒ぎ、そして喧騒。
全く以て良い事ではないが、今のこの状況には好都合でもあった。
「やっぱりか?」
「なんか変だなー、位だけどな。」
目に見える事は口にしない。
飽く迄相手と同程度に感じている程度に抑えて、それでも嘘は決して言わずに。
詳細はやはり三人に相談しようと固く心に決めつつも、
「いや、俺も気付いたのはさっきの休み時間くらいだけどよ。」
「なんか変だって?」
「そうそう。 お前が来たときはもう少し静かだったし、女子生徒が転校してきたからか……とも思ってたが。」
「悪かったな、男で。」
まあ、認識する範囲は似たようなものか。
俺が来た時、という分かり易い比較対象があるんだし。
「不貞腐れんなって。 ……実際、レナさんが来たからか?」
「どーだろーな。 逆に聞くが、この一週間お前等に変化とか無かったよな?」
「あるわけねーだろ。 ……ああ、でもアレか。」
無い無い、と手を振った上で。
何かを思い出したように口にしやがる。
「あるんじゃねえか。」
「って言ってもよ、志那都荘の手伝いをする上で手を貸す機会があったんだが。」
「まあ……重いものを移動したりとかあるだろうしな。」
「偶然手が触れちまって……その際に、静電気っぽいの?を感じたくれーかな。」
静電気体質?とか言うんだっけ?なんて言いつつ。
大したことないだろ?という廉太郎の前で。
顔色が変わっていないことを、上手く繕えただろうか。
……彼女は、一体何なんだ?
そんな思いが、脳内を巡っていた。