恋心、想花の如く。   作:氷桜

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疑問と、ほんの少しのトラブル(?)。


<Chapter2-6-7>

 

<Chapter2-6-7>

 

その後。

色々と(恐らくは自分で気付かずに)愚痴を呟いたり。

或いはレナさんの()()()()――――詳しい働き先を除いた内容なんかの雑談に耳を傾けたり。

そんな百面相している従兄弟の姿を眺めながらの昼休みは終わり。

問題の放課後がやってくる。

 

「……。」

 

周囲から不自然に思われない程度に早く外に出て。

一足先に校舎裏……以前に集まった場所で携帯電話を片手に待ちつつも調べ物。

噂話、怪談、都市伝説に昔話。

()()()()系――――瘴気、或いは。

本日見た黒いモノに関する何らかの切掛でも転がっていないかと思いつつ。

とは言え、だ。

 

(……やっぱり携帯だけだと調べる速度も遅いよなぁ。 パソコンが欲しい。)

 

目ぼしい調査結果が出なかったことに溜息を漏らしながら、一度打ち切る。

「イヌツキ」……「犬神憑き」のように明確な単語で呼ばれることのない存在。

()()()見えるようになった、ということ自体を含めて良く分かってはいないのだが。

浮かんでいる事柄は一つだけある。

 

霊感……対象とのチャンネルがほんの少し繋がったのではないか、という仮説。

 

「にしては切掛が曖昧すぎるし……。」

 

周囲に適応した、と言ってしまえれば良いが。

それなら周りが目覚めていない理由付けが成り立たない。

ムラサメちゃんとの契約があるからなのか、と一段掘り下げていけば。

 

「あ、いました。」

「まさ……有地さん。」

 

周囲を警戒しながらも、二人が校舎裏へとやってくる。

どことなくぎこちない表情を浮かべたままの茉子ちゃんと。

真面目な、余所行きな表情を浮かべ続けている芳乃ちゃんと。

 

「悪い、二人共。 急に声なんか掛けて。」

 

誰も居ないことを確認してきましたから大丈夫です。

そう耳元で囁かれ、少しだけ頬が赤くなるのを感じながらも。

一度頷き、二人へ改めて礼を言う。

 

「いえ……でも、玄十郎さんとの鍛錬は良いんですか?」

「優先したいことがあってね……無理言って休ませて貰った。」

 

は、はぁ、と。

それでいいなら良いんですけど、と芳乃ちゃんは訝しむ。

……この感じ、どうなんだ?

 

「一寸曖昧な聞き方になるけどさ。」

 

だから、敢えて。

おかしい内容について()()()()()()()に、二人に対して質問を投げかけた。

 

「曖昧?」

「今日、何かおかしいことなかった?」

 

二人の表情が、少しだけ変わる。

……各々が各々に、それぞれ別の内容だった場合。

そしてその理由が別だったら、余計に大変なことになってしまうのだが。

 

「……あったんだ。」

「有地さ……。」

 

一呼吸、間が入り。

瞳に入る力が増すのが分かった。

 

「将臣くん。 何に気付いたんですか? いえ――――()()?」

 

まあ当然、返る問もこうなる。

その理由自体に、正しい答えを俺は持たないけれど。

 

「理由は分からない。 ただ、俺が気になった……気付いたことは二つ、いや三つ。」

 

指折り数える。

 

「一つ。 今朝方……レナさんが来た時くらいからか。 なんか教室の空気……雰囲気が奇妙なレベルで重いっていうか澱んでいた。」

 

レナさんの名前が出た段階で、二人の周りの空気が何か変わった。

澱むというよりは……なんか違う()()

まあ良い、続ける。

 

「二つ。 昼休み、芳乃ちゃんがレナさんと握手しようとして二人で弾いてた時。 手と手に、なんか光のような変なモノが見えた。」

 

茉子ちゃんへ目線を向ければ、普段よりも瞳を開いていくのが分かった。

……どうせ驚かせるなら、もう少し身近な方が良かった。

 

「三つ。 周囲の空気に廉太郎も気付いてた。 そして、彼奴もレナさんとの間に静電気っぽい何かを感じていたらしい。」

 

この計三つ。

それについて相談したいんだけど、と口を開こうとして。

真剣な、それでいて心配する目で見る二人がいる。

 

「……大丈夫なんですか?」

「なんで、将臣さんが……?」

「全く分からない……けど、ムラサメちゃんか叢雨丸の担い手……つまり、霊力絡みじゃないかなぁとは思う。」

 

心配する言葉が最初に出る。

そんな二人だからこそ、俺も協力したいし。

()()()()と、思う。

が、今は俺の内心は関係ない。

 

「それで、二人はどう?」

「……そう、ですね。 私も、奇妙な雰囲気は感じていました。」

「どんな感じ? はっきり言って俺には違いもはっきりと言い切れないから。」

 

そうですね。

目線を一度下げ。

一例で言えば、と前置きし。

 

「以前、将臣くんの周りに……中に呪詛が入り込んだことを覚えていますか?」

「ああ……柏手で祓ってくれた?」

「そうです。 アレに近い……ただ、あの時よりももっと濃度が増している感じ……が近いでしょうか。」

 

但し、耳が頭に生えるような。

凝固化した祟り神ではない。

周囲の空気に紛れ込む、本来であれば神社でのお勤めで祓えているレベルのモノだと彼女は語る。

 

「成程……茉子ちゃんは?」

「……そうですね。 実はワタシも将臣さんと同じように、黒い光のようなものは見えていました。」

「それって、昼休みの?」

「はい。 芳乃様へは後で相談しようと思ったのですが……申し訳ありません。」

 

良いのよ、と二人は二人で話を介し。

今見えている内容を整理する。

 

「……人によって見えてる、感じてるものが違う。 どういうことだと思う?」

「……条件が違う?」

「いえ、そもそも発生源が違うとかでは?」

 

三人で相談する内容は、結局堂々巡りで。

けれど、共有することが出来た――――というのは、不幸中の幸いといったところか。

 

「……ムラサメ様には?」

「帰ったら伝える。」

「お父さんとみづはさんには私から連絡しておきます。 夜、時間作っていただけますか?」

 

芳乃ちゃんから提示された問い。

 

勿論、と。

俺と茉子ちゃんは、重ねて答えた。

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